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崑蟲王~外れスキル『昆虫テイマー』のオレはチートスキルでスローライフを満喫する……はずが、なぜか闇社会の実力者になっていた~  作者: テツみン


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第二話 ハチミツの儲けを取り返す……はずが、なぜか組織ごと乗っ取っていた⑩

 トルト村のある北西部と王都がある中央平地の間には峠がある。セリーネの話では、今朝、その峠に山賊が現れ、荷馬車が襲われたらしい。そのため、しばらく峠の通行を禁止するという通達があったそうだ。


 これはまた面倒なことになった。峠の道が使えないと、トルト村を含め、この周辺は陸の孤島になってしまう。人の往来はもちろん、村の特産品を売れないし、生活に必要な物資が届かなくなる。


 うーん。どうやら、王都のことを考えている場合じゃなさそうだ。


「――それで、襲われた人たちは?」

「それが、みんな無事だって。山賊と戦った護衛の冒険者の人たちは大ケガしたらしいけど、命に別状はなかったそうよ。降伏すると、荷物だけ取り上げて、姿を消したらしいわ」


 誰の命も奪わないどころか、馬車さえ奪わなかった?

 これまた、ずいぶんとジェントルマンな山賊だな。

 冒険者だけ戦闘不能にして、しかも殺さない。つまり、冒険者相手に手加減できるほど、かなり戦闘力を持つ人物が賊の中にいた――ということだな。


「――山賊の人数は?」

「それが、たった三人だったらしいよ」

 しかも、護衛と戦っていたのはひとりだけだったとか。

 護衛の冒険者も三人だったらしいから――うーん、ちょっと興味が湧いてきた。


「それだけじゃないの。その山賊、三人とも若いオンナだったんだって?」

 ――へっ? オンナ?

「しかも、全員、メイド服姿だったとか――」


 ――おい、いったいどこからツッコミを入れればイイんだ?


 もちろん、護衛は男ばかり、それをひとりで打ちのめすオンナって――


「アンリ? どうしたの?」

 オレが黙り込んでしまったので、セリーネが心配して声をかけてきた。


「ん? いや、なんでもない。あ、これ。約束のシフォンな」

 渡すモノだけ渡すと、オレは「帰る――」と彼女に言う。


「ちょっと、お茶くらい飲んで行かないの?」

「わりぃ! ちょっと、用事を思い出した」

「またぁ?」


 不満そうなセリーネを残して、いったん家に帰ったオレ。王都で買った黒ローブを手に取ると、ふたたびスカイフィッシュの世話になる。


 向かったのは、南東にある山地――メイド服の女盗賊が出たという峠だ。


「――さて、この辺りかな?」

 スカイフィッシュに頼んで、適当な森の中に下ろしてもらうと、周りにいた虫たちの記憶を確認する。


「――どうやら、コイツのようだ」


 ギンヤンマの記憶に、三人の人影を見つける。峠の街道から一キロほど離れた、山の中腹にある洞穴の中だ。

 ギンヤンマにその場所へ戻ってもらうと、オレはトンボの視界と聴覚を共有した。


 三人はまだ、同じ場所にいた。座り込んで、顔を見合わせている。奪った金品も一緒だ。

 そして、なにより目についたのは――


「おいおい。マジでメイドだよ」

 黒いドレスに白いエプロン。おまけにホワイトブリムまで頭につけている――日本の歓楽街に出没するという、まさにアレだ。

 いったい、何の冗談だぁ? まあ、それは置いといて――

 

 彼女らの会話を盗み聞いてみる。


「――大銀貨十二枚に、銀貨二十枚……それと、日用雑貨かぁ……こんな田舎の峠を行き交う行商だと、この程度しか手に入らないんだなぁ――」


 金髪の娘が頭を掻きながら、そうつぶやいている。どことなく気品がある美しい顔なのだが、そのしぐさは男のようだ。スカートのまま、胡坐をかいている。


「お嬢様。それで、このあとはどうする?」


 三人の中で一番若そうな少女が気持ちの入っていない言い方で尋ねている。ピンクの髪をツインテールにした不愛想な娘――というより、子供と言ってもイイ。

 金髪の娘はソイツの頭を殴る。


「お嬢様、イタイ……」

「だから、『お嬢様』と呼ぶな! これからはお(かしら)と呼べ!」


 なんだ、これ? どつき漫才?


「うーん。こうやってキャラバンを襲えば、手っ取り早くカネが稼げると思ったのだけどなぁ……おい、もっと効率の良い稼ぎ方を考えろ」

 なんか、めちゃくちゃなことを言っている……


「それじゃ、乗合馬車を襲って、オンナ・子供をさらうのはどう? 奴隷として売ればボロもうけ」


 ツインテールの女の子が不穏な提案をするので、また金髪の少女が彼女を叩く。


「バカやろう! オレたちは山賊だが、悪党じゃねえ!」


 山賊と悪党――それって、何が違うんだ?

 まあ、イイか。


 すると、それまで黙っていた、白髪の娘が涙を流し始める。


(なげ)かわしいことです。勇者、アーサー様の血をひくお嬢様が、このような場所で、賊のマネごとをしなければならないとは……」

「メイファ、それはもう言わない約束だろ? オレが悪いんだ。あんな、あやしい投資話を信じたオレが――」


 なるほど。どうやら金髪の少女は貴族の娘で、残り二人はその使用人だったようだな。誰かに騙され、カネも屋敷も失い、こんな賊まがいなことをやっている――というあたりか。


『勇者』という言葉で思い出したが、三百年前に魔王を討伐した人物の名がアーサー・ガスリーという。つまり、この娘は勇者の末裔――なのだろう。

 だとすれば、剣術に自信があってもおかしくない。たとえ、女性であっても――だ。

 そのスキルを使って手っ取り早く稼げそうな『山賊』になった?


 うーん、なんか思考が短絡的すぎる気もするが……


「さて――それじゃ、その腕前を見せてもらおうかな」

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