第二話 ハチミツの儲けを取り返す……はずが、なぜか組織ごと乗っ取っていた⑨
村に戻ったオレは、セリーネと約束したシフォンケーキを作る。
ちゃんと覚えていたんだ――だって? もちろんさ。こういった小さな約束もしっかり守るオトコに、女の子はグッとくる――と、母ちゃんに教えてもらったからな。
焼きあがったばかりのシフォンを持って、セリーネの家へ行く――と、その前にハニーを呼び出した。
「アンリさまぁ!」
現れたと思ったら、いきなり抱きつかれる。
「ん? うわっ、おいしそうなケーキ!」と、今度はできあがったばかりのシフォンに目が行く。やはり、彼女も女の子だ。
「ああ、セリーネにあげるのさ」
「むっ、また、あの巨乳オンナ? 幼馴染だか、なんだか知らないけど、乳でアンリ様をたぶらかせようとしやがって。一回、刺してやる必要がありそうね」
セリーネの名前を言うと、いきなり機嫌が悪くなる。
「刺すのはダメだぞ。かわりに、これはおすそ分けだ」
そう言って、シフォンをひとつ渡す。
「やったぁ! もう、アンリさま大好き!」
すぐに機嫌が良くなる。
「それで、お願いしたいことがあるのだけど」
「なんですかぁ? アンリさまのお願いなら、いくらでも聞きますよぉ」
さっそく、オレは母ちゃんを見守ってほしいとハニーに頼む。
「――というわけなんだ。イイかな?」
「ムム、ハチミツで儲けたうえに、アンリさまを誘拐して働かせようなんて――ゆるせないわ。刺し殺しちゃいましょう」
「気持ちはありがたいけど、まだ待ってね」
ヤツらからは、ハチミツで儲けたカネをいただく必要がある。もちろん、利子付きでだ。
奴隷売買もやっているようだが、他にもいろいろと荒稼ぎしているに違いない。
「そのため、虫たちに監視させている」
どんなあくどいことをやっているのか――調べ上げて、そのカネを巻き上げるつもりだ。悪いことで手に入れたカネを奪われても、訴えることはできないしな。
「そんなんですね! さすがアンリさま! いろいろとお考えがあるんですねぇ!」
「フ、フ、フ――当然だ」
そうは言ったものの――どうやってカネを奪うか、考えていなかったりする。まあ、なんとかなるだろう。
「わっかりましたぁ! お母様のことは、まっかせてくださーい!」
軽い返事で逆に心配になるのだけど……
キラービー族に勝てるような人間はまずいないから、母ちゃんのことは任せておいても問題ないだろう。
あらためて、セリーネの家に向かったオレ。到着すると、村長のトルドネさんがちょうど家を出て行くところだった。なにやら、慌てているようだ。
「どうしたんだ?」と尋ねると――
「うん、峠で荷馬車が襲われたんだって。そのことで、となりの村に行って、どうするか協議するそうよ」
「――はい?」




