第二話 ハチミツの儲けを取り返す……はずが、なぜか組織ごと乗っ取っていた⑥
オオカバマダラという渡り蝶の記憶を共有して、オレは絶句した。
その蝶は王都からやってきたのだが、とある店でオレが作ったハチミツが売られていたのだ。
まあ、それだけなら喜ばしいことだが、問題はその値段だった。
小さなビンに《《金貨一枚》》の値札が貼られていたのである。
商人がオレから仕入れた金額は銀貨一枚。日本円だと、だいたい千円だ。それでも、転生前――日本で販売していたハチミツの価格を考えればかなりイイ値段だったので、オレは満足していた。
しかし、それを金貨、日本円で十万円くらい……つまり、仕入れ値の百倍で売られていたのである!
もちろん、それは市場調査を怠ったオレのミスだ。だが、黙っている気にもなれない。
オレはその商人にハチミツの小ビンを百個売った。現在のレートでは、銀貨百枚は金貨一枚と等しいので、つまり、商人はオレのハチミツで金貨九十九枚もの利益を得たことになる。この世界なら四、五年、遊んで暮らせるおカネだ。
「ねえ? アンリ?」
「えっ? なに?」
セリーネに名前を呼ばれてわれに返る。
「なにじゃないでしょ? このあと、ウチに寄って行く? そう聞いているのに、ウワの空なんだから!」
また怒っているセリーネに、「ゴメン、用事を思い出したので、また今度」とオレは駆け出した。
「ちょっと! 用事って何よ!?」
「そんな、たいしたことじゃないから!」
セリーネの質問に対して、適当に応えた後、オレはジュラの森へと走った。
村から森までは、小さな丘を越えることになる。距離にして二キロほどだ。
ジュラの森へと入ったところで、さらに移動速度を上げる。キラービー族のローヤルゼリーと、ベスパ族のVAAMのおかげで、すでに人外的な筋力とスタミナをオレは持っていた。もちろん、人前でそれを見せると騒ぎになるので、普段はセーブしているのだ。
道がなくなると、木の上へ飛び乗り、枝から枝へジャンプしながら進む。あっという間にかなりの奥地まで到着した。ココまで入ってくる人族はまずいない。
「さて、この辺りで大丈夫だろう」
指笛を吹くと、空が突然暗くなる。上空に三メートルはあろうかという、巨大な羽蟲が現れたのだ。
上空へジャンプするとその羽蟲はオレをキャッチする。
「そのまま南へ飛んでくれ。王都へ行くぞ」




