第一話 アマゾンで楽しい昆虫採集……のはずが、なぜか異世界に転生していた②
「それで、ニジカワさまは異世界へ転生することを望みますか?」
「すみません。ひとつ質問をしてもイイでしょうか?」と、オレは言ってみる。
「はい、なんでしょう?」
「その世界に昆虫はいますか?」
「そうですね、地球上と同一の生物が多数生息していますので、昆虫類もいると思います」
「なら、問題ないです。どうか、オレをその世界へ転生させてください」と、オレは即決した。
昆虫がいるのであれば、どの世界だってかまわない。それどころか、異世界特有の昆虫に出会えるかもしれない。おお! こんなにワクワクするのは久しぶりだ。まあ、死んで喜ぶのもヘンな話だが――
「――わかりました。そうそう、これからニジカワさまが向かう世界では、人間は神族からひとつスキルを授けられるそうです」
その世界の人間は十三歳になると、個人の才能に適合した仕事を神に決めてもらうらしい。そして、そのジョブに相応しいスキルも同時に神から授かるのだとか。
ほう、ますます異世界っぽい。
「本来、自分自身で授かるスキルは決められません。ですが、ニジカワさまだけ特別にご自分で決めていただく――というのはいかがでしょう?」
なんか、いたせりつくせりだな。それだけ、オレが死んだことはマズいことだったのだろう――まあ、そういう大人の事情は気にしないこととしよう。
ということで、オレが望むスキルはひとつだけだ。
「昆虫とコミュニケーションが取れるようになりたい!」
昆虫たちがどんなことを考え、どんな会話をしているのか? それを知りたい! もし、そのようなスキルがあれば、長年の夢だったことが実現するのだ!
「昆虫とコミュニケーション……ですか……」
自称、神族という女性が、少し困った――という表情を見せる。やはり、そんなことは異世界でもムリなのだろうか――
すると、女性はこういう提案をしてきた。
「それなら、昆虫使いというスキルはいかがでしょう? 文字通り、昆虫を使役する能力です。昆虫と会話をすることはできませんが、使役した昆虫の五感や記憶を共有できるようになるみたいです」
おおっ! それはスゴい!
「ただ、かなり不遇なスキルのようなので、そのう……どれだけ、有益かは……同じテイム職なら、魔獣使いなんてのもありますよ。そちらのほうが、かなり強力なスキルになると思いますが――」
「かまいません。昆虫テイムでお願いします」
「――わかりました。ニジカワさまはとても謙虚な方なのですね?」
謙虚? なんか勘違いしているようだが――オレは昆虫以外に興味がないだけだ。そもそも、過ぎたるチカラを手に入れたって、厄介ごとに巻き込まれるだけだろ?
支配や権力を欲する人間の気持ちのほうがオレにはわからない。
「それでは、十三歳になると昆虫テイムのスキルが授かるようにいたします。それと前世の記憶ですが、自我か芽生える二歳ころから徐々に思い出すようになります」
そりゃそうだよな。成人男性の記憶を持ちながら、オムツをして、母親のおっぱいを吸っている――なんて、はずかしい体験はしなくてすみそうだ。
「それでよろしいでしょうか?」
「はい。お願いします」
オレはそう返答した。
「それでは、ニジカワさまの記憶をしばらく凍結します。ニジカワさまの新たな人生に多くの幸があらんことを――」
その声を最後に、オレの意識は遠のいていった――




