第二話 ハチミツの儲けを取り返す……はずが、なぜか組織ごと乗っ取っていた④
それから、教会に行ってお祈りを捧げる。小さな教会に村のみんなが集まるので、かなりの混雑だ。オレは人混みが苦手なので、終わったらさっさと帰ろうとすると――
「ああ、セリーネ、ちょっと待ちなさい」
教会の司祭が彼女を引き留めるので、オレも立ち止まった。
「はい、国立学校への入学許可書だ。がんばりなさい」
そう言って、司祭は白い封筒を手渡す。
「よかったな、セリーネ。王都に行きたかったのだろ?」
薬剤士のスキルを授かり、王都の教授からスカウトが来た時、彼女は「これで、村のために勉強ができる」と喜んでいた。なのに、彼女は浮かない顔だ。理由はすぐにわかる。
「司祭様、アンリは? アンリの入学許可書は届いていませんか?」
「申し訳ないが、アンリのは届いていない。それでも来年は、この村から四人も国立学校へ入学するんだ。それはスゴいことだよ」
司祭が言うように、セリーネの他、剣士、魔導士の戦闘系スキルを授かったボブ、サム、ジャックも来年から王都の学校へ行くことになる。つまり、同い年で、学校へ行けないのはオレだけだ。
「そうな……アンリの入学が認められなかったなんて……」
ショックを受けているセリーネを見ていると、なんか申し訳ない――そんな気がして、オレは彼女の肩に手を乗せた。
「そう気にするな。司祭様が言っているように、こんな小さな村から四人も国立学校へ行けるなんて名誉なことだよ。村のことはオレに任せて、王都での生活を満喫してきな」
そう励ましてやる。まあ、本来は立場が逆なんだろうな。
これは彼女の祖父になる村長のドルトネ・ハリアさんから聞いた話だが、セリーネは彼女をスカウトに来た教授に、オレのことを強く薦めたらしい。
昆虫テイムによって、これだけ村が豊かになったんだと――これはきっと王国全体でも有益になるはずだ――そんなふうに話してくれたようだ。
教授も乗り気だったようで、「それじゃ、教授会で提案してみる」と約束してくれたそうだが、どうやら、入学は認められなかったみたいだ。
まあ、仕方ない。国立学校は本来、軍事を目的とした武術教育機関として設立されたものである。いくら、農業に効果があるとしても、所詮、昆虫なんて軍事に利用できない。
セリーネだって薬剤士では? そう思った人もいるかもしれない。
一見、軍事とは関係ないように思われるが、負傷した兵の治療や、遠征での疫病対策で薬のチカラは重要になる。もちろん、この世界にはいわゆる治療魔法も存在する。だが、貴重な治療魔導士を前線に連れて行って、もしも命を落としたりしたら大変な損失。なので、薬を作れる薬剤士は軍事的にも重要で、国家として育てる必要があるのだ。
ということで、オレだけ村に残ることになるのだが、実のところ、学校なんて興味がなかった。どうせ、学校は貴族ばかりで、地方出身、しかも村人なんて惨めな思いをするに決まっている。イジメの対象になるかもしれない。
なにより、学校で得られる情報なんて、もうなにもない。崑蟲王のおじいさんからそれ以上のことを教えてもらったからな。転生前の記憶だってある。それよりも、この地に残って、崑蟲の研究を続けたほうが何倍も楽しいに違いない。
なので、オレとしては王都に行かなくてよかったと安堵しているのだが、彼女の落ち込み状態を見ていると、何か言ってあげなければ――なんて、考えてしまう。
そこで――




