第一話 アマゾンで楽しい昆虫採集……のはずが、なぜか異世界に転生していた⑭
――えっ?
今、なんて言った?
『わが子供たちよ。しばしの別れじゃ――』
そのあと、おじいさんの気配が消える――
偉大なる崑蟲族の王は死んだ――そう、悟った。
「主さま――」
集まった崑蟲族から、それぞれの種族に適した悲しみの表現を見せていた。
ハニーたち擬人化した種族は人間のように涙を流す。大きな羽蟲はその羽を弱々しく垂らす。大きな甲蟲は巨大な角を地面に押し付けていた。
オレも悲しかった。大声で叫びたかった。しかし、崑蟲族の打ちひしがれている姿を見たら、それができなくなる。
おじいさんに出会って、たった半年。そんなオレが彼らの悲しみをどれだけ理解しているのか?
そう考えると、一緒に悲しみを露わにするのは失礼だと思ってしまったからだ。
その時、おじいさんの美しい甲羅からミシミシという音がしているのに気づく。良く見ると、ヒビが見えた。それがあっという間に全体へ広がって行く。
「危ない! みんな、おじいさんから離れて!」
オレが叫ぶと同時に、おじいさんの大きなカラダ崩れ始める。
ゴオォォォォッ!
激しい音と揺れとともに、偉大な姿が残骸と化した。
なんとか全員回避する。崩落に誰も巻き込まれずに済んだのだが、目の前で起きた現象に、悲しみが吹っ飛び、ただ茫然としていた。
「あれだけの巨体を支えるために、ものスゴい量の魔力を使っていたんだろうな……」
オレは冷静に、そう分析した。
偉大なる王の魂が持つ魔力が消滅し、その抜け殻は自らの重さに耐えられなくなって崩壊。あくまでも想像レベルだが、もしそうなら、やはりおじいさんの魔力は強大だったのだろう――
「おじいさん、なんか勘違いしていたなあ。オレは、おじいさんのように、崑蟲族のみんなと仲良くしたい――そう、言ったつもりなんだけど――主? 崑蟲王? おじいさんの持つチカラをオレに与える――?」
どういう意味なのか――と、たずねる前に彼は逝ってしまったので、その真意はわからない。
正直、イヤな予感しかしない。異世界転生モノでこういった流れになるのは――
「やっぱり、いろいろと厄介ごとに巻き込まれるパターンだよね?」
あまり考えたくない。まあ、できるだけ余計なことには首を突っ込まないようにしよう――そう考える。
「まあ、村人だし、大丈夫だろう……たぶん……」
ただ、おじいさんからもらったチカラ――というモノに興味があった。なにせ、十万年以上も生きてきた彼である。どのスキルもチート級のはずだ。
ぱっと思いついたのは『念動力』。オレが穴から落ちた時、助けてくれたスキルだ。アレももらったのだろうか?
どうやって使うのかもよくわからない。
モノを浮かす? なら、自分を浮かすこともできるのだろうか――
ちょっと、想像してみる。
「――あっ、浮いた」




