第一話 アマゾンで楽しい昆虫採集……のはずが、なぜか異世界に転生していた⑬
おじいさんの話はこうだった――
今いる、『コンロンの大樹海』と呼ばれる場所は、毒の濃度が最も濃い地域だったらしい。それも、もうじき浄化され、ココの植物もやがて枯れるそうだ。
崑蟲族は、ここの植物が出す瘴気を吸って生きている。瘴気がなくなれば、やがて崑蟲族も滅ぶという。
おじいさんの話から、なんとなくそんな予想はしていたが――やはり、そういう運命だったのか……
「――あと、どのくらい時間は残っているの?」
オレがたずねると、おじいさんは『あと数年かもしれないし、数百年かもしれない』と言う。
ずいぶんとアバウトだな……まあ、十万年以上も生きてきたおじいさんなら、数年も数百年も、誤差レベルなのだろう。
『そこで小僧に頼みたいことがある。滅びゆく仲間たちを一匹でも多く、生き残らせてほしいのじゃ。小僧の持つ異世界の記憶を使って――』
「えっ? おじいさん。オレが転生者だって知っていたの?」
ビックリするオレだが、おじいさんはそのことに何も応えない。
異世界の知識で崑蟲族を生き残らせてほしい――? うーん。できるかどうかわからないけど――
「うん、がんばってみる」
『そうか。ありがとう、小僧。かわりに小僧の望みがあれば、言ってみよ。儂ができることなら叶えてやる』
「――えっ?」
オレの望み?
オレは周りを見た。たくさんの崑蟲がおじいさんのために泣いている。みんな、おじいさんが好きだったんだな。オレもおじいさんのように、崑蟲たちに好かれたい。そして、崑蟲たちのことをもっと知りたい。
「オレ、おじいさんのようになりたい!」
オレはそう願った。おじいさんのように崑蟲たちを愛し、愛されたい。そう考えたからだ。
するとおじいさんの笑い声が聞こえる。弱々しいが、たしかに笑っていた。
『そうか、そうか――ならば、そうしよう』
すると、おじいさんの足元から金色の蝕肢がニョキニョキと現れ、オレの前で止まった。
「うそ……主さまが動いた……」
集まったみんながそれを見て驚いている。どうやら、彼らも初めて見たようだ。
『小僧、それに触れなさい』
言われたとおりに、それを握った。すると、なにか温かい気持ちになる。
『望み通り、儂の持つ全てのチカラを小僧に与えよう』
その言葉を聞き終えたあと、触肢からオレのカラダへ何かが流れていくのがわかった。これって――
その状態が数分続くと、触肢はスルスルと戻って行く。
『皆よ、聞くがイイ。今より、この小僧がオマエたち崑蟲族の主、崑蟲王である』




