第一話 アマゾンで楽しい昆虫採集……のはずが、なぜか異世界に転生していた⑫
ある日の夜中――
いつものように寝ていると、窓をたたく音が聞こえた。オレは母ちゃんを起こさないように、そーっと開ける。そこに、ハニーがいた。
「なんだよ。こんな夜中に」
オレは目をこすりながら、そう文句を言うと、ハニーは普段と違う深刻そうな面持ちで囁いた。
「主さまが危ないの――」
「――えっ?」
それから、ハニーに抱えられて崑蟲王のところへ向かったオレ。到着すると、たくさんの崑蟲族が集まっていた。
「アンリ、よく来たわね。主さまが、アタナとお話したいって――」
ハニーの母親である、キラービー族の女王、サリーがそうオレに声をかけた。彼女はふだん崑蟲の姿をしているのだが、今は擬人化して、黒いドレスを身に纏い、暗い表情を見せている。
彼女だけでなく、集まった誰もが悲しそうだった。
オレは前に出て、おじいさんのカラダに触れた。
『――小僧か?』
弱々しい声が脳裏に聞こえた。
「うん、そうだよ」とオレは返事をする。
『どうじゃ? 崑蟲族とはうまくやっているか?』
「うん! みんな、イイ仲間だよ。これもおじいさんのおかげだよ」
『そうか、そうか――』
おじいさんのいる地下穴に落ちたのは半年前。それから、いろいろなことがあった。おじいさんから、この世界の歴史を教えてもらって、ハニーやローズに出会い、他の崑蟲族とも仲良くなった。
この世界に転生できて本当にヨカッタ!
父ちゃんが行方不明となって、みんなから『裏切り者の息子』といじめられた。だけど、この森にいたらイヤなことは全て忘れることができる。
もっともっと、崑蟲族のことを知りたい。おじいさんから話を聞きたい。
『もう小僧に話してあげられるのも、これが最後じゃ』
――えっ?
「それって、どういう意味?」
『儂はもうすぐ死ぬ』
「そんなことを言わないで! まだまだ、いろいろなことを聞かせてよ」
「ねえ? アンリさまぁ? なんのこと? 誰と話しているの?」
オレがおじいさんに話しかけたところ、ハニーたちは不思議そうな顔をしているので、おじいさんの声が聞こえているのがオレだけなのだと理解した。
『それでは、未来の話をしよう。この森は近いうちになくなる』




