街到着
誕生祭を控え、早くも街はお祭り騒ぎとなっていた。
ロベルトの意見を参考に、雑貨屋に入ったのだが、どれをプレゼントするべきかさっぱり分からなかった。
「ねぇ、レイナ。何か良さそうなものはあるかしら」
「こればかりはお嬢様がご自分でお決めになられた方がよろしいのでは?」
「うっ……そうよね……」
でもほんっとうーに分からないのよっ。どれもレイなら簡単に手に入るでしょうし、すでに持ってるかもしれないもの。
ここはレイリックと以前、街に来たときに寄った場所の近くなのだ。このお店にも来たことがあるかもしれない。そう考えるとますます何をプレゼントしたらよいのか分からなくなり、混乱していく。
「ん? これはっ」
そこにあったのは水槽を模した小さな置物だった。中には水が入っており、ぶくぶくとした泡が出ている中、魚が泳いでいるように見えるというものだ。その置物は全体的に青みがかっていて、レイリックのイメージに合っていると感じたのだ。そして、何より神秘的で美しかった。これなら持っていなさそうだと思ったリリカは購入した。店員の女性に綺麗な水玉模様のラッピングをしてもらい持ち帰った。
王宮に戻り、部屋で1人
……本当にこれで良かったのかしら。
と自問自答していた。
あのときは本当にこれが良いと思ったのよ!? だけど、いま思えば、雑貨ではあるけれども、もっと使い勝手の良い物の方が良かったんじゃないかしら。
そう考えているうちに誕生日当日が来てしまった。
「ど、どうしましょう!?」
「大丈夫ですよ。お嬢様からのプレゼントですから」
「でも……」
折角だから、お渡しはしたいけれど、喜んでもらえるのかしら……。
リリカの心には不安が募っていた。
あっ、そういえば、ロベルト様が王族の方々へのプレゼントは一箇所に集めて検査するって言ってたわ。そこに上手く私からのプレゼントを紛れ込ませられれば、間接的だけど受け取ってもらえるはず!! そうよ、その手があったわ。
そうして、リリカはプレゼントにメッセージカードを入れて、山盛りになっているレイリックへのプレゼントに紛れ込ませた。
この中に紛れてしまうのは少し寂しくもあったけれど。せめて大切にしてもらえることを祈るわ。
「お嬢様、本当によろしかったのですか?」
「ええ。これでいいのよ。さあ、行きましょうか、誕生祭へ」
リリカは逃げるように街に向かった。到着すると、すぐに楽しげな雰囲気が伝わって来た。
「あれはっ!!」
雑貨屋の屋台が出ていた。そこにはレイリックのグッズがたくさん置かれていた。その中には幼い頃のレイリックの写真があった。豪華な写真立てに入れられている。
「可愛いっ」
隣には家族写真も置かれている。
レイもだけど、レナード殿下も幼いわ。
「これっ、2つとも買いますわ。それとこのお人形さんも頂くわ」
「ありがとうございます」
その人形というのはレイリックを模したものだ。
「お嬢様、それをどうされるのですか?」
「もちろん眺めるのよ。でもレイにはバレないようにしないといけないわね。ご自分の写真とかお好きではないみたいだから」
「……そうですね」
レイナはそう上手くいくとは思えなかったが、一言だけ言葉を返した。
その頃、王宮では
「ねぇ、どういうことかな?」
「そ、それが……誕生祭に向かわれまして」
リリカに会いに部屋を訪ねたところ、王宮で働く侍従の1人にリリカがうきうきで出掛けたと報告を受けたのだ。
「うん。どうして僕はまた置いていかれたのか心当たりはあるかい?」
「そこまでは……。申し訳ございません」
レイリックは溜め息を吐いた。
「下がってくれ」
「はっ、はいっ」
「その、だな……半分は俺のせいかも……」
侍従が部屋を出た後、ロベルトはレイリックに告げる。
「どういうこと?」
「いや、お前いつも誕生祭行きたがらないだろ。
この前会ったときにうっかり伝えてしまってな」
「……」
「睨むなって!! 悪かったよ。な?」
ロベルトはレイリックを必死に宥める。
そのとき、扉をノックする音が聞こえる。
「どうした?」
ロベルトが尋ねる。
「それが王太子殿下宛の差出人不明の贈り物が部屋に置かれていまして」
「どこの部屋だ?」
「王太子殿下宛の贈り物をまとめて管理している部屋です。検査のために確認したところ差出人の記載がなく」
「普通、そういうのってそこに持ってくる前に弾かれるよな」
「はい、そのはずなのですが」
「……その荷物はある?」
「はい、こちらに」
その贈り物は水玉模様のラッピングがされていた。レイリックはリボンの間に挟まっていたメッセージカードを読み、笑顔に変わる。
「ふふっ、これなら問題ないよ」
「それはどういう……」
「よく知る人物からだからね。さあ、行こうか」
レイリックはロベルトに声を掛ける。
「どこにだ?」
「誕生祭だよ」




