誕生祭
これは昨日のことだった。レイリックは帰還してから大変忙しくしているようで会える時間が少なくなっている。そんな中リリカは執務室に呼び出されたのだ。
「どうされましたの?」
「決まったよ、日程」
「決まったって何がですの?」
「結婚式だよ」
「結婚式……」
誰のかしら?
と頭に?を浮かべていると
「僕たちの結婚式だよ」
と言われる。
「ええっ!?」
良い反応だね。
とレイリックは面白そうに見ていた。
「も、もうですの!?」
「ああ。まだ半年先ではあるけどね」
「半年……」
「王太子妃教育ももうすぐ終わりそうだからってことで許可が出たんだよ」
「そうなのですね」
公爵家でしっかりと学んでいた分、想定していたより早く終了の目処が立ったらしい。リリカが翻訳魔法を使えたことで、言語を覚える必要がなくなったのも大きいだろう。
「楽しみだね。でも本当はもっと早く行いたかったんだけどな」
「それは無理でしょうね。各国の王族の方々も参席されるのですから」
話しを聞いていたロベルトが言う。
「えっ……」
そうよ。王族の結婚式ってことは当然そうなるわよ!! 今から緊張してきたわ……。
「大丈夫だよ、僕も隣にいるんだから」
「レイ……」
そうよね、レイも一緒なら少しは安心できるわ。
「が、頑張りますわっ」
そして現在に至る。
「というわけよ」
リリカはスカーレットをお茶会に招き、結婚式の日程が決まったことを告げる。
「わぁ、楽しみですっ」
「そう?」
「はいっ」
リリカのドレス姿、きっと美しいに決まってるわ。
「そんなに楽しみにしてもらえるなら、私も頑張らないといけないわね」
よしっ、と気合いを入れる。レイリックにシェリルも結婚式に呼んでほしいと伝えたところ、渋々ながら許可を得ることが出来た。
「そういえばリリカは誕生祭には行かれるのですか?」
「誕生祭?」
「はい、あと1週間ほどで始まりますね。毎年違う催し物があるとウィルから聞いたので、今年はどんな催し物があるか今から楽しみです」
「えっと……誕生祭って誰の?」
「えっ……誰って王太子殿下ですけど」
「えっ!? う、嘘でしょう!?」
そんなお祭りがあったなんて、聞いたことないんだけど!? それも毎年!? お兄様はご存知だったみたいだけど、どうして教えてくださらなかったのよ!? いや、そんなことよりももうすぐお誕生日なの!?
「ねぇ、誕生日パーティーとか開いたりされるのかしら」
「リリカが何も聞かれていないのなら、ないと思いますけど」
「そ、そうよね……」
いきなり“ある”って言われても困るけど、念の為ロベルト様に確認してみましょう。
「誕生日プレゼント、どうしましょう……」
「リリカからのプレゼントだったら何でも喜ばれるんじゃ?」
「だとしても、変なものは渡せないわよ」
リリカは頭を抱えていた。
その後、リリカはこっそりロベルトを探していた。レイリックの前であと1週間後に控えている誕生日の話しなんて出来る筈がなかった。
今更知ったのかって幻滅されるかもしれないし。
見付けた……。ちょうど帰るところだったロベルトの後ろ姿を発見して、声を掛ける。
「ロベルト様、少しお時間を頂けませんか?」
「リリカ嬢? ええ、構いませんよ」
「その、今年ってレイの誕生パーティーは開くのですか?」
「え? いえ、そういったことはあまり好まれないので」
「なるほど……」
「どうして突然そのようなことを?」
「それが……」
リリカは正直に全て打ち明けた。
「ああ、それで。なるほど、普通誕生祭があるので皆知っているものかと思っていましたが、実に公爵様らしいですね」
ロベルトはそう言って笑っている。
「それはどういう……」
「王太子殿下の誕生祭ですから、殿下関連グッズが売られるのですよ。お写真とか諸々。だからそれを見せたくなかったのでは?」
えっと……もしかして、そのグッズを見て、レイを好きになったら困るからってこと? 過保護すぎでしょ!! 今までのお祭りも参加したかったわ。今年は絶対に参加するんだからっ!!
「殿下はリリカ嬢からのプレゼントなら何でも嬉しいと思いますよ」
「スカーレットにもそう言われましたわ。ロベルト様でしたらどういったものを喜ばれるのですか?」
「私なら雑貨ですかね。いくらあっても困りませんし」
「困らないって欲しいとは少し違うと思いますわ」
「そうかもしれませんね。でもご令嬢からの贈り物って特に変な物が多いんですよね。お菓子に媚薬が混ぜられていたり……」
「そ、それは大変ですね……」
「ええ。ですから必ず検査をしてから殿下にお渡しするようにしているんです」
「では私もまずはどなたかにお渡しした方が?」
「いえいえ、リリカ嬢は直接お渡し頂いても大丈夫ですよ」
良かった……。たくさんのプレゼントに埋もれてしまいたくはなかったものね。
「結局のところ、一番無難なのが雑貨なんです」
「なるほど……参考にさせて頂きますわ。あっ、そうですわ。ロベルト様とレイは誕生祭に行かれるのですか?」
「私は毎年行きますが、殿下は行かれたことはありませんね」
「どうしてですの?」
「殿下は容姿端麗で人気も高いですからね。もしリリカ嬢なら、ご自身の写真がたくさん売られているところに行かれますか?」
私の写真……
「恥ずかしすぎますわっ」
少しだけならともかくそんなもの想像しただけであまりの恥ずかしさに死にたくなってくる。行きたくなくても当然だ。
「まあそういうことです」
「納得ですわ。ありがとうございました、ロベルト様」
当日までに何かプレゼントをご用意しないと。
リリカは久しぶりに街へと向かうことにした。




