出発
レナードはレイリックたちと別れ、現在馬に跨り隣国ナタール王国に向かっているところだ。ナタール王国はレナードが以前留学していた国であり、例の2人はともにナタール王国出身だ。
今回の件についての彼らの処分を決めるため、ナタール国王と話しをしなければならない。が、その前にレナードが向かう先はある女性が暮らす屋敷だ。
あの2人は初めから僕を騙すつもりだったらしい。そして、そのために彼女をも利用した。
『彼女にも手を出したのか?』
『ふふふっ、今更気付くなんて滑稽ですこと』
『なんだと?』
『だってそうじゃありませんか。あれだけ仲良くしておきながら全く気が付かないなんて思いませんでしたわ。あの子もさぞ失望しているんじゃないかしら』
『っ……』
『おい、これ以上は止めておけ』
『黙ってなさいっ。どちらにせよ、もう終わりですわ!! ねえ、今のご気分はいかが?』
『ふざけるなっ!! そんなことのために彼女を巻き込んだのか!?』
『貴方には分からないのでしょうけれど、わたくしたちにとってはそれが1番大切なことだった。ただそれだけよ』
はぁ。本当に今更だ。何も気付けないなんて呆れる。とにかく急いで向かわないと。
レナードは馬の手綱を持つ手に力を込めた。
一方その頃、リリカとレイリックたちは帰還するためアルマーニ王国行きの大型船に乗船したところだ。今回は運が良く、10日間に1回の直行便に乗ることが出来た、のだが……
「どういうことですの!?」
リリカは用意された部屋を見て驚きの声を上げる。なぜならリリカとレイリックは同じ部屋に泊まることになり、更にはベットも1つしかなかったからである。
「いやー、お2人は婚約者でしょ? そうお伝えしたところ、こうなったんですよね」
ロベルトがにこにこと笑顔で告げる。
絶対わざとでしょ!!
「うんうん。いいじゃない」
なぜか男神までノリノリだ。
「お嬢様……」
「レイナ」
止めてくれるのかしら、と思っていると
「お嬢様、頑張ってください」
と応援されてしまった。
もうっ、レイナまでどうしてよ!!
「ロベルト……」
「さっ、ごゆっくりお寛ぎください」
そう言うと、ロベルトは半ば強引に主人の背を押し、部屋に入れた。
「仕方ない。リリカ嬢もおいで」
「はっ、はいっ」
緊張のあまり、声が上擦ってしまう。
リリカが部屋に入ると、後ろで扉が閉まる音が聞こえた。
そうよね。こうなった以上仕方ないわよね。
扉の前で立っていると、先にソファに腰を掛けていたレイリックに隣に座るよう促され、端に座った。
「もうちょっと近くにおいでよ」
「えっ。いえ、このままで……」
大丈夫です、と言おうとしたリリカだったのだが、レイリックにくいっと腰を引き寄せられた。
「わわっ。ちょっ、レイリック様!?」
「ふふっ、緊張してる?」
「うっ、と、当然ですっ。近すぎますわ」
ううっ、また倒れないようにしないと。
折角の機会だし、もっと距離を詰めたいな。
「そろそろ慣れてもらわないとね。しばらく離してはあげられないな」
そう言って抱き締められる。
「っ〜〜」
「そんな可愛い顔されたらますます離れたくなくなるよ」
「ど、どうしてそうなるんですの!!」
「ふふふっ、そうだなぁ。レイって呼んでくれたら離してあげるよ」
「えっ!?」
「嫌? 僕はそう呼んでほしいんだけど」
しゅんとした表情を浮かべ言われる。
うっ。ちょっと恥ずかしいけど、言うしかなさそうね。
「っ……レイ様」
「レイ、だよ」
そう耳元で囁かれる。
「……レ、レイ……」
恥ずかしさを堪えながら小声で言う。
「ああっ、まずいな。もっと離したくなくなった」
「ええっ!?」
さらに抱き締める手に力が籠もっている。
「っ〜〜、あっ、あのっ、わ、私のこともリリカって呼んでくださいっ」
「えっ」
「お返しですっ」
私だけそんなの可笑しいじゃないのっ。
「リ、リリカ……」
「っ!!」
リリカはドキドキと鼓動が高まるのを感じた。
聞こえてないかしら。聞かれてたら恥ずかしすぎるわ。それに、ちょっと呼び方が変わっただけなのに、こんなに嬉しいなんて思わなかったわ……。
何この反応、可愛いすぎるんだけど!!
目をキラキラさせるリリカを見て、レイリックもまたそっぽを向いて、身悶えていた。
リリカもレイリックもしばらく何も発することが出来なかった。




