襲撃者
2人の襲撃者の意識が戻ったと聞いたレイリックとレナードは地下牢へと向かった。
「「!!」」
レイリックを見た2人は驚いた表情を浮かべている。
「その様子だと僕のことは知っているみたいだね」
「えっ、ええ、もちろんです。アルマーニ王国の王太子殿下、ですよね?」
動揺しながらも男は返事をする。
「いかにも。君たちが憶えていること全てを話してもらおうか」
「その、実は何があったのか、記憶が定かではなくて……。申し訳ありません」
「……それは2人とも?」
「はい、わたくしも何も憶えておりませんわ」
「……」
あのとき2人は正気を失っていた。だが、完全に瘴気に呑み込まれていたわけではなかった。だとしたら、普通は記憶が微かでも残るものなのだ。それならなぜ嘘を付いたのか。答えは一つだろう。
「湖に2人で出掛けたところ、何かに惹かれるような不思議な感覚がしたんです。それで、その方へと向かって……」
「そうですわ。気が付いたら、あの場所にいたのですわ」
それがおそらくは瘴気か。負の感情を多く持っている者は惹き寄せられるという。
「つまり僕たちに攻撃したのも本心ではなかったと」
「当然です!!」
「もちろんですわ。そのようなこと、わたくしたちが自らするはずがございませんわ。レナード殿下もそう思われませんか」
レイリックの隣に立ち、無言を貫いていたレナードに向かって言う。
「……いや、もうさすがに庇うことは出来ない」
レナードは少しの間を置いて、はっきりとした口調で告げる。
「君たちのこと調べさせてもらったよ」
「え?」
「レナードを利用しようとしたことは分かっている」
「な、何を仰っていらっしゃるのですか!!」
「そうですよ、俺たちがそのようなことをするわけがありませんっ!!」
「だったらどうして嘘を付いた?」
「何を……」
「君たちは何も覚えていないと言っていた。なのに、なぜ僕たちに攻撃したことは覚えている?」
「っそれは、まさか殿下に攻撃してしまうとは思わなくて、一時的に正気に戻って、だからそこだけは覚えているんです!!」
「わたくしもですわ!! 微かに覚えていて」
2人揃って必死になって弁明する。
「はぁ、まだ誤魔化せるとでも?」
レイリックは溜め息を吐き、冷たい瞳で告げる。辺りには吹雪が吹いているかのような空気が流れている。それを感じ取った2人は怯えた目を向けている。
「これを忘れたとは言わせない」
そう言ってレイリックは2人に小瓶を見せる。
「「っ!!」」
「君の持ち物にあったんだ。これは香水のようだね」
女に問い掛ける。
「っだったらなんですの!?」
一瞬、動揺を見せたが、開き直ったようだ。
「この香水でレナードの気持ちを操ろうとした。ああ、もちろんすでに術は解かせてもらったよ。魔術だと敏感なレナード相手じゃバレると思ったのかな? この香水にも人を思い通りにする作用があった。だが完全には効かなかった。効いたと思って声を掛けたようだけど、無駄だったみたいだね」
それは街でレナードが彼らと話しているところをリリカが見かけたときのことだ。
「完全に効いてしまうと本来の感情をなくしてしまう、危険な香りだ。それを王族に使うということがどういうことか、覚悟は出来ているんだろうね」
「っ!!」
「なっ、何も知らなくて……。そんな危険な薬だと知っていたら使いませんでしたわ」
「言ったよね。もう全て分かっていると。君たちが己の意思で使ったことは確認済みだ」
まさか……。
ここでレナードは1つの可能性に思い至っていた。
この香水は近くにいる者なら誰でも操れる。現に僕は普通に会話する程度の距離で薬の効果が出ていた。ならそれより近くにいた人はどうなる? 彼女も操られていたとするなら……。
レナードはそこまで考えて、拳を握り締めた。
「すまないが兄さん、少し席を外してくれないか? 確かめたいことがある」
レナードは真剣な面持ちで告げる。
「……分かった。外で待ってるから何かあったら呼んでくれ」
「ああ」
レイリックが退出したのを確認すると、レナードは彼らに問い掛けた。
「あの香水で操ろうとしたのは僕だけか?」




