男神現る
「やっと見つけたよ、リリカ」
銀髪の若い男性が笑顔で言う。
誰!?
リリカたちは近くのカフェまで移動し、個室に案内してもらい、席に着いた。
「どうぞ」
店員の女性がお茶をテーブルに置く。しばらくして頼んでいたお茶菓子も運ばれて来た。
「あの、お嬢様のお知り合いの方ですか?」
「いえ、知らないわ。それで、どちら様でしょうか?」
「カミだよ」
「はて、そんな名前の知り合いいたかしら」
「違う違う。そうじゃなくて、植物の神だよ。この世界の創造神でもあるね」
「へっ?」
リリカは驚きのあまり、声が上擦ってしまう。レイナもリリカの隣で驚愕の表情を浮かべている。
「ちなみに君を転生させたのも僕です」
「!?」
普通なら信じられない話しだけど、転生って言ってるし、まさか本当に、
「本物の神様?」
「そうだよ」
神と名乗るその男性は大きく頷く。
「それでどうしてこちらに?」
「そうそう。リリカに大事な話しがあったんだよ。ちょっと大変なことになっちゃってね」
「大変なこと?」
「うん。神界から人間界の様子を画面で見てたんだけど、間違って追放ボタンってのを押しちゃって、追放しちゃったの」
「誰を?」
「僕を」
「つまり、まさか……」
「そっ、神界に帰れなくなっちゃった」
「ええっ!?」
どう間違ったらそうなるのよ!?
「そこで君に助けてもらおうと思ってね」
か、勝手すぎる……。
「取り消そうとしたけど出来なかったんだよ。で、君たちを転生させたってわけ」
「たち?」
「うん、そう。君と聖女シェリル」
「えっ!? 聖女様も転生者だったの?」
「そうだよ。僕としては2人には仲良くしてほしいんだけど」
「っそれは……悪いけれど関わる気はもうないわ」
「そう言わずにさ、お礼はちゃんとするから。ねっ」
「そう言われても……」
「うーん、困ったな。このままじゃこの世界が滅んじゃうんだけどな」
「はい!?」
「そっか、まだ言ってなかったね。だって創造神の僕が神界にいないんだよ。僕が神界にいることで、ある程度瘴気を抑えることが出来たんだよ。まっ、すぐにではないけどね」
そう言うと、その男神はお茶菓子を口に運んだ。
詳しく話しを聞いたところ、瘴気が集まることで魔物が生まれるため、創造神がいなくなれば次々と魔物が生まれ、生態系のバランスが傾き、いずれ人間が魔物によって滅ぼされてしまうとのことだ。
「そういうことは先に言ってよっ!! はぁ、それで私は何をすればいいの?」
「えっ、協力してくれるの?」
「協力せざるを得ないじゃないっ」
「良かった。よろしくね、リリカ。それでなんだけど、まず僕の神としての力が消える前に神木の元に行く」
「で、その御神木はどこに?」
「それが王宮なんだよ」
「どこの?」
「アルマーニ王国だよ。他の国にもあるけどね」
「じゃあ、どうしてアルマーニに?」
「シェリルもいるし、ちょうどいいんだよね」
「……結局、帰らないといけないのね。っていうか、神様なら御神木には自由に行けるんじゃなかったの?」
「それがね。力不足で無理だった。でね、君を捜すついでに観光してたんだけど」
呑気な神様ね。
「あと半年ぐらいなら大丈夫だから」
「!? 半年したら滅んでしまうのね」
「いや、半年ってのは僕の期限」
「え?」
「半年後までに神界に戻れなかったら完全に力を失っちゃうんだよ。そうならないためにも協力者が必要でね」
「聖女様はともかく私に出来ることなんてないと思うけど」
「君は気付いていないみたいだけど、僕が直接、特別な力を与えて転生させたから、その力を使うんだよ」
「翻訳魔法じゃなく?」
「うん。まあ翻訳魔法は転生させたお詫びみたいなものかな」
「でも私魔法なんて禄に使えないのに……」
「まあ、神力は魔法とは違うからね」
「えっ? もしかして、私に与えた力って……」
「そっ、神力。僕の力の一部、だよ」
「!?」
リリカは驚きのあまり声を出せなかった。
「僕の力を分け与えられる魂の持ち主って滅多にいないんだよね。リリカが唯一だったし」
「そう、なのね……」
「さてと無事会えたことだし、1ヶ月間くらいはのんびりしようっと」
「えっ、すぐじゃなくていいの?」
「言ったでしょ。半年は大丈夫なんだよ。滅多にこんなに人間界に来れる機会ないんだから楽しまないと」
ホント、のんびりしすぎでしょ。
「それに君もすぐに戻りたくはないんじゃない?」
「……お見通しなのね」
「そりゃ、一応でも神だからね」
「一応って」
「じゃっ、決まりだね。しばらく観光しよっか。あっ、これから他国に行くのもいいけど、どうする?」
「結構ですっ!!」
呑気にも程があるわよ。
この人が私たちの崇めていた神様だなんて……。
と今後が不安になったリリカだった。




