公爵、執務室に突入する
「リリカ嬢を追う」
執務室に戻るなり、レイリックはロベルトに告げる。
「公爵に連絡は?」
「した。すぐにでも飛んで来るだろうな」
バンッ
そのとき、執務室の扉が乱雑に開けられた。そこにはウィリアムが立っていた。
「リリカはどうなったのです!? 一体、何があったのですか!!」
「ということはお屋敷に戻られたわけではないのですね」
「ああ、帰って来てなどいない」
「……」
「公爵様、実は……」
ロベルトが主人の代わりに状況を説明する。
「そんなことが……。聖女め、勝手な真似をっ」
ウィリアムは憤り、執務室を出て行こうとする。
「ちょっ、どちらに行かれるのですか!?」
「聖女のところに決まっているだろ」
「聖女様とは我々がすでにお話ししました。犯罪とかそういうわけでもないので、何も出来ないんですよ。っていうかしたらダメ」
慌ててロベルトが止める。
「くっ、仕方ない。今はリリカを捜すことか。しかし捜すな、か」
「ああ。だけどそう言われても、当然捜すよ」
「居場所に心当たりはあるのですか?」
「ああ。とはいえ、僕の予想通りだと他国だ」
「!? ではすぐに出掛ける準備を」
「公爵、リリカ嬢を捜すのは僕に任せてくれないかな」
「しかし……」
「頼む」
「……ただ待っているだけというのも落ち着かないのですよ」
「必ず見つけ出す」
レイリックは強い口調でウィリアムに言う。
「……分かりました。ただし、必ず連れて帰って来てください。それが条件です。いつまで経っても帰って来なかったら、迎えに行きますよ」
「ああ、約束しよう」
そのとき、また扉が開き、今度は高貴な1人の女性がノックなしに部屋に入って来た。
「えっ? 母上」
レイリックの母であるアルマーニ王国の王妃だ。
「話しは聞いたわよ。仕事は私たちがやっておくから、こっちのことは気にしなくても大丈夫よ」
「私たち?」
「ええ、そうよ。陛下にも当然してもらうもの。貴方、仕事しすぎなのよ」
「え?」
「普段、たくさんしてる分、たまには任せちゃいなさい」
「母上……ではお願いします」
「ええ。入りなさい」
そう告げると続々と王妃付きの侍従が執務室に入って来た。そして、目の前に積まれていた書類が持ち上げられて、どこかに運ばれて行く。あっという間に目の前の書類が無くなった。
「じゃあね」
王妃は部屋に戻って行った。
「よし、庭園に向かおう」
「えっ? 庭園?」
到着すると、そこには1人の男性が作業をしていた。
「グレイス、久しぶりだね」
「ん? 王太子殿下、どうしてこちらに?」
彼は庭師のグレイスだ。グレイスと話すのはリリカを庭園まで案内しに来たとき以来だ。
「グレイス、1つ尋ねたいことがあってここまで来たんだ」
「なんでしょうか?」
「リュカの生産国はどこかな?」
「えっ? リリカ様にも同じことを聞かれましたよ」
!! やはりリリカ嬢はリュカの生産国に向かったのか。
なるほど、そういうことか。
ロベルトはレイリックの考えを理解した。
「主な生産国はカタリナ王国ですね」
「主な?」
「はい。周辺諸国でも生産されていますので。カタリナ王国の手前にあるキース王国でも大量に生産されています」
「なるほど……。分かった」
カタリナに向かうべきか、キースで捜すべきか。
「とりあえずカタリナ方面へ向かおう」
レイリックはロベルトにそう告げると、すぐに出発した。




