執務室にて
「それで集められた理由、分かってるか?」
ロベルトは影からリリカの護衛を務めていた護衛部隊の者たちにそう問い掛けたが、誰一人として理由が理解出来ていない様子でいる。
「リリカ嬢がいなくなったんだ」
「え?」
「そんなっ」
「なっ。どういうことです!?」
護衛対象が突如として姿を消したと聞き、混乱しているようだが、
「それはこっちが聞きたいんだ」
「まさか、誘拐されたのですか!?」
「いや、そういうわけじゃない。手紙が残されてたからな」
「……出掛けられるお姿は見えなかったのですが」
「姿?」
「はい」
話しを聞いたところ、どうやら彼らは目視で護衛していたらしい。
人の持つ魔力の性質はそれぞれ異なる。魔力が多ければ、その魔力の痕跡を辿ることが出来るのだが、リリカは魔力が少ないため、目視で護衛をするしかなかった。またレイナもリリカと同様に魔力が少ないため、2人が外に出掛けても変装していたため全く気付かなかったのだ。
「それは言い訳にならないけどな。というか、そういうことは早く言ってくれ」
「申し訳ありません」
護衛部隊長が謝罪する。
目視だけで護衛を行うなど異例だ。側での護衛ならそれでもまだ問題はなかっただろう。しかし、今回は離れた場所からの護衛だったのだ。
「まあ今はそれはいい。何か変わったところとかなかったのか?」
「そう言われましても……」
「あっ」
「何か思い出したのか?」
「関係があるかは分かりませんが、昨日リリカ様が聖王国の聖女様とお話しされていました」
「聖女様と? なんでまた」
「それが聖女様の方から話し掛けに行かれていまして」
「何話してたんだ?」
「そこまでは分かりかねますが、あまり良い雰囲気ではありませんでした」
「つまり、聖女様が何かしたって可能性があるのか。でも確定じゃないし、あんまり下手に騒いでも国際問題になりかねないし、どうしたものか。どうする?」
「……」
ロベルトはレイリックに意見を求めたが、返事が一向に返って来ない。振り返って様子を見ると、レイリックは呆然と俯いていた。
「レイ!!」
「えっ、ああ……」
名前を呼ばれ、ようやく顔を上げたレイリックだったが、浮かない表情をしている。
「しっかりしろよ。いなくなって辛いのは分かるが指示がなきゃ動けねぇんだよ、こっちは」
「そう言われてもどうすれば……」
「お前はこのままリリカ嬢と会えなくなってもいいのか?」
「っそんなの嫌だよ」
レイリックは気持ちを落ち着かせようと、深呼吸した。
ロベルトの言う通りだ。このままだと本当に二度と会えなくなるかもしれない。たとえリリカ嬢が僕を嫌いになったとしても、もう手放す気なんて更々ない。
「まずは聖女殿に会って話しを聞く。行こう」
レイリックはロベルトとともにシェリルのいる部屋へ足早に向かった。




