聖女への街案内
「わぁっ、ピカピカしてる。綺麗ですね。欲しいなぁ」
シェリルはそう言いながらチラリとレイリックを見る。
「……」
僕はどうしてこんなところに……。
今朝のことだった。突然、シェリルに街を案内してほしいと頼まれたのだ。本当は断りたかった。だが1人で行かせて、もしものことがあった場合、責任を負わなければならない。仕方なしにシェリルに案内することに決めたレイリックだったが、この状況は納得いかない、と考えていた。ただ街を案内するだけのはずが、なぜか宝石屋に入りたいと言い出し、ネックレスを欲しいと強請られている。
だから、行きたくなかったのに……。
「ねぇ、買ってぇ」
今度は直球でお願いを始めた。
「私のこと、大切なんでしょ?」
「それはそうだけど」
聖女だからね。っていうか、可愛い子ぶってお願いしたら、誰でも言うこと聞くって勘違いしてない? はぁ、あんまり人にプレゼントなんてしたくないんだけど。ましてや女性になんて誤解与えたくないし。
しかし、ここでプレゼントしないとなると聖女に社交辞令のプレゼントを買えないぐらい財政が緊迫してると勘違いされる可能性がある。
くっ、仕方ないっ。
「1回だけだ」
「やった〜、ありがとうございますっ」
疲れる……。
常に誰にでも愛想笑いを浮かべて接して来たレイリックだったが、ここにきて仮面が外れそうになっていた。
シェリルはネックレスを包んでもらい、大切そうに抱えている。
「帰るよ」
「はいっ」
「……どうして腕を組んでいるのかな?」
王宮に戻り、馬車から降りる際にエスコートしようとしたのだが、なぜかそのまま腕を絡められてしまった。
「ダメですか?」
「……君の国ではどうだったか知らないけど、この国ではこういうことをするのは恋人だけだよ」
「えぇ〜、なら、私が恋人になったらいいじゃない」
「この前も言ったけど、恋人を作る気はないよ」
「私はこんなにも好きなのに……」
潤んだ瞳でシェリルが言う。
しかし、シェリル自身はそう言っていても、レイリックはシェリルから好きという感情を全くもって感じられなかった。そこにあるのは羨望のみ。
一体、何なんだ、この聖女は。
「とにかく離してくれるかい?」
「ええ〜」
ようやく離してもらい、安堵したレイリックだったのだが、運が悪いことにシェリルとレイリックが腕を絡め歩いていた様子を上の階からリリカに見られていたのだ。
「えっ? どういうことなの?」
リリカは呆然と呟いた。




