パーティー本番2
レイリックがシェリルと踊り始め、リリカが1人になったところを見た貴族がリリカの元に話し掛けに集まって来た。皆、我先にと自己紹介をして、アピールを始める。貴族家当主もそうだが、令息や令嬢も滅多にお目にかかれない公爵令嬢に興味津々だった。その様子を横目で見ていたレイリックは(やはり、あの場に残るべきだったか)と思っていた。
この人、ずっとあの婚約者の方、見てるじゃない。
と気付いたシェリルはレイリックとの距離を詰め、意識して甘い声を出し、話を切り出した。
「あのぅ、王子様〜」
「……なんだい?」
はぁ。苦手だな、こういうタイプは。
そう思いつつも笑顔を作り、耳を傾ける。
王太子としての教育を受けているだけあって、端から見れば、楽しく踊っているようにしか見えない。
「私ぃ、王子様のことが好きになっちゃいました」
レイリックはまたか、と思った。今までこういうパターンで何度告白されたことか。
「……そっか。でも僕にはすでに婚約者がいるからね。他に素敵な人を見つけなよ」
「王子様がいいの。それに王子様って何人もの女性と婚約出来るんですよね」
「事実、そういうことはあるね。でも僕は婚約者は1人で充分だよ。だから他を当たってくれ」
レイリックが言い終わったとき、ちょうど音楽が止まった。
「じゃあね」
「あっ」
なんなのよっ。眼中にすらないじゃないっ。
レイリックはそのままの足で真っ直ぐにリリカの元へと向かった。
「リリカ嬢を返してもらうよ。さっ、行こうか」
「えっ、どちらに??」
リリカはそのままテラスまで連れて行かれた。
「あの、このようなところまで来てしまっても大丈夫なのですか? 挨拶もまだですし」
「そんなの全員にしてたらキリがないよ。程々でいいんだよ。聖女殿には挨拶も済ませたし、肝心の僕とのダンスも終わったからね」
「確かに……」
あれだけの人数に一人一人挨拶していたら終わらなさそうだ。元々レイリックには、2人のダンスさえ終われば自由だと言われていた。
ん? っていうか肝心のって
「1番大事なのは聖女様とのご挨拶では?」
苦戦してダンスの練習に励んではいたが、このパーティーはあくまで聖女の歓迎会という名目である。
「いや、まあそれも大事といえばそうなんだけどね。それよりも君とのダンスの方が大切だよ」
うっ。
笑顔で言われ、危うくときめいてしまうところだった。
「で、では私は部屋に戻りますわっ。ごきげんよう」
「えっ、リリカ嬢!?」
リリカはそう言うと慌てて去った。このまま、あの場にいたら空気に呑まれてしまいそうだった。パーティーというものは不思議な空気感で包まれている。それ故にその場の流れで婚約を決めてしまう男女が毎年のように現れているのだ。
これ以上、好きになったらダメなのに……。
リリカは必死に気持ちを押し留めた。




