パーティー本番
あっという間に月日は流れ、ウェルディ聖王国の聖女一行が到着し、いよいよ歓迎パーティー当日となった。
今回は国王陛下と王妃様も外遊から帰還されているため、ともにパーティーに参加する。
外遊から戻られてすぐに、リリカはレイリックとともに両陛下の元に挨拶に向かった。リリカ自身は全く覚えていなかったのだが、幼い頃に面識が会ったらしく、特に王妃様はリリカの母親であるエバルディ公爵夫人とは友人だったらしく歓迎してくれて、一安心した。
両陛下に続いてパーティー会場に入場すると、一斉に視線が集まるのを感じた。
「今日は僕の側から離れないでね」
こんなに大勢が集まっていると何が起こるか分からないし。
「はっ、はい」
「緊張してる?」
「ええ、久しぶりのパーティーですし」
「大丈夫だよ。普通にしてれば」
「普通って……。レイリック様は慣れていそうですね」
「僕はこれでも久しぶりのパーティーなんだけどね。まあ緊張はしていないよ。そんなに意外?」
「えっ」
こんなに平然としているのに、自分と同様に久しぶりの参加だということに驚いていたのだが、顔に出ていたらしく、すぐに気付かれてしまった。
「えっと、さすがですね」
「最近はあまり参加していなかったけど、幼い頃から何度も出ているからね。慣れたものだよ。本来ならこれが普通なんだけどね。君とは婚約するまで全然会えなかったからさ、不思議だったよ」
完全に過保護なお兄様のせいね。
国王陛下が上に立ち、歓迎の挨拶を述べる。
あそこにいらっしゃるのが聖女様……。
側には神官らしき人物が数人立っている。
国王陛下の挨拶が終わると音楽が流れ始めた。いよいよダンスが始まる。
「さあ、お手を」
「っはい」
「緊張しなくても大丈夫だよ」
そうは言われても皆の視線を感じる。
よし、無になろう。そうすれば気にならないはず。
「ふふっ」
なぜだか笑われてしまった。
「何が可笑しいのですか??」
「いきなり無表情になるからさ。ちょっと面白くて。気にしなくていいよ」
そう言いながらもレイリックからは笑みが溢れている。
「もうっ。笑ってるじゃないですか」
「じゃっ、踊ろうか」
皆、自分たちのダンスは程々に、レイリックとリリカのダンスに注目している。ウィリアムはリリカのダンスを見て、「ううっ、成長したな」と涙ぐんでいた。
2人のダンスに注目しているのは会場内にいた聖女も同様だった。
へぇ~、あの人が王太子殿下ね。カッコいい人じゃないっ。それと婚約者か、確か公爵令嬢だったっけ。ふーん……。
曲が終わると会場は拍手に包まれた。
成功したのかしら?
「上手だったよ」
そう言われ、ほっとした。
「ありがとうございます。レイリック様のお陰ですわ」
ダンスが終わり、しばらくしても2人の元へ誰も声を掛けてくる様子はない。通常なら王太子と婚約者の元に一斉に貴族たちが挨拶に来るのだが、聖女の様子を伺っているようだ。
そのとき聖女が、レイリックとリリカの方へゆっくり向かって来る様子が見えた。聖女の後ろには神官が付いている。
「ごきげんよう。聖女シェリルですわ」
「初めまして。僕はアルマーニ王国王太子のレイリック・フォン・アルマーニだ」
「ごきげんよう、聖女様。私は王太子殿下の婚約者でリリカ・エバルディと申しますわ」
「あの、王太子殿下〜」
「なんだい?」
「私と一曲踊ってもらえませんか?」
シェリルは甘い声でそう尋ねる。
「……」
踊りたくないって顔してるな。
近くで話しを聞いていたロベルトはそう思った。その通りだった。
誰とも踊りたくはないんだけど、両国間の関係を考えると断るのは得策ではないか。しかし、僕が離れるとリリカ嬢に余計な虫が付くだろうし、それは嫌だな。でも……。
「あの、踊って来てください。私は大丈夫ですから」
「えっ、でも」
「私だってちゃんと振る舞えますから」
パーティーでの作法は学んでいるもの。
「そういうことじゃないんだけど……。分かった、すぐ戻るよ」
「はい」
レイリックは目でロベルトに合図をした。合図を見たロベルトは
了解。守れってことね。
と瞬時に理解した。
そして、次の曲が始まった。




