パーティー
「失礼いたします、殿下」
「久しぶりだね、フローランス伯爵夫人。それで何かあったのかな?」
リリカの教育係である彼女はレイリックの元を訪れていた。
「王太子妃教育が終了する目処が立ちましたのでご報告をと思いまして」
「えっ? もう? 随分早いな」
「覚えが早い方ですので」
「そうか。さすがリリカ嬢だね」
レイリックは笑みを浮かべている。
これですぐにでも結婚出来るね。
コンコン
ノック音が聞こえた。
「失礼いたします」
「公爵か、どうだった?」
「どう、とは?」
いきなりそう尋ねられ、何の話しか分からなかったウィリアムは首を傾げる。
「何って婚約者殿とのデートのことだよ」
この2人には上手くいってもらわないと。リリカ嬢との仲を邪魔されたくはないからね。
「えっ、ええ。そう、ですね」
ウィリアムは珍しく動揺を見せた。
「公爵?」
「いえっ、まあ、それなりに楽しめましたよ。ただ……」
「ただ?」
「普段と雰囲気が全く違ったので、その……」
ウィリアムは言い淀んだ。
これは良い感じかもね。よしっ、このままの調子で仲良くしておいてもらおう。
「デートなんだから、そういうものだよ」
レイリックは笑顔でそう言いはしたものの、リリカと出掛けた際にはそもそもデートだと意識していなかったため普段通りの格好で出掛けていた。
「そ、そういうものですか」
「ああ。あっ、そうだ。今度ウェルディ聖王国の聖女殿が我が国に来られるんだよ」
「聖女、ですか」
ウェルディ聖王国とは代々聖女を輩出することで栄えてきた国家だ。ゆえに聖女には王族と同じぐらいの力がある。
「歓迎会を開く予定だから公爵にもそこに参加してもらうよ」
「承知いたしました」
〜リリカの部屋〜
「やあ、久しぶりだね」
リリカが部屋で寛いでいると突然レイリックが現れた。
「きゃっ」
気が付くと後ろに立たれていた。
び、びっくりした……。
心臓がドキドキと音を立てている。
「レイリック様!? ど、どうしてこちらに?」
「少し話しがあってね」
「いきなり後ろに立たないでくださいっ」
「ふふっ。それで話しなんだけど」
スルーされた!?
「ウェルディ聖王国の聖女殿が今度来られるんだけど、歓迎会を開くからリリカ嬢には僕の婚約者として参加してもらうよ」
「……聖王国の聖女様、ですか?」
「そうだよ」
「それで歓迎会とは?」
「うん。それなんだけどパーティーを開くんだよ」
「パーティー……パーティー!?」
リリカは今までパーティーにはほとんど参加して来なかった。ウィリアムが過保護なのも原因の1つではあるのだが。
「パーティーってダンスを踊ったりそういう……」
「ああ、そういうパーティーだよ。色々声を掛けられるだろうけど、軽く挨拶するだけでいいよ。あと僕と一回だけ踊ってくれたら、他の人とは踊らなくてもいいし、特に何もしなくていいから」
レイリックとリリカが婚約後、公のパーティーに参加するのはこれが初めてとなる。
貴族の令嬢がこれほどパーティーへの参加期間を空けることは本来ない。リリカがパーティーに参加するのはデビュタント以来だ。
久しぶりのパーティー……緊張する。緊張するけど、それ以上に問題は……私ダンスなんて踊ったことないわよっ!?
当時婚約者はいなかったため踊る必要などなかった。それに公爵令嬢なのでダンスは完璧に教えられているはずだと判断してか、王太子妃教育にもわざわざダンスのレッスンは組み込まれていなかったのだ。
お忙しい方だけれど、フローランス伯爵夫人に頼んだら教えてもらえるかしら。
「が、頑張ります」
絶対に成功させないとっ。
リリカは気合いを入れて、返事をした。




