第2王子が戻って来ました
…………遅いっ!! 今何時よ。外も見れないし時間も分からないし退屈ね。
しばらく待ってもレナードは戻って来なかった。実際にはそんなに時間は経っていないのかもしれないが何もせずに待ち続けるのはリリカにとっては苦痛だった。出来ることといえば……
チラッ
リリカはベッドの方を横目で見た。
寝ることだけよね。段々眠くなって来たし、昼寝したいところだけど、いつ戻って来るか分からないのに、いくら私でもそんな呑気なこと出来ないわ。
一方レナードは
「そろそろいい頃合いかもな」
と1人呟く。
人はピンチに陥ると本性を現す。そう思い閉じ込めたレナードだったが、リリカはまるでピンチだと思ってはいなかった。
そして、レナードはリリカのいる部屋へと向かい、扉を開けた。
「あっ、レナード殿下!! 随分と遅かったですわね。こんなところに放置して」
「ああ。かなり待たせてしまったかな」
そう言うとレナードはリリカをいきなりベッドに押し倒した。レナードはリリカの上に乗りかかるような体勢になっている。
「レ、レナード殿下!?」
一体、どういう状況なの!?
「あっ、あのーレナード殿下?」
ふっ
レナードは急に笑顔になった。
うわー、良い笑顔。
「ねぇ、僕にする気はない?」
「はい?」
「だからさ、兄さんじゃなくて僕と婚約する気はない?」
「……はい?」
全く意味が分からないわ。どうして突然そんなことを? 兄弟仲は悪くはなさそうだったし、やっぱり私がレイリック様に相応しくないと思われてるのかしら。それとも試されてるの?
「どうしてそのようなことを?」
「兄さんから契約のことを聞いてね。あの条件なら僕でもいいはずだ」
確かに、それはそうよね。
美味しいお茶が飲みたいからというだけで結んだ契約なのでレナードと婚約しても条件的には全く問題はない。
「王太子妃なんて立場になったら面倒なことが増えるだけだ。君に野心があるようには見えない。それなら僕と婚約して自由に生きた方が楽しいと思わない?」
「……」
「それに、報われない想いなんて虚しいだけだからね」
「?」
何の話しをされているのかしら。よく分からないけど、でも、どうしてそんなに辛そうな、悲しそうな表情を浮かべているの?
「レナード殿下? あの、大丈夫ですか?」
「あっ、ああ平気だ」
レナードはそっぽを向いて深呼吸するとリリカの方に向き直った。
「それでリリカ嬢、僕の提案を受ける気はある?」
「いいえ。申し訳ありませんが、そのお話しをお受けすることは出来ません」
「……即答か。どうして?」
「それは……この契約はレイリック様と結んだものです。勝手に変更することなど出来ません」
嘘は言っていないわ。
「それぐらいどうにでもなると思うけど? あくまで契約だから破棄することは可能だ。兄さんとの契約を破棄して僕と結び直したらいい」
「っ確かにレナード殿下の仰る通りですわ」
「それなら……」
「ですが私はそのお話しをお受けする気はありません。私はレイリック様以外との婚約など、もう考えられませんので」
リリカがそう告げると、一瞬驚いた表情を浮かべていたが次の瞬間、
「ははっ、安心したよ」
と返され、レナードはリリカから離れた。
「え?」
「兄さんのこと、ちゃんと大切に思ってくれているみたいだね」
試されていたのね。
「当然です。レイリック様には何度も助けて頂いていますし、レイリック様のお陰で今も無事暮らせているのですから」
「なるほど、恩人でもあるということか」
「はい。レイリック様は恩人でもありますし、私にとっては大切な方ですわ」
「そうか。ふっ、見事に振られたな」
「本気で私を婚約者に、なんて思っていらっしゃらなかったのでは?」
「気付かれてたのか」
「ええ、何となくですが」
「……兄さんのこと、頼んだよ」
「私に出来ることなど少ないと思うのですが……」
「君だからこそ出来ることもあるよ。それに兄さんにはリリカ嬢が必要だ」
「まさか、そのようなこと……」
ない、と言おうとしたがレナードのあまりに真剣な目を見て、そうは言えなかった。
「じゃっ、行こうか」
「あっ、はい」
こんなところで置いて行かれるわけにはいかない。リリカは慌ててレナードの後を追っていった。




