帝国からの使者
コンコン
ノック音が聞こえた。
ビクッ
リリカはあれ以来1度もレイリックとは会っていない。何かと忙しいようだ。レイリックが来たのかと思い、身構えたリリカだったが、
「お嬢様、ロベルト様がお見えです」
「えっ。珍しいわね。お通しして」
「かしこまりました」
部屋に来たのはレイリックではなく、レイリックの侍従長ロベルトだった。
「ロベルト様、どういったご要件でしょうか」
「王太子殿下の代理で参りました。実は1週間後隣国エスフィート帝国の第2皇子殿下がお越しになる予定なのですが、リリカ嬢にも王太子殿下の婚約者として、お会いしてほしいのです」
「承知しました」
でも随分急だけど、何かあったのかしら。
エスフィート帝国の第2皇子殿下、確か名前はジュリアン殿下だったわね。滅多に表舞台に出ないと聞いたけど、どんな方なのかしらね。
そして、1週間が経った。今日がジュリアン殿下たち御一行をお迎えする日だ。国王陛下と王妃様は現在、外遊中だ。だから王太子レイリックと次期王太子妃であるリリカだけでお迎えする。
「……」
リリカは初めての公務に緊張していた。しかも他国の王族と会うのは初めてのため、失敗したらどうしよう、と不安で仕方がなかった。
「大丈夫だよ。普通にしていれば」
「はい……」
リリカは大きく深呼吸してどうにか落ち着こうとする。
そのとき、「皇子殿下御一行が到着されました」という声が聞こえ、ギイッと音を立て、扉が開く。
皇子殿下らしき豪華な衣装を着た男性と、その男性の後に2人の男性が続く。謁見の間の中央付近まで来た一行は礼をする。
随分人数が少ないのね。帝国は大きな国だから、もっと人数が来るものだと思っていたのに。
「お顔をお上げください」
「はい。エスフィート帝国より参りました第2皇子ジュリアン・ディ・エスフィートと申します」
珍しい……。
ジュリアンの容姿は黒髪黒目だった。この国では全く見かけたことのない色だったため驚いたのだ。
「初めまして。僕はアルマーニ王国王太子レイリック・フォン・アルマーニです。彼女は僕の婚約者で」
「お初にお目にかかります。エバルディ公爵家長女リリカ・エバルディと申します」
「皆様、お疲れでしょう。どうぞ、ごゆっくりお過ごしください」
「はい。ご配慮ありがとうございます」
ジュリアンたちは退出した。
こっ、これで良かったのかしら。
不安に思い、レイリックを見ると「ばっちりだよ」と言ってくれた。リリカはそれを聞き、ほっとした。
そして、「今日はもうゆっくり休んで」とも言われた。正直、緊張のしすぎで疲れ切っていたため、お言葉に甘えさせてもらうことにした。
ふぅっ。
部屋に戻って来て、ようやく一息付くことが出来た。レイナはリリカが戻って来たことを確認すると、リリカが何も言わずともすぐにリュカを用意してくれた。
さすが、出来る侍女。
これでようやく今日は終わりだ。あとはジュリアンとレイリックの会談が主で、リリカは最終日ジュリアンたちが帰国する際に挨拶するだけでいい。
実際には短い時間だったけど、物凄く長かったような気がするわ。
そのようなことを考えながら、あっという間に眠りに落ちていった。




