まるでデート
「み、見られていますわ」
「ああ、そうだね。でもそれでいいんだよ」
リリカとレイリックは今、手を繋いで街を歩いている。
昨日、レイリックの執務室にて
「レイ、お前噂されてるぞ」
「噂?」
「ああ。お茶会に全く参加しないリリカ嬢を婚約者にするなんて、お前が女嫌いだから家柄だけで適当に婚約者を選んだってな」
「へえ」
お茶会に参加しないのは完全に公爵のせいだ。心配なあまり外に出したくない、とからしい。
「そうだっ。いいこと思い付いた」
そして、現在に至る。
レイリック様に「僕と一緒なら外出できるけどどうする?」と聞かれた私は、久しぶりに外出したかったため、「行きます」と即答した。けれどまさか手を繋ぐことになるなんて。仲良しアピールって分かってても恥ずかしいわっ。でも、貴族は政略結婚が普通だけど、仲良しだってところを見せないと、風除けとしての役目が果たせないし。契約を守るためにも、仲良しの演技を頑張らないと。
リリカは気合いを入れ直した。
「僕もこのままじゃダメだと思ったからね」
なるほど。レイリック様は女性嫌いみたいだし、つまりは女性に慣れるためでもあるのね。
頑張るって決めたけど、でも、でもっ緊張するわ!! 距離が近いっ!!
少しだけ離れようと距離を取ったはずが、なぜか先程よりも近付いている気がする。
実に不思議ね……。
それに、家族以外の男性と手を繋いだことなんて前世も含めて初めてよ。私も男性慣れしてないのに、どうすればいいのよ!?
「あ、あの手を繋ぐ必要はないんじゃ……2人で出かけるだけで充分仲良しアピール出来ていると思いますし」
アピールのつもりじゃないんだけど。また、可笑しな勘違いしているみたいだね、リリカ嬢は。
それに
「迷子にならないためにも、ね」
と笑顔で返される。
「迷子になんてなりませんわ」
「この前、迷子になったって聞いたけど」
うぐっ「それは、その……」
「というわけで、このまま行くよ」
リリカは周囲の人々に生温かい目で見られていることに気付いた。
もしかして、もしかしなくてもこれってまるでデートなのでは!?
そう思い、心の中ではあたふたとしていた。
「見せたいところがあるんだよ」
そう言って、連れて来られたのはお花畑だった。
「きれい」
紫、黄、ピンクなど同じ色の花が集まって咲いているため、上から見ると見事としか言いようのない美しい光景が広がっている。
「気に入った?」
「はいっ。素敵な場所ですね」
リリカは興奮して、目を輝かせている。
こうやって、目をキラキラさせているところを見ると、まるで子どもみたいだな。
「君はよく庭園にいるし、茶葉だけじゃなくて、花も好きなんじゃないかと思ってね」
「ええ、大好きですわっ」
満面の笑みでそう言われる。
……可愛すぎるっ。
公爵が溺愛するのも分かる気がした。
近くにあったベンチに腰をかけ、しばらくこの美しい景色を眺めていたが、日が暮れ始めたので帰ることになった。
「また来ようか」
「そうですね。楽しかったです。ありがとうございます、レイリック様」
リリカは笑顔でお礼を伝える。
「っ!?」
参ったな。こんな笑顔向けられるなんて、ますます手放したくなくなる。
スッ
レイリックは自分の感情を抑えきれなくなり、ついリリカを抱きしめた。
「なっ!? ななななにを!?」
動揺しているリリカ嬢も可愛いなぁ。
「ふふっ。これも仲良しアピールの一環だよ」
「そうなのですね……って周りには誰もいないじゃないですか!! お戯れも程々にしてくださいっ!!」
リリカはどうにか言葉を返したが、驚きと恥ずかしさのあまり思考が追いついていない。
「ふふふっ。これだけで赤くなるなんてね」
ドキ「ち、近すぎますわっ!!」
リリカはズザザッと後退りした。
「本当に面白いなぁ、リリカ嬢は。さあ、帰ろうか」
「はっ、はい」
帰りの馬車は緊張のあまり、目も合わせることが出来ないまま王宮に到着した。
その後、部屋に戻り、緊張感から解放されたリリカはすぐに眠ってしまった。




