表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

金曜日に花を買うのは

作者: しろかえで

今日は金曜日


しろかえでの『ひとり寝の女』シリーズです!!(#^.^#)






 金曜日に花を買うのは……


『どこかのテレビドラマのタイトルみたい』

そう思われた方……あの“バブル”を享受なさいましたか?

残念ながら私はまだこの世に存在しておりませんでした。


ではなぜ知っているのか??


いえいえ私もドラマの内容までは知りません。


ただ何度か聞かれた事があったのです。


『DVDかビデオありませんか?』って!(ちなみにソフト化はされておりませんでした)


 私……高校の頃から“趣味と実益を兼ねて”ビデオ屋でバイトしていまして……あらゆるジャンルの物を“乱観”してました。それこそ“エロ”から“浪曲”まで


 専門学校3年の時には“実習”や“課題”や“国家試験の勉強”と多忙だったので毎日はできなかったけれどお金は稼ぐ必要はあって、不定期で続けていました。


 そんな時にカレ……仁志くんが入って来ました。歳は二つしか違わなかったけど私はバイト歴5年のベテランでしたから、カレの指導を任されました。


 ついこの間まで高校生のカレはまだ美少年の面影を帯びていて……実はバイト仲間から随分やっかまれました。


多分、それも刺激になったのでしょう……

私はカレの事が好きになり……カレとシフトが合わない時は、他のコと仲良くなりはしないかと気が気でなりませんでした。


 好きと不安が嵩じた私は『()()()()の“初めて”をあげる』と言うニンジンをカレの目の前にぶら下げました。


 だけど、いざ事に及んでみると……カレはオンナの扱いは元より“ロケーション”選びから何から余りにも手慣れていて……私はベッドの上でグッタリとなりながら嫉妬の涙をこっそりシーツで抑えました。



 無事資格を取って就職し夜勤もこなせるようになると同世代のコ達よりは稼げたので、寮住まいの私は生活も余裕が出来て……カレにしてあげる事も増えました。


 カレは要領の良い人だったのでキチンと大学に通わなくても成績は『優』ばかり、生活の中心は“遊び”とその資金作りの為の“バイト”でした。


 そんなわけでカレにとっての私は……複数居る“恋人”の中のひとり、しかも“恋人”の数は増える事はあっても減る事は無い……

その恋人たちの誰もが“カレの一番”になりたがっていました。おのおのの方法で……


 そんな“競走”の中、私は寮を出てカレの“行動圏内”にあるマンションを手に入れました(もっとも、そのローンは今も払い続けていますが)


 私にとってこのマンションは“もう一人の恋人”の様で、手塩に掛けて慈しみ、ついには主寝室隣の5畳ある洋室にカレを迎え入れました。

これで……他のオンナ達と遊んでいてもカレは最後には私の元に帰って来る。


 勤務明けの寒い夜や暑い昼下がりに……カレが帰って来るのを4畳半も無い和室で一人待つのは寂しさが募りましたが、その分、カレが帰って来たら主寝室で思いっ切り甘えて……幸せでした……


 けれど、カレには無頓着なところがあって……私の“お城”で、しばしば“雑”な事をやらかしました。

 私はまるで自分が雑に扱われている様に思えて、次第に小言が増えてしまいました。

大抵は私が黙りこんで矛を収めたのですが、時にはそれが言い争いにまで拗れ、カレは“逆ギレ”して家を飛び出し、何日も帰って来ない事が出て来てしまいました。



--------------------------------------------------------------------


 12月は1年の中で一番楽しみな月だった。8日はカレの誕生日だし、クリスマスがあって大晦日からお正月とイベントが目白押しだ。

 ところがその年は前月の勤労感謝の日に言い争いになり、カレはもう2週間も帰って来ない。

ようやく先週からメッセに返事が来るようになったけれど『うん』とか『別に』とか素っ気ない。 もうあんまりにも辛くて直接謝り倒したくて電話を掛けるけど取っては貰えない状態で……

私は夜勤の最中、休憩室で見るスマホのひと言メッセに一喜一憂していた。


それでもとうとう!!

“自分の誕生日”にはウチに戻って来るとのメッセが来て、私は狂喜乱舞しパーティの準備に取り掛かった。


極めつけは彼への誕プレ!! うっとりするような色つやのカシミアのコートに手作りのラッピングを施した。

そして私自身にもChiy●n● Ann●で誂えたオーダーメイドのランジェリーでラッピングを施した。


それなのに……カレはなかなか帰って来なかった。


 飾り付けられたリビングダイビングをソファーの上から眺めて涙が滲んだ11時過ぎ、ドアが開く音がして、私は飛び上がり廊下に転がり出た。

そして靴を脱ごうとしているカレの背中に飛び付いた!


「!!!!」


酷く甘ったるいフレグランスの香りにルージュが擦れた跡……


カレの体に蛇の様に巻き付いて覗き込むと、胸やお腹はもっと酷い有様だった!!


私は泣き叫んでリビングダイビングのキラキラした物……飾り付けやケーキーやお料理やグラスやetc.etc.……全てをカレに投げつけ、最後に誕プレのラッピングを引き裂いて、中のカシミヤコートと一緒にカレを家から叩き出した。


 一昼夜泣き明かして日勤夜勤をこなし、ロクに寝ていなくハイな状態になった私は、カレの巣だった5畳洋室を片付け始めた。

 “カノジョ”が何人もいて、その一人である私の家に居ながら……エッチな雑誌がそこここから出て来て私は本当にあきれ果てたが、こういった“家探し”の最後に出て来たのは、あのティファ●ーブルーの()()()で……こんなのはカレの“収入”にはとても見合わない!!


『いったい何をどこのオンナにあげるつもりだったの??!!』

と入っていたジュエリーケースを開けてみると、中央にダイヤをあしらったプラチナのバンドリングで……私の名前が刻まれており、左の薬指を通すとピッタリ納まった。


そう言えば随分前に、戯れでお守り袋の紐を薬指に巻かれてサイズを測られた事があったっけ……



ああ!!


私はカレに


なんと言う事をしてしまったのだろう!!!


それから一昼夜、また泣き明かした。



--------------------------------------------------------------------


金曜に花を買うのは……

カレを叩き出したのが金曜だったから


あれ以来、私は何もかもが冷めて、“独り”がすっかり身に付いた。


今日も左腕に花を抱えたままドアのカギを開け、真っ暗な部屋に入る。


そして部屋の空気が人間によって動き始めた頃合いで

バンドリングが納まったままのジュエリーケースの前に花を供える。


言って見れば“恋のお弔い”を未だに続けているわけだ。


数年前、風の噂でカレが結婚したと聞いた。


もうそろそろいいだろう


私は人づてに聞いたカレのアドレスにメッセを出した。


『香織です。あなたが忘れて行った青いショ袋、処分してもいいですか?』


うん、当てにしてたわけではない、むしろ『メッセが奥様に見つかって、カレがその説明に難渋されればいい気味だ』くらいに思っていた。


なのにすぐ返事が来た!

『どうして?!キミがくれたカシミヤのコート……今もオレを暖めてくれているのに』


『そんなの、すぐ捨ててしまって!!奥様にだって悪い!!』


『捨てないよ!! オレが出会った女性の中で……香織ほどオレを暖めてくれた人は居ない! このコートに袖を通す度にオレはそれを思い出すんだ!』


『ふふ、冬の間だけでも思い出していただけて光栄だわ!でもこれを機会にコートは捨てて私の事は忘れ去って!』


『そんな事、できるもんか!! キミ、オレのアドレスを幸代さんに尋ねただろ?彼女からキミがまだあそこに一人住まいだと教えてもらったよ』


『何が言いたいの??!!どういう意味!!??』


『その言葉、そっくり返すよ!! オレは、今度はキミを暖めてあげたいだけだ』



この男!!

本当にクズだ!!


そして私は

どうしようもなくチョロい女!!


ハートがチカチカするスタンプをカレに送ってスマホを胸に抱きしめる。


クローゼットの奥に幽閉されていたChiy●n● Ann●のオーダーメイドのランジェリー……“無臭ダ”に取り囲まれていたから大丈夫だとは思うけど……取りあえずドライヤーで冷風を当てよう!!

もう一度、私に“ラッピング”を施す為に……

そして

今夜こそ、このラッピングを開けてもらうんだ!!






               おしまい


時間ぎりぎりですが何とか書けました(^^;)




ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 主人公が早とちりしたのか? 彼は本当に悪党スケコマシなのか? 実はオツム弱い系な天然くんなんじゃないのか? とか色々邪推出来ちゃいますね〜  (^_^;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ