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07.水は調薬室でたっぷり吸収した

 マンドラゴラは何を食べるのか。

 水は調薬室でたっぷり吸収したはずだ。それでもEPが減っているということは、水ではないのだろう。太陽光も……外に出てから浴びているが、EPが回復した様子はない。

 ということは……。


「わー!」


 肥料か!

 どこで手に入るんだよ!?


 考えている間にもEPは減っていく。限界が近いらしく、点滅を始めた。

 急げ、急げ。

 植木屋はどこだ!?

 とうとうEPが枯渇。それでなくても移動速度が遅いのに、さらに遅くなってしまう。


「わー!?」


 どこだ!? 肥料!


「わ……!」


 肥……!

 視界に入る観葉植物。その根下を見れば、植木鉢に入った土。

 EPの代わりに減少していたMPが、半分を切った。迷っている暇はない。


「わーっ!」


 お邪魔しまっす!

 調薬で鍛えた跳躍力で、華麗に植木鉢の中に着地。すかさず根を張る。


「わー……」


 危なかった。

 植木鉢の土に潜った途端、EPは徐々に回復を始める。

 しかし回復には時間が掛かりそうだ。


 空を見ると日が暮れようとしていた。

 現実の世界はすでに深夜。そろそろログアウトする時間だ。


 この世界は昼が長い。

 仕事から帰ってログインしたら真夜中で、外は暗いし店は閉まっているなんて、つまらないだろう?

 一日中昼だったり、時間の流れが異なるゲームもあるけれど、イセカイオンラインは夜の時間を短くしたみたいだ。

 深夜にゲームをする人もいるけれども、そこは健康に配慮ということで。


 ログアウトするには安全地帯や宿を使うのが常套手段だが、まだ動けそうにないな。そもそも私、宿に泊まれるのだろうか?


「わー……」


 ちらりと視線を下げる。

 人様の植木鉢を、無断で宿にするのは如何なものだろうか?

 まあいいや。マンドラゴラだし。見つかっても家主さんは気にしないだろう。

 ログアウト中に美味しく頂かれてしまう可能性は否定できないけれど。

 というわけで、今日はここでログアウト。おやすみなさい。



   ◇



 ゲーム二日目。

 ログインするとEPは回復していたけれど、HPとMPは回復していなかった。【上級MP回復薬(にんじんオリジナル)】を使って回復しておくとしよう。

 選択したら、頭上に瓶が現れて、煎じ薬が頭から降ってきた。

 水も滴るいいマンドラゴラな私。

 ……マンドラゴラは水も飲めないからな。仕方ない。


「わー……」


 気を取り直して植木鉢から出る。お世話になりました。


 まずは植木屋を探し、植木鉢と腐葉土を手に入れる。

 赤茶色のシンプルな植木鉢だ。背も低いので入りやすい。これでいつでもEPを回復できる。

 それから薬師ギルドに向かおうとしたところで、ワールドアナウンス。


≪パーティ『鬼焔』によって【東の草原】のボス【双頭狼】が初討伐されました。これにより、【サースド】の町が解放されます≫


「わー」


 へー。RPG系はあまりしないので早いのかどうかよく分からないが、初討伐ということだから、たぶん凄いのだろう。

 ぽてぽてと歩いて薬師ギルドに到着。今日も【上級MP回復薬(にんじんオリジナル)・不良】作りに励む。


 金策もあるけれど、マンドラゴラである私が人と話すためには、MPが必要だ。MP回復薬は、私がゲームを進める上で必須のアイテムなのである。

 【不良】しか作れないとはいえ、マンドラゴラが自分の体を使って上級MP回復薬を作れるのは、その辺りを見越しての配慮なのだろう。


 昨日に引き続き、鍋に入って純水を出そうとしたところで、【装備】という選択肢に気付く。


「わー?」


 【純水】を【装備】とな?

 とりあえず昨日と同じように鍋の中で純水に浸かり、ラニ草のみじん切りが終わったところで脱出。

 ぐつぐつと煮える鍋を見物しながら、純水を装備してみた。


 結論。

 たしかに装備できた。マンドラゴラの水漬けの完成である。

 (わたくし)、現在(びん)の中から中継しております。


 【上級MP回復薬(にんじんオリジナル)】が出来上がったので収納。

 続いて瓶に入ったままの状態で、自動調薬をぽちっとしてみる。

 刻まれるラニ草。

 包丁が私を襲うことはなかった。


 刻まれたラニ草が鍋にイン。それから私が入った瓶が持ち上げられ、鍋に向けて傾けられる。

 水と共に滑り落ちる私。


「わーっ!」


 怖っ!

 しかし瓶の口が狭いので、私が落ちることはなかった。

 これは確かに装備だ。包丁や茹で責めに怯えることなく、安全に調薬ができる。なんと有用な装備であろう!

 凄いぞ、【純水】!

 ただし、


≪マンドラゴラ水が足りません≫


 と、システムから苦情が来た。

 慌てて空になった瓶を装備から外し、新しい純水に装備し直す。

 装備していた【純水】は、空の瓶の状態で机の上に残っていた。それまでは空になったら消えてたのに。

 新しい【純水】にしばらく浸かった後、滑り台再び。


「わー……」


 すぽっと、片根が詰まった。

 引っこ抜いて体勢を変え、水が流れ出る道を作る。


 新しい【純水】を装備し直して、【上級MP回復薬(にんじんオリジナル)】ができるのを待つ。出来上がったようだ。

 大鍋が小鍋に戻り、机の上に小瓶が……。


「わー?」


 小瓶が出ない? 

 出来上がったはずの【上級MP回復薬(にんじんオリジナル)】はどこに行ったのだ?


 机の上を見回すと、置きっ放しにしていた瓶に、薄緑色の液体が入っていた。

 空瓶を机に出しておくと、完成した【上級MP回復薬(にんじんオリジナル)】は、小瓶ではなく空瓶に詰められるようだ。

 二リットル瓶に詰められた【上級MP回復薬(にんじんオリジナル)】。壮観である。ごついおじさんに一気飲みしてもらいたいところだ。


 莫迦なことを考えていないで、別の【純水】に装備を変更。さっきまで浸かっていて、【マンドラゴラ水・不良】に進化した純水も机に出しておく。

 一回に二本のマンドラゴラ水を使うので、これで文句は言われないはずだ。


 鍋に水が注がれ、空になったところで瓶は回収した。

 何かに使えるかもしれないし、二リットル入りのポーションってどうよ? ということで。

 綺麗なお姉さんや幼女の姿をしたプレイヤーがこれを飲むのは、絵面的に問題があろう。


 昨日と違って鍋にダイブする必要もなく、淡々と調薬が進んでいく。

 そんなこんなで出来上がった【上級MP回復薬(にんじんオリジナル)・不良】は、六十本。

 一部は売ろうかとも考えたが、金に困っているわけではない。むしろ会話するためにもMP回復薬は多めに所持しておきたい。

 全て収納ボックスにしまった。


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にんじんが行く!
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一迅社ノベルス様より、9月2日発売!

― 新着の感想 ―
[一言] あっ!? たしかに朝鮮人参は、酒漬けとかになってますね? つまり酒を入手すれば…!(これ何のゲーム?)
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