相棒を失った君へ。
小学3年の頃、母の日で赤い紙と必死にお母さんのために友人と探した四つ葉のクローバーで栞を作った、小学生の頃の私にはラミネート加工なんて考えはなくて祖父母の家で一生懸命セロハンテープで作った、A4の紙を切って“お母ちゃんいつもありがとう”と書いて母親の帰りを待った、迎えに来た母親に
「これあげる!」
そう言った私はきっと喜んでくれるだろうと思っていたのだろう、嬉しがってくれるのだと、でも違った。
「こんなゴミいらん」
そう言いゴミ箱に私が作った栞と手紙を捨てた、私の中で何かが消え去った、祖父は酷く怒り私を置いて帰ろうとした母親を追いかけ叱り、今日は泊まりなさいと私に言った、今でもその栞は祖父母の家にある、思い出したくもない記憶が蘇る
その時何かが欠けた、すごく悲しくて傷ついて泣きそうになった、それ以降母親にプレゼントをあげる考えは無くなった。
その後ハイツから一軒家に引っ越した祖父のお金で、外見はあまり綺麗とは言えないがリフォームがされていて、綺麗で、弟と一緒だったが自分の部屋もあった、もちろん犬も一緒。
小学4年生の夏の日、犬のレモンを連れて散歩に行った帰り、レモンが歩かなくなった、苦しそうに“ゼーゼー”と息をしていた母親も一緒にいたが無関心でペキニーズではあるが中型犬くらいある小さくはないレモンを小さな体で抱っこして家に帰り水を飲ませたがご飯は食べなかった、私は心配で祖父母の家に無理やり連れて行った母親をその後の結果から今でも恨んでいる「このままじゃレモン死んじゃう」その言葉を聞いてくれなかった母親を…。
祖父母の家で母親と弟、私でお風呂に入り、家に帰ると玄関で冷たくなったレモンがいた、涙がとまらなかったそして母親を恨んだ、病院に連れて行かなかた母親を。
母親は焦って祖父に電話していたが私は相棒を失った悲しみと“死んでしまう“と言ったのに聞いてくれなかった母親を恨んだ。
すぐにお葬式の段取りが決まり、私はずっと泣いていた、火葬が終わるまでもずっと泣いていて、葬式の担当者のおばさんにお骨を少し入れてペンダントやストラップとして身につけられると聞いて買ってもらった、火葬が終わり遺骨を骨壷に移していたが何せ大きかったため骨壷に収まり切らず担当者のおばさんが箱を用意してくれて全てのお骨を収めた、担当のおばさんは私にこんな話をしてきた。
「みおちゃん虹の橋って知ってる?」
「知らない」
「虹の橋っていうのは天国に行ったわんちゃんたちが飼い主を待つところなの、だからみおちゃんの大切なわんちゃんもきっとみおちゃんを待ってるよ」
その後私は相棒を失ったことによってさらに扱いがひどいと感じた。母親は母子家庭なので仕事をしてから帰ってきてたが、小学5年の頃に夜中に家からいなくなることが多くなって帰ってこなくなった、弟は一緒に連れて行くか、家にいるときはご飯を作ってもらえていたが私にはご飯がなかった、いつからだろう世間で言われるお袋の味がわからなくなったのは、母の味が私にはわからない、過ごす場所も祖父母の家だった。
でも祖父母も変わっているとは思っていた、祖母は看護師でありながら家庭では変わっていた、人格がコロコロ変わるというか情緒不安定?だった、機嫌が悪いときはとことん冷たく接してきた、機嫌がいいときは優しいが基本は怖い人だった、祖父は怒るのが苦手で初代のiPhoneの検索履歴には離婚弁護士のタブがあったし変わっているのは事実、そして祖父は間違いなく祖母に離婚を考えたことがあったのだろう。
そんなある日休日に母親に連れられて劣悪なペットショップに連れて行かされた、そこで見たのは大型犬、小型犬関係なく簡易のケージに詰め込まれた犬たちそこで私は高校まで過ごす相棒に出会った、可愛い可愛いペキニーズの赤ちゃん、私の腕をぺろぺろと舐めた可愛いペキニーズ、名前は元気に生きてほしいからと“元気”あだ名は元ちゃん、親がいなくて怖くて怖くて仕方なかった雷も元ちゃんと一緒に過ごしていた元ちゃんも雷が怖かったからよく隠れていた、レモンよりひと回り小さい第二の相棒。
そんな相棒ができても私にはご飯が用意されてなくてなんとなく気づいている祖母はいつも祖父母だけの分とは思えないご飯を作っていた、そして私に問うてきた。
「もうちょっとしたら晩御飯やから帰り」
「お母ちゃんいつも作ってくれへんからご飯ない」
「弟のは」
「弟のはあるけどうちのはない」
いつも家に帰るのは21時頃で、お風呂は祖父と入っていた、家に帰ると自分の部屋で寝ていた、弟は母親と過ごす時間があったのかもしれないが私にあったのかと言われたらなかったと思う、覚えていないということはそういうことだろう。
母親が家に帰ってこないことは続いていて小学5年生の頃から私は寝れなくなった、寝るのが怖くなった悪夢を見て泣いて起きても母親に怒鳴られると思って、母親なんて帰ってこないのに、帰ってきてもずっと電話している、その声でまたさらに寝られなくなった。