表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

私が自由でいられた場所-①

朝8時に冬華視点を投稿しています

苦しい。気持ちが悪い。吐き気がする。意識がまとまらない。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい。……気分がいい。



***



私、清水瑠奈(清水瑠奈)は、平凡とは程遠い家庭に生まれた。お父さんはとある会社の社長で……つまるところ私は、いわゆる社長令嬢ってやつだった。


でも、私自身に特に才能はなかったんだよね。色々な習い事をしたけど、何をやってもダメダメで。殆ど途中で投げ出してしまった。

まぁ物覚えだけは比較的いい方だったけど、そこまで頭の回転も早くない。なにより、どうしても束縛されているようで落ち着かなかった。


人付き合いにしてもてんでダメで、引っ込み思案で人見知り、目立つのが嫌いな少女だったと思う。でも、唯一水泳だけは無理矢理続けさせられた。


理由はわかってるから今なら仕方ないと思うし、結果的に感謝してるけど、受ける度に泣きじゃくる私を無理矢理泳がせるとか何さ。1歩間違えば水がトラウマになってたよ……。




私が水泳を習わされた理由。それは、お母さんが水の事故で亡くなったから。

と言ってもお母さんも泳ぐのが苦手な訳じゃなくて、お父さんと一緒にダイビングに行くくらい水が、海が好きだった。ただ、そのダイビング中の事故によって母は亡くなったらしい。


お父さんはそれでも、ダイビングを辞めることは無かった。

むしろ現実逃避気味に、よりダイビングにのめり込んだんじゃないかな。

なにせ、小学生になる頃には水に慣れていた私を、10歳という体験ダイビング可能な最年少で海にぶっ込んだくらいたからね。


でも正直、これに関しては感謝してる。このタイミングでダイビングに出逢えたからこそ、その後の私があると言っても過言ではないから。





私は、お父さんの思惑以上にダイビングにハマった。当時の私は色々と足りないところも多くて、でもだからこそ潜る度により自由にこの美しい世界を泳ぎ回れることに、とてつもない開放感と幸せを感じていたから。


私は貪欲にスキルを吸収し、ジュニアが外れアマチュアとしては成人と同じ扱いをされる15歳になるまでに、ジュニアで取れるコースは全て取った。


と言ってもそこまで数は多くないし、潜っていたのも基本的にはお父さんの地元の沖縄のみ。

特別スキルが高いという訳では無いけどね。


でも、ダイビングを通してたくさんの大人と話しているうちに、まぁ自分で言うのもあれだけど、明るく快活な性格になって行った。

おかげで友達も少しずつ増えていったんだよね。





そうして高校に入学した私は、ダイビングの勉強を重ねつつ、ダイビングショップを作るという夢を持ち始めた。


小さい頃はダイビングショップを作るという発想がなかったけれど、高校生活のある日、起業という考えが身近にあることに気がついたんだ。

まぁ、ぶっちゃけお父さんだね。もちろんお父さんも、かなりの努力をして起業し今の地位に登り詰めたわけだけど、確かな成功例がすぐ側にある以上、不可能ではないんじゃないかなって具合に。


こうして私は、ダイバーとしての実力や知識を磨きつつ、ダイビングショップを開くために何が必要かを少しずつ調べ、学んで行った。

お父さんも最初は反対していたけど、最終的にその時は協力するって言ってくれたしね。



そんな高校生活のラスト、3年の夏のこと。

少し仲の良かった水泳部の男子を応援するために、水泳大会に行った。いつもなら父の実家に泊まって夏中ダイビングをしているところだけど、流石に受験を控えたこの夏はそうする訳にも行かない。

かと言ってずっと勉強というのも息が詰まるため、息抜きも兼ねて行くことにしたのだ。


そうして観戦していた中で、女子の部で1人特別目を引く女性がいた。女子50メートルバタフライの部で1着だった彼女は、頭一つ抜きでた速さで、何よりのびのびと自由に泳いでいた。

この子とダイブしてみたい、と初めて思った人だった。


これが、私が水無冬華(みずなしとうか)と出会った運命の日だった。


まぁ彼女はその時は私に気づいていなかっただろうし、彼女のことは、名前と顔は覚えていたもののもう一度会えるはずもないと諦めていたけど。



そうして何とか受験では第1志望の大学に入ることができ、いざ講義だ、というところで、私は彼女に再会した。思わず声をかけてしまった私に最初は戸惑っていた冬華ちゃんだったけど、私が大会で彼女を見かけたと話すと納得してくれた。


物静かで凪いだ水面のような女性で、一見感情のなさそうに見える彼女だったけれど、石を投じれば波紋となって帰ってくる。話していてとても楽しかった。

予想外なほど早く仲良くなった私達に、多分私が1番驚いていたと思う。なにせ今はコミュ力も高くなってきたけど、昔はコミュ力弱者だったから。


そうして仲良くなった冬華ちゃんを、私はダイビングに誘った。まぁ最初はシュノーケルにしておこうかなと思ったんだけど、それまで熱心に布教していたからかダイビングすることになったんだ。


冬華ちゃんはかなり楽しんでくれて、そのダイビングは大成功と言っても良かったんじゃないかな。なにせ、普段はあんまり笑わない彼女が、楽しそうに笑っていたから相当だと思う。私と彼女は、それからよくダイビングに行くようになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ