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私が愛した場所-1

短編で投稿していましたが、改めて見返すと読みづらいなと思い連載形式にしました。

音も空気もない、光さえも遠い場所。私一人しかいない、私だけの世界。自分という存在が溶けていくような感覚を味わいながら。今日私は、この青い世界に飲み込まれる。



***



私の人生は、恵まれた不幸とでも言うべきものだと思っている。親は実業家で資産家。家は広くお小遣いも多い。

幼い頃に英才教育を受けたおかげで、学力もトップクラスとまでは行かないけれど平均は大きく上回り、スポーツも万能。

楽器はピアノやヴァイオリン、ギターにドラムと、幅広くそれなりに習得したし、バレエも習った。

自分で言うのもあれだけど、ハイスペック万能少女の出来上がりだ。


でも、当然これだけ詰め込めば友達なんてできるはずもない。学校生活では浮いていたし、なんならいじめとも言えない嫌がらせもあった。

別にそれでも両親からは愛情を注がれていたし、元々感情が希薄だったから歯牙にもかけなかった。ただ、友達ができなかったことと感情が希薄だったことが重なって、私はあまり心が動かない人間に育った。





それは英才教育が一段落し両親の教育方針が放任に変わった中学生以降も、あまり友達ができないことの充分な理由だった。


それに、私自身が新しいことを知ることや、新しく何かができるようになることの楽しさを覚えてしまった結果、あまり遊ばない子供となってしまったのも問題だったかもしれない。

なにせ中学生にもかかわらず親からのお小遣いを資格習得のための教材費に当てるくらいだ。今になって思うと、同世代から見たら相当不気味な少女だったに違いない。


因みに、私が習い続けたことは意外なことに多くない。

新しい知識や技術というものは、最初のうちは新鮮で驚きに満ち溢れている。しかし、一定以上の知識量や技術レベルに到達すると、途端にその新鮮さは薄れてしまうものだ。


その中で元々新しいことが少ない水泳が長く続いたのは、今にして思えば私自身が水の中にいることが好きだったからなのだろう。そう考えると、私がそれに出会ったのも必然と言えるのかもしれない。





高校まで水泳部を続けていた私だったけれど、大学入学を機に本格的な水泳は辞めることにした。

泳ぐことに飽きたわけではなかったけれど、本格的に続けることの意味を見失っていたし、趣味レベルまで落としていいかなと思ったのが理由だ。


そんな大学1年生。

一人暮らしも始め、ようやく新しい生活スタイルにも慣れてきた頃に、偶然同じ講義が多かった清水瑠奈(きよみず るな)という女性に声をかけられた。

初めは戸惑ったけど、どうやら高校時代に参加した大会で私のことをみかけたのを思い出し、声をかけてくれたらしい。

明るく活発な彼女は私とは正反対の性格だったが、それが上手く噛み合ったのか私たちは信じられないほどのスピードで仲良くなった。




そしてその年の夏休み、私は彼女に誘われて初めてのダイビングに挑戦した。


実の所、私は海に泳ぎに行くのでさえそれが初めてだった。もちろん私は事前に情報を収集して、最低限の知識やマナーを身につけてはいた。

それでも慣れない日差しや空気に面食らっていた私をエスコートしてくれたのは、他ならぬ瑠奈自身だった。


彼女はダイビングのライセンスの中でも、プロの入口と呼ばれるダイブマスターを持っていた。

彼女にサポートしてもらいながら初めてのダイビング。体験コースと呼ばれるレジャーとしての側面が強いものだった上彼女の助けもあり、私は初のダイビングを満喫した。



正直に言って、最高だった。水の中を泳ぐ魚や、色とりどりの珊瑚などの生き物たちは、私にとっては久々の未知だったのだ。


当然知識として知ってはいた。生物分類技能検定で3級を取っていたし、事前にその地域の生物については詳しく調べていたから。それでも、リアルで感じる海、生命、自然…様々なものの美しさは、私の停滞気味だった人生を一転させるのに充分足るものだった。


そうして私は、瑠奈と一緒にダイビングにのめり込んだ。

夜8時に瑠奈視点を投稿します

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