表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/155

第93話 カイトの王都滞在編〜ゴーレム討伐!?

「急に呼び出して済まなかったな」

「いえ別に構わないですが……」


 翌朝、日課の訓練中にビショップが俺を呼びに来た。

 なんでも、ビショップ達の屋敷に冒険者ギルドの職員が訪ねてきて、なるべく早く俺にギルドに来て欲しいと、詳しい事も言わずに立ち去ったとの事だ。

 俺が新月の館に居たから連絡が取れなくて、仕方なくビショップを頼ったみたいだ。


 そして現在、俺はビショップを伴って冒険者ギルドのギルド長室に来ている。


「カイト、お前にはラベル峡谷に行ってもらいたい」

「ラベル……峡谷?」

「カイト、ルクレールから王都に来る途中に通ったのがラベル峡谷だ」


 そう言えば此処に来る途中に、狭い谷間を通ったな。


「馬車の護衛で通り掛かった冒険者パーティーの報告によると、その峡谷の崖が崩れて、その中からゴーレムが現れたそうだ」

「俺にそのゴーレムを退治してくれと?ゴーレムくらいならその冒険者パーティーで倒せるんじゃないですか?」

「普通ならばそうなんだが、幾ら攻撃してもダメージを与えられないらしい。しかも、そのゴーレムは暴れる事も反撃する事もせずに、ただ街道を塞ぐ形で座り込んで、一歩も動かないそうだ」

「生きているのですか?そのゴーレムは」

「私も報告に来た冒険者に、それを聞いてみたが、間違いなく生きているそうだ。だから、その冒険者パーティーのリーダーが、何もしないで座っているだけのゴーレムに違和感を感じ、何か意味があるのではないかと思い、メンバーの一人を報告に寄越したという事らしい。それで私はお前を呼んだという訳だ。ゴーレムは謂わば土人形、そしてカイト、お前はドールマスターだからな」


 何だよ、そのこじつけで俺は朝早くから呼ばれたのか……?


「なるほど……その冒険者パーティーは、まだそこに居るのですね」

「ああ、今は大人しく座っているだけだが、そこには通る事が出来ずにいる商人の馬車や、ルクレールから来た貴族の馬車が足止めを余儀なくされているし、ゴーレムが何時暴れだすかわからないからと、報告に来た冒険者も戻って行ったぞ」





 今俺は、ゴーレムが現れたというラベル峡谷に来ている。

 面白そうだからと、ビショップも付いて来た。


「おっ!あれだなカイト。本当に街道を塞いでいるな」


 見ると、巨大なゴーレムが街道の真ん中に座り込んでいる。

 周りは崩れた崖の土があり、これも街道を塞ぐ要因にもなっている。

 そして、ゴーレムの前には何故かゴブリンの死体が散乱していた。


「なあビショップ、お前はゴーレムを見た事があるか?」

「ああ、何度か見たし討伐もしたぞ」

「それなら聞くが、ゴーレムってあんなだったか?」


 街道を塞いでいるゴーレムは、まるで土で作った達磨のように丸っこい形をしていて、頭のてっぺんには角のような物もある。


 何ともバランスが悪く不格好だ。


「ゴーレムにも色々と種類があるんじゃないのか?」

「そうかもしれないな……」


 ビショップの言う事に、あり得るかもしれないと思いゴーレムを見ていると……


「カイト……?カイトじゃないか!」

「えっ!?バランさん?」


 以前ルトベルクに行く馬車の護衛を一緒にした、冒険者パーティー“竜の咆哮”のバランさん、ホイルさん、ピックさんが、此方に駆け寄って来た。


「お久しぶりです。バランさん、ホイルさん、ピックさん」

「カイト君も元気そうで何よりです」

「カイト君、そちらの魔族の方は?」


 三人とも、全く変わらず元気そうだ。


「俺の古くからの友人ですよ。ビショップ、竜の咆哮のバランさんとホイルさん、そしてピックさんだ」

「ビショップだ。宜しく頼む」

「ああ、此方こそ宜しくな。ところでカイト、お前がギルドから送られて来たのか?」

「そうですよ、ゴーレムは土人形だからと、ドールマスターの俺がギルマスに呼ばれたんです」

「何?その、酷いこじつけ」

「でも、そのお陰でカイト君と会えた訳だし、カイト君なら何とかしてくれると思うよ」

「そうだな、ホイル。カイト、ビショップ、取り敢えず俺達が護衛している馬車まで行こう」


 バランさんを先頭に、俺達はゴーレムの横を通って、足止めされている馬車まで歩いて行った。

 ゴーレムは俺達が横を通っても動かずに座ったままだ。


「ローランドさん!?」

「おや?これはこれは、カイト君ではないですか!こんな所で再会出来るとは思ってもみませんでしたよ」


 ローランドさんも変わらず元気そうだ。


「俺もですよ。しかし、ローランドさんは良く色々と巻き込まれますね」

「あはははは、確かに……全く嬉しくは無いですがね」


 ローランドさんは商人で、俺がこの世界に来て初めて知り合った人だ。

 今、俺が着ている新月のコートは、ローランドさんの店に陳列されていて、オークから助けたお礼にと頂いた物だ。


「おいっ!お前達、王都のギルドから来たのなら、さっさとそのゴーレムを何とかしないかっ!!」


 豪華な馬車から降りて来た貴族らしいちょび髭の男が、再開を喜ぶ俺達に怒鳴り付けて来た。

 俺は、ちょび髭の物言いにカチンと来たが、まあそれも尤もかと思い、座り込んでいるゴーレムに向き直った。


「カイト、ゴーレムは動かないし、のんびりやろうぜ」

「そうだなビショップ」


 ビショップもカチンと来たのだろう、俺に小声で言ってきた。


 先ずは聞き取り調査だ。


「バランさんが来た時にはこの状態だったのですか?」

「ああそうだ。俺達が来た時には既に崖が崩れていて、ゴーレムが座っていたぞ」

「そうですか……では、ゴーレムの前のゴブリンもですか?」

「それは昨夜、動かないゴーレムに、何を思ったのかゴブリンがちょっかいを出してな……後は見ての通りだ」

「おかしくないですか?バランさん達が攻撃しても、反撃はされなかったのですよね?」

「ああ、俺達もたまげたよ。だから俺達はそれ以降ゴーレムから一定の距離を保ち、指一本触れていないぞ」


 本当にゴーレムなのか?いや……バランさんがゴーレムと言い切っているんだから、ゴーレムなんだろうな……


 俺は、ゴーレムを中心に円を描くように移動しながら、ゴーレムの全体を観察していた。

 すると、微かにだがキーンという音が聞こえて来る。

 その音が聞こえて来るのは俺の背後からで、そこには崩れた崖があった。

 俺がゴーレムを遠巻きに回り込みながら崖に近づいたから聞こえて来たのだろう。


「ビショップ、来てくれ」

「どうしたんだカイト?」


 俺はビショップを連れて、崩れた崖のすぐ前まで来た。

 余程意識していないと聞き取る事が難しかったキーンという音は、崖に近づくと少し聞き取りやすくなった。


「この音が聞こえるかビショップ?」

「音?いや、何も聞こえないぞ」

「キーンという音なんだが、聞こえないか?」


 ビショップは目を閉じて意識を集中し、耳をすませている。


「やっぱり俺には何も聞こえないぞ……その音がカイトにだけ聞こえるという事は……」

「そうか!もしかしたら……コンセ、崖の中に何かある筈だが確認できるか?」


(はいマスター、マップを展開します)


 展開したマップの崖の部分にバツ印が付いている。

 奥の方だと面倒だと思ったが、意外と近い場所に埋まっているようだ。


「カイト、これを使え」


 俺が手で土を掘っていると、ビショップが具現化したスコップを出して手渡してくれた。

 そして、ビショップと二人がかりで、マップのバツ印の所まで堀り進める。


 果たして、土の中から出てきたのは、銀色の複雑な紋様のような飾り彫りと、金色の縁取りがされた鈍色の腕輪だった。


「新月の腕輪なの!!!」

「うわっ!!吃驚した……レクス……いきなり出てきて大きな声を出すのは止めてくれ……」


 突然、ポンッ!と俺の顔の前に現れて叫ぶものだから、寿命が10年くらい縮まったのではないかというくらい驚いた。

 俺の後ろに居たビショップは、腹と口を押さえて笑いを堪えようとしているが、堪えきれていない。

 全く……いいさ、笑いたければ笑うが良い。


「だって、エルちゃんが面白いからって言ってたの!!」

「エルが?そうか、後でお仕置きだな。ところで、これもやっぱり新月シリーズだったんだな」

「そうなの!この新月の腕輪は特別製で、創造神に贈るために沢山の神々の魔力を集めて、長い年月を掛けて作ったプレゼント用のアイテムなの!!だけどプレゼントを贈る前に、バカの創造神が世界をほったらかしていなくなったから、転生者用に作り直したの!!」

「ふ〜ん、それでこの腕輪は外のゴーレムと関係があるのか?」

「新月の腕輪なのっ!!この新月の腕輪は、使用者の想像力と魔力と器用さで、土や岩や水などの無生物を使ってゴーレムを創れるの!!外のゴーレムは不格好だから、恐らくだけど王都に行く途中のカイトくんの魔力に、新月の腕輪が反応してゴーレムを作り出したのだと思うの!!」


 また凄くチートっぽいアイテムが出てきたな。


 それにしても、いったい幾つあるんだ?新月シリーズ……



読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ