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第89話 カイトの王都滞在編〜ランクアップ試験!?③

「なあビショップ、ヨシュアは誰のテイムモンスターなんだ?」

「一応、俺のテイムモンスターってことになっているからな。今から俺と一緒にSランクと戦う。なあヨシュア?」

「ウガー♪♪」



 ビショップとヨシュアの相手はSランク冒険者の熊男だ。

 傭兵時代は飛び抜けた体術の才能を持ち、更に毎日が修行だったヨシュアと、爆破のエキスパートだったビショップの本気の戦いは、果たしてSランク冒険者に通用するのか。


「シェリーの相手は虎獣人だが、確か近接戦闘も出来なくはないけど苦手分野だったよな?」

「そうね、以前よりは出来るようにはなったけど、近接タイプの虎獣人に試してみようなんて思わないわ。私の武器は弓だもの、離れて戦うわ」


 スナイパーだったシェリーは弓の腕前も一級品だ。


「そろそろ時間だ、行くぞシェリー、ヨシュア」

「ウゴッ」

「オーケー、ビショップ。じゃあカイト、また後でね」

「ああビショップ、シェリー、ヨシュア、頑張れよ」



 Sランクの熊男と虎獣人は、お互い顔見知りなのだろう、此処までは聞こえないが、何やら笑いながら喋っている様子が覗える。

 前の試合の疲れは取れているようだ。もしかしたら最初から疲れなど無かったのかもしれない。




 まだまだ日が高い闘技場の観戦席で、俺達はララさんお手製の焼き菓子と冷たい果実水を手に、これから始まる試合の予想や雑談をしていた。


 そして休憩時間も終わり、ビショップ達のランクアップ試験が始まる。



「クッ……コイツ本当にオーガなのか!?」

「ウガー♪」


 試合開始と同時に、流星のガントレットを装備したヨシュアの攻撃がヒットする。

 一瞬で熊男の前に現れたヨシュアは、掌底を胸に叩き込んだ。


「ヨシュアの奴、転移したな」

「持てる力を全てって事だから悪く無いと思うよ、カイト君」

「それはそうだがなキョウヤ、俺は少しは自重すると思っていたんだがな」

「カイトがそれを言うのかな?かな?」

「サトミ?なんで……?」


 ヨシュアの実力を見た熊男は、バトルアックスを構え、ヨシュアとの距離を一瞬で詰めた。

 だが、ヨシュアはしっかりと見えていたようで、振り下ろされたバトルアックスを、身体を回転させて躱しながら、裏拳で熊男の頭を攻撃する。

 熊男はヨシュアの動きを察知したのだろう、僅かに屈んで裏拳を躱した後、バトルアックスをヨシュアに向って斜めに振り上げた。

 目前に迫ったバトルアックスを、放った裏拳とは逆の手で掴み取ったヨシュアはとても良い笑顔になっている。


「ウガー♪ウガー♪ウガガ♪♪」

「こんなに強いオーガは見た事が無いぞ。俺と互角に、いや……俺の方が押されている?」

「ウガガ〜♪」

「おい5番、いったいどんな鍛え方をしたんだ?」

「俺は何もしていないぞ。ただ、ヨシュアは三度の飯より修行が好きだからな……」

「信じられんが、それより5番、お前は何をしている?何だ、その奇妙な物は?」


 流星のグローブを装備したビショップの周りには、黒くて棘だらけの“ウニ”が浮かんでいる。

 おそらく、ビショップは機雷をイメージしたのだろう。


「これが俺の武器だ。ヨシュア、もう良いぞ」


 ヨシュアがビショップの後ろに転移したと同時に、熊男の周りを機雷ウニが取り囲んだ。



「ねえカイト、美味しそうだね……」

「ああ、もしかしたら漁村で捕れるかもしれないから、今度村長に聞いてみよう」

「えっ!?カイトさん、あの黒いトゲトゲが食べられるのですか?」


 俺とサトミの話を聞いていたアマンダさんが食いついてきた。


「あの黒い殻の中には濃厚で芳醇な身が詰まっているんだ」

「カイト……思い出したら食べたくなってきたよ」

「私も食べてみたいです!」

「え〜、アマンダさん気持ち悪くない?」

「ミウラちゃん、見た目が気持ち悪い物って案外美味なのよ」



 熊男の周りには数十個の機雷ウニが漂っていて、自由に動かせるのは足だけになった。

 ヨシュアが戦っている間に、ビショップは大量の機雷ウニを具現化したのだろう。


「何だこれは……」

「おっと!!動かない方が良いぞ」


 バトルアックスで機雷ウニを払おうとした熊男だが、ビショップの言葉でピタリと動きを止めた。


 ビショップは、機雷ウニを一つ具現化して離れた場所に放ち、具現化したナイフを投げた。


 ――――――ドカァァァァァァン!!


 ソフトボールくらいの大きさの機雷ウニにナイフが刺さり、大爆発を起こす。


「その棘に少しでも触れたら、爆発するぞ。一つでも爆発すると、どうなるかわかるよな」


 熊男は漂う機雷ウニを見て、ビショップを見る。


「降参だ……お前、本当にBランクなのか?」

「ああ、間違いなくBランクだ。もう良いぞ、消えろ」


 ポンッ、ポン、ポン、ポン――――――


 ビショップの“消えろ”の言葉で機雷ウニは薄い煙だけを残し、次々と消えていった。


「――――フゥ……まったく、冷や汗をかいたぜ」


 ビショップの試合は、Sランク熊男が降参して終わった。


 多分だが、熊男は機雷ウニを何とかしようと思えば何とかなったのだろうが、この試合はビショップのAランク昇格試験だ。

 Aランク昇格には十分だと判断して無理をせずに降参したのだろう。





 そしてシェリーの相手は虎獣人だ。


「何だか、やっと普通の表情の人が来たわ」

「そう言えばそうだったわね。フフフ、よろしく頼むわ」

「ええ、何時でも良いわよ」

「そう?それなら挨拶代わりに……」

 

 そう言ってシェリーはアイテムボックスから流星の弓を取り出して、5本の炎の矢を連続で虎獣人に放った。

 虎獣人はSランクだ。簡単にはヒットしない。

 地を駆けて5本の炎の矢を全て躱した。


「凄いマジックアイテムだわ。あなたは弓師なのね」

「ええ、だからあなたは私に近づく事なく、この試合は終わるのよ」

「私もそう願っているわ」


 シェリーは流星の弓を構えて、氷の矢を同時に3本放った。

 氷の矢は虎獣人を目掛けて飛んで行くが、その3本の氷の矢をあっさりと躱した虎獣人は、シェリーの目の前まで一瞬で詰め寄っていた。

 それでもシェリーは動かずに余裕の表情をしている。


 虎獣人はシェリーの表情を見て、次にもふもふの耳がピクリと動くと、直ぐにシェリーの前から離れた。

 そして、虎獣人を追い掛けるように、3本の氷の矢がシェリーの前を横切って行った。


 シェリーは虎獣人の進行方向に、追加で5本の氷の矢を放ち、アイテムボックスから紅茶を出して飲み始めた。


「あの矢はまるでホーミングミサイルのようだな」

「カイト、ホーミングミサイルって何?」

「簡単に言うと、何処までも追いかけて行くミサイルだな」

「それなら映画やアニメとかで見た事があるよ」

「そう、それの事だサトミ。どうやっているのかわからないが、多分だが電波や信号の代わりに魔力を用いているんだろう」

「ビショップさんみたいに、シェリーさん自信が誘導しているのかもしれないね。カイト君」

「そうだな、キョウヤ。それが一番可能性があるかもしれない。もし、矢が静止する事があったら間違いなく誘導だな」

「カイトさん達の会話が全くわかりません」


 アマンダさんがわからないのは尤もだが、説明が面倒なのでスルーする。



 虎獣人は、氷の矢を躱しながら走っていたが、切がないと悟ったのだろう、今度は氷の矢を待ち受けて1本ずつ手甲の爪で砕いていった。


「まったく……私が走り回っている間、あなたは紅茶を飲んでいたのね……呆れるわ」

「紅茶は私のモチベーションを高めるの」

「その、もちべーしょんが何かはわからないけれど、今度は此方から行くわよ。攻撃された時の対処を見せてちょうだい」


 虎獣人は、手甲の爪を鋭く振り抜き、斬撃を飛ばした。

 その斬撃を、シェリーは流星の弓で軽く弾いて見せる。


 それを見た虎獣人は、今度は両手を使い、連続で斬撃を飛ばして来たが、その全てをシェリーは危なげなく流星の弓で弾く。


「丈夫な弓だわね」

「これは、そう簡単には壊れないの」

「あなたの目と動きも大したものだわ。次行くわよ!」


 虎獣人は、言葉が終わると同時に、超高速でシェリーの前に移動して、軽く拳を握った。

 そして、シェリーの鳩尾に虎獣人の拳が突き刺さる瞬間――――――


「消えた!?」


 虎獣人の拳が空振りし、直後に上空から100本以上の雷の矢が降り注ぐ。

 そして、その矢は虎獣人を避けて周りを埋め尽くすように地面に突き刺さり、パチパチと紫電を迸らせている。


「あ、あんな所に……どうやって?」


 上空を見上げた虎獣人の目には、落下中のシェリーが映っていた。

 そして、また消えたと思えば、今度は雷の矢の向こう側に立っている。


「アハ、アハハハハハ、あなた出鱈目過ぎるわ。おしまい、おしまい、もう十分だわ」

「あら?まだ全てを出していないわよ」

「この矢は私に当たらないように射ったのでしょう?そうでなければ私は此処で死んでいたわ。それだけで十分過ぎるわよ」



 シェリーが流星の弓をアイテムボックスに入れると、紫電を迸らせていた100本以上の矢も消えた。


 シェリーの試験も終わったようだ。

 





読んで頂きありがとうございます。

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