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第88話 カイトの王都滞在編〜ランクアップ試験!?②

「それでは試験を開始します。受験者の方のタイミングで試合を開始して下さい」


 熊男の相手は、1番のやる気に満ちた熱血男性だ。

 手にはロングソードを持っていて、切っ先を未だバトルアックスを肩に担いでいる熊男に向けて構えている。


「何時でも良いぞ」

「ああ、いくぞ!!俺は行くぞ!ガンガン行くぞぉぉぉぉ!!」


 ロングソードが炎に包まれると同時に、熱血1番は素早い動きで熊男に斬り掛かる。

 当たったと思った瞬間、バトルアックスを担いだままの熊男の姿が消えて、体勢を崩した熱血1番の背後に現れて、バトルアックスでの一撃を寸止めした。


「あのロングソードはマジックアイテムのようだな」

「ああ、Bランクともなればマジックアイテムの一つや二つは持っているもんさ。それにしても、あの熊男は体格の割に素早いな」

「ビショップにも見えたか?」

「ああ、ただ早く走っているだけだが、すきがない動きだ。それにバトルアックスを寸止め出来るパワーもあるぞ」


 その後何度か炎を纏ったロングソードで切り掛かる熱血1番だが、躱されて、寸止めされてと、同じ事を繰り返す。


「うおぉぉぉし!やっと身体が暖まってきたぜ!全然当たんねぇから時間が掛かっちまったぜ!!」

「ほう、まだ何かあるのか?」

「打ち合っていればもっと早く出来たんだがな。見てろ!!」


 熱血1番が持つロングソードの炎が大きくなり、驚いた事に熱血1番を包み込んだ。


「行くぞ!行くぞ!行くぞぉぉぉ!!」


 紅蓮の炎に包まれた熱血1番は、叫び声と共に一瞬の内に熊男に斬りかかる。

 熊男は避ける事が出来ずに、バトルアックスでガードをした。


「ビショップ、1番の奴、燃えているぞ……熱く無いのか?」

「彼奴も熱い男だから大丈夫なんだろう」


 ビショップの言う事も尤もだが、やはりマジックアイテムのロングソードの効果なのだろう。

 炎に包まれてから、スピードが上がり、パワーも上がったようだ。

 ガードをした熊男が少し押されていた。


 数回打ち合う毎に、熱血1番を包み込む炎が大きくなり、それに従いスピードとパワーも増しているようだ。


「あっつ!!熱くてもう近づけないな。それなら……」


 熱血1番以外は熱いらしい。

 それならばと、熊男はバトルアックスを軽く振り下ろして風の刃を飛ばした。


「わっはっはっはっは、そんなもんは効かぁぁぁん!行くぞ、行くぞ、行くぞぉぉぉ!!俺は行くぞぉぉぉ!!」


 熊男の風の刃は炎であっさりかき消され、熱血1番はダッシュで熊男に迫っていく。

 しかし、熊男は熱血1番を上回るスピードで回避した。




「くそっ、時間切れだぁぁぁ!」


 このまま、鬼ごっこが続くかと思ったが、意外と早く決着がついた。


 熱血1番を包み込む炎は急速に衰えて、やがて炎が消えた熱血1番の足がふらつき始めた。

 


 最後には熊男のデコピンで地に倒れ、熱血1番は力尽きたようだ。

 ロングソードの炎も燻っている。


「俺は燃え尽きたぜ……」





 一方、虎獣人の相手は2番の無表情だった女性だ。

 試験が始まる前も無表情で相手を観察している。


「観察は終わったかしら?」

「はい、準備は万端です。では、此方からいきます」


 無表情2番の指には青、黄、白の宝石が嵌った指輪、首には金の首飾りを付けている。


 無表情なままで人差し指を虎獣人に向けてすぐに、稲妻が虎獣人に放たれた。


 流石の虎獣人もこれには驚いたのだろう、目を見開いていたが、消えるようなスピードで稲妻を躱し、額の汗を拭うふりをして見せた。


「驚いたわ、無詠唱なのね」

「流石に当たりませんね。余裕で躱されましたか。では、次にいきます」


 次に、無表情2番は手のひらを下に向けて突き出した。

 すると、一瞬で地面が凍りつき、スケートリンクのようになった。

 更に今度は手のひらを上に向けるとブリザードのように横殴りの雪が、虎獣人を襲った。

 虎獣人は足が滑って、上手く走れないようだ。


 そして無表情2番は稲妻を放つ。


「あの2番はなかなかやるわね。無表情なのが恐ろしいわ」

「ああ、だが虎獣人の方はまだまだ余裕だぞ」

「全力の全ての技を出させなくてはいけないんだ。計り知れない強さがあるから演技だって出来る。これくらいの攻撃では傷一つ付けられないぞ」



「そろそろ寒くなって来たから私も行くわよ」


 手甲の爪で稲妻を弾いていた虎獣人は、姿勢を低くしたかと思ったら、一瞬で無表情2番の前に詰め寄った。

 見ると、ブーツから爪が伸びている。

 この爪で氷の上を走ったのだろう。


 そして、手甲の爪を引っ込めて、拳で無表情2番の鳩尾を殴ったが、無表情2番の首から掛かっている首飾りが金色に光り、盾となって虎獣人の拳を止めた。


「ふーん、多彩だわね。もう一度行くわよ」


 虎獣人の拳は金色の盾を砕き無表情2番の鳩尾に突き刺さった。

 鳩尾に当たる瞬間に拳の力を抜いたのが俺たちにはわかったが、それでも痛いものは痛い。


 無表情2番は無表情で鳩尾を押さえて、転がり回っている。

 白い宝石の指輪から光りが出ているのはヒールなのだろう、じきに光りが収まり無表情2番は立ち上がって礼をした。


「参りました。ありがとうございました」

「良かったわよ、あなた。無表情だけど、少し楽しめたわ」


 熱血1番と、無表情2番の試験が終わり、10分間の休憩の後に3番と4番の試験が始まる。




「あの1番の人が燃えたのは吃驚したけど、燃費が悪かったわね」

「まあ相手はSランクだ。力量差は天と地程もあるからな、ああなっても仕方が無いと思うぞ」

「でも2番の人は頑張ったよね、カイト」

「そうだな、無表情の無詠唱は思ったよりも厄介だと思うぞ。彼女はまだまだ強くなりそうだ」


 休憩も終わり3番と4番が闘技場に入ってきた。


 熊男の相手は控室で自信が無さそうにしていた3番の気弱な男性冒険者だ。

 気弱3番は軽く礼をすると、持っていた槍を構える。


「ほう、すきの無い良い構えだ」

「い、い、行きます……い、良いですよね?」

「ああ、思いっきり来ると良い」


 気弱3番は槍を突き出すが、熊男はそれを難なく避ける。

 すると気弱3番は身体を回転させて横薙に槍を振るった。


 熊男は避けた方向から槍が迫って来たので、肩に担いでいたバトルアックスで槍を弾いた。

 その後は縦横無尽に繰り出される目にも止まらない槍の連続突きで、熊男はバトルアックスを肩に担ぐ事が出来ず、柄や斧の腹で連続突きを弾いていた。


「凄い連続突きですわ」

「ああ、それでもSランクには通用しないんだな」


 一旦離れた気弱3番は魔力を槍に流し始めた。

 槍の穂先に紫電がほとばしる。


「おいおい、マジかよ」


 熊男は、口では驚いたふうに言ってはいるが、目にはまだまだ余裕がある。


「つ、次……い、行きますけど?」

「良いぞ、来い!」


 気弱3番は更に魔力を槍に流し、熊男に渾身の一撃を突き出した。

 熊男は魔力を流したバトルアックスで受け止めるが、“ドンッ”という音と共に、二条の足跡を引きずって2メートル後方に押し出された。


「今のは良かったぞ。手が痺れたぜ」

「や、やっぱり手が痺れた程度なんですね……駄目だな僕は……あ、ありがとうございました。こ、これで全て出し切りました」


 どうやら気弱3番の試験は終わったようだ。



 そして4番と虎獣人はというと……


「何をそんなに嬉しそうに笑っているの?」

「我輩は、笑ってなどいないのである。これが我輩の普通の顔であるぞ」

「あらっ、そうなのね。それは失礼したわ」

「いや、怒っても泣いてもこの顔であるからして、我輩は随分と損をしているのである。では参る!」


 4番は終始ニコニコしていた男性冒険者だ。

 微笑み4番は曲刀を両手に持ち、まるで踊るように虎獣人に切り掛かって行った。

 にこやかな顔で、流れるような美しい動きが途切れることなく虎獣人を追いかける。

 スピードは虎獣人の方が遥かに上で、難なく二本の曲刀を躱しているが、時折回し蹴りなどの足技を出して来る度にガードを余儀なくされているようだ。


「あのおっさん上手いな」

「何だか舞台を見ているようだな、ビショップ」

「ええ、それもあるけど、試合運びがとても上手いのよ」

「目が細いから何処を見ているかわからないのも対戦相手としては怖いだろうな」


 くるくる、くるくる飛び跳ねて、規則的な動きでありながら、相手の出方次第で不規則な動きを織り交ぜて、Sランクで無ければ対戦相手を翻弄しているであろう微笑み4番のおっさん。


「やはり、そう簡単には当たってくれないであるな」

「当たると痛いじゃあ済まなさそうだからね」

「良く言うである。我輩には全く当てられる気がしないであるぞ。これが最後である。参るぞ!」


 また二本の曲刀を振りながら、踊るように舞っている微笑み4番のおっさんは、虎獣人が離れたのを見ると曲刀を投げ付けた。

 くるくる回りながら飛んでくる曲刀を、ぎりぎりで躱した虎獣人の目の前には、既に微笑み4番のおっさんが迫っていて曲刀を振り降ろしている。

 すかさずバク転で後ろに下がった虎獣人だが、微笑み4番のおっさんが投げた曲刀が、まるでブーメランのように回転しながら戻って来ている。


 虎獣人は感じ取っていたのか、振り返りもせずにそれも躱して更に距離を取った。

 微笑み4番のおっさんは戻ってきた曲刀を踊りながらも器用に掴み取る。

 そしてまた投げて、もう一本の曲刀も投げ付けた。

 くるくる回る曲刀が戻ってきたらまた投げての繰り返しだ。

 しかし、虎獣人にはかすりもしなかった。


「やはり駄目であるな。修行が足りないである。今のが我輩の全てであるぞ……もう息が上がったである。はぁはぁはぁ」

「駄目では無いわよ。私も簡単には近づけなかったもの」


 

 微笑み4番のおっさんの試験も終わったようだ。


「次の試合は30分後に始めます。トイレは階段を降りて右側に…………」


 休憩の後は、いよいよビショップとシェリーの試験が始まる。


読んで頂きありがとうございました。

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