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第86話 カイトの王都滞在編〜冒険者ギルドにて

 俺達はギルドでクエスト達成の手続きをしたあと、解散して帰る予定だったのだが、迷子になっていたテイムモンスターの証を付けたコボルトを下水道から連れて帰った事で、そのお礼にとコボルトのマスターの若い女性冒険者からお茶をご馳走になる事になった。



「サトミさんとマツリさん……そのテイムモンスターの証は……?」


 頼んだお茶とクッキーが来るまで、お互いの自己紹介を済ませた。

 ポロのマスターの女性冒険者の名前はキリ。

 茶色の長い髪と目をした、華奢な感じの、俺達と同世代くらいの女性だ。


「うん、私とマツリちゃんはカイトのテイムモンスターなんだよ」

「えっ!?うそ、何処から見ても人間にしか見えないよ!?」

「私がドリアードで……」

「私はヴァンパイアですわ。ポロとお揃いですわ♪」


 何故かマツリはお揃いが嬉しいのだろう、テイムモンスターの証をポンポンと叩きながら満面の笑みだ。


「ドリアードとヴァンパイア……信じられない……」

「ほれほれ」


 信じられないと言っているキリの頬に、サトミが人差し指を蔓に変えてツンツンしている。


「ど、どうやったらドリアードとヴァンパイアをテイム出来るんですか!?」

「成り行き?」

「何ですか!?成り行きって何ですか!?あり得ないわ……」

「まあまあキリちゃん、カイトだから仕方ないよ」

「他にもカイト様はホワイトパイソンとラージピジョンと馬をテイムしていますわ」

「マツリ、馬はマックニャンが連れて来たから俺はテイムしていないぞ。それに馬はモンスターじゃ無いぞ」

「ほーう、空を駆けてブレスを吐く馬がモンスターじゃ無いと言うのか?カイト」

「ビショップ、ワラビは馬だ。何度言えばわかるんだ?」

「はいはい、わかったよ、カイト。ワラビは馬だ」

「馬がブレス……?っていうか、ラージピジョンは私もテイムしているけど、ホワイトパイソンまで!?カイトさんはドールマスターなのにどうして!?」

「うーん、どっちも成り行き?」

「はぁ、もう良いわ。サトミさんの言う通り、カイトさんだからって事で納得するしか無さそうね……頭が変になりそうだわ」


 何だか、俺が変な奴みたいな空気になってきたぞ……何か話題を変えないと……


「カイト様、ご歓談中の所失礼致します」


 俺が何か別の話題が無いか考えていると、執事服をビシッと着込んだフェルナンさんが冒険者ギルドにやって来た。

 話題を変えるチャンスだ!


「フェルナンさん、どうしたのですか?」

「はい、例の三人の冒険者が目を覚ましましたので、馬車で此処まで連れて来たのですが宜しかったでしょうか?」

「ああ、あの三人ですね、ありがとうございます。少し話したいので此処に連れて来てもらえますか?」

「畏まりました、カイト様」


 フェルナンさんが、丁寧なお辞儀のあとにギルドの入口に向って手を上げた。

 すると、メイド服姿のララさんとメロディちゃんが、俺達が座っているテーブル席に三人の冒険者を連れて来てくれた。


 さっきまで騒がしかったギルド内が静まり返り、俺達は皆の注目を浴びている。


「カ、カ、カイトさん、いえカイト様はいったい……カイト様は貴族様ですか?」

「あ?いや、俺は普通の冒険者で一般人だぞ」

「し、しかし、この人達は……」


 キリは、フェルナンさんとララさんとメロディちゃんを見ながら恐縮したように聞いてきた。


「ああ、なんだ……これも成り行き?」




 三人の冒険者が恐る恐る椅子に座ったのを見計らって、話をしようとした時、ギルド内の異様な空気に気が付いたミウラさんが、此方にやって来た。


「なんだ、何かと思えばカイトさんだったのですね」

「ミウラさん……?そうか、まだ視察をしていたんだな。丁度良い、ミウラさんも聞いてくれ」

「カイトさん、もし大事なお話でしたら二階の部屋を使いますか?」


 俺は周りを見回す。未だ注目の的だ。




 二階の会議室のような部屋に俺達は座っている。

 俺の他にはサトミ、マツリ、キョウヤ、ビショップ、シェリー、ヨシュア、そして、キリと三人の冒険者、更にミウラさんと、見たことの無いエルフの女性が居る。

 フェルナンさん一家は馬車で新月の館に帰って行った。


「あの……私が此処に居ても良いのかな……?」

「キリちゃんが居ても良いよね、カイト?」

「ああ、別に構わないぞ。それよりミウラさん、そこに居るのは誰だ?」

「ああ、私の事は気にしないでくれ。面白そうなんでな、野次馬に来ただけだ」


 足を組んで偉そうにしているエルフの女性。

 何となく誰か察しが付いたので、本人の言う通り気にしない事にした。



 シェリーがアイテムボックスから紅茶を出し、ミウラさんが全員に配り終えた所で、俺は話を始めた。


「今朝の事だが、この街の下水道にバフォちゃんが現れて、モルモットのようなモンスターを召喚したそうだ」

「俺達が戦ったモンスターだ」

「そうだな、そして傷を負わされて気を失っていたんだ」

「お前達が助けてくれたのか?」

「いや、俺達ではないぞ。お前達が退治しようとしていたネズミが、お前達を助けたんだ」



 俺は、草原にバフォメットのバフォちゃんが現れて、スケルトン、グレムリン、ガーゴイル、餓者髑髏と戦ったところから、下水道の中でのモルモットモンスターとの戦い、下水道の奥から聞こえてきた声、その声の主である大きな白ネズミと、大型犬ほどの大きさの十数匹のネズミに多数の普通のネズミについて話した。


「なるほどな、その白ネズミがそこの三人を助けて、カイトだったな、お前に外に連れて行くように頼んだ。ふむふむ……私が思うに、その白ネズミは転生者ではないか?どうだ、当たりだろう?」

「ええ、その通りです。ギルドマスター」

「ほう……良く私がギルドマスターだとわかったな」

「冒険者ギルドで偉そうな態度をしていますからね。わからない方がどうかしていると思いますよ」

「なるほど、これは一本取られたな。あっはっはっはっは」


 エルフは総じて美男美女が多いと聞いていたが、ご多分に漏れず王都の冒険者ギルドのマスターもかなりの美人だ。

 腰まであるサラサラの真っ直ぐな金髪、スカイブルーの瞳、口角の上がった薄い唇、そして背が高くスレンダーな身体はしなやかさを感じさせる。

 ただ、男まさりの口調でアニメ声なのが残念だ。


「う〜ん、カイトの言う通りだとすると、下水道のネズミは我々を害するどころか、逆に助けてくれる存在だと言う事だな」

「ギルマス、ネズミ退治のクエストは取り下げた方が良いのでは?」

「そうだなミウラ。我々に協力してくれる者を退治なんて出来る筈も無かろう」


 勝手に話が進んでいるぞ。


「ギルドマスター、ネズミ達は冒険者のネズミ退治を楽しみにしているらしいです。何でも、命がけの遊びとか言っていて、冒険者から逃げるのが楽しいらしいのです。それと、こうも言っていました……退治されてもすぐに増えると」

「なんだ?それでは今まで通りで良いと言うわけか?」

「はい、それとあと一つ、モルモットモンスターは食料にするから任せて欲しい。そう言っていました」

「そのモルモットモンスターを一度見てみたいもんだな」


 俺はアイテムボックスから状態の良いモルモットモンスターを出して、床に置いた。

 倒したモンスターは、俺が言わなくてもコンセが常にアイテムボックスに入れてくれるから助かっている。


 アイテムボックスから出した個体は黒と茶と白の斑で、額に尖った角があり、背中には小さな皮膜の翼がある。

 改めて見ると、鋭い爪も持っている。


 外傷が無く、背骨が折れている事から、グランかエルが倒した個体だろう。


「ふむふむ、何とも可愛らしいモンスターだな……角と翼と爪……毛皮も使えそうだ……カイト、まだ持っているならギルドで買い取らせてくれないか?」

「わかりました。帰りに出しておきます」

「ああ済まないな、買取額には色を付けておくからな」






 話しも終わり、三人の冒険者を帰らせてから、俺がギルドの買い取りカウンターにモルモットモンスターを出していると、ミウラさんとギルドマスターがやって来た。


「カイトさん、このあと何か予定はありますか?」

「いや、特に無いから帰ろうと思っていたんだが、用があるのなら付き合うぞ」

「用があるのは私だ。ビショップ達は帰ったのか?」


 買い取りカウンターには俺とレクス、グラン、エル、マックだけが来ている。


「俺がモルモットモンスターを出している間、食堂でお茶を飲んで待っていてもらっています」

「そうか、それなら私も食堂に行こう。モルモットモンスターを出し終えたら、お前も来るんだぞ」


ギルドマスターはミウラさんの手を引っ張って、颯爽と食堂に歩いて行った。


「何だろうなレクス?面倒くさい事じゃ無ければ良いんだが……」

「何となく面倒くさそうな事を言ってくる気がするの!」


 モルモットモンスターを二匹だけ残して、残りは全て買い取りカウンターに出した。

 残した二匹のモルモットモンスターは、ララさんとメロディちゃんのお土産だ。


 買い取り査定と支払いは後日だと言う事なので、俺はギルドカードを出して振り込んでもらうように、カウンターの向こうでモルモットモンスターをせっせと運んでいる男性職員に告げて、重い足取りで食堂へ向かった。



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