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第84話 カイトの王都滞在編〜下水道の異変!?②


 一斉に此方を見ているネズミに、俺達はそれぞれ武器を構える。


 しかし、相変わらず数匹のネズミが、俺達の足元を行ったり来たりしているが、俺達に襲いかかって来る気配は感じない。

 しかも、ボスらしき白いネズミも大型犬並のネズミも此方を見ているだけで動く気配すら無い。


「どうなっているんだ?大きいネズミは明らかにモンスターだよな」

「カイトが怖くて動けないんじゃない?アハハハハ」

「俺の顔はそんなに怖いか?サトミ」

「うーん、全然怖くないね……子供だし」

「なっ!子供?……い、いや、私は大人です」

「なあカイト……いくら声を低くして言っても俺達の身体は15歳くらいなんだ。しかも、お前はまだ声変わりもしていないだろう?」

「うん、カイト君は可愛らしい顔をしているからね、声色を変えただけでは無理があるよ。アハハハハ」

「ねえ、あなた達、こんな所でコントなんかしている場合?あの白いネズミを見て。呆れた顔をしているわよ」


 シェリーの言うように、白いネズミがジト目で俺達を見ている。

 ネズミなのに表情豊かな奴だ。


「ゴホンッんー、まあなんだ、向うに戦う意志が無いのならこのまま通らせてもらおう。先に入っていた冒険者達を探さないとな」


 俺がそう言うと、白いネズミが立ち上がり、その大きな身体を横にずらした。

 すると、冒険者ギルドで俺達の後ろに並んでいた若い冒険者パーティーの三人が気を失った状態で横たわっているのが見えた。

 どうやら怪我をしているようだ。


「彼等はあの時の……そうか、ネズミ退治のクエストに来て、やられたようだな」

「まだ生きていますわ」

「うん、傷も浅いようだ。助けるんだろうカイト?」

「ああ、ネズミを倒して直ぐに助け出す。行くぞ!!」


 俺達は武器を構え直して、白い大きなネズミと大型犬並のネズミに向かって走り出した。


「ほれ、此方じゃ!此方から抜けられるぞい!!」


 いきなり聞こえて来た声に足を止めた俺達は、声の主を探してキョロキョロと辺を見渡す。


「サトミ、今の声は何処から聞こえて来た?」

「ん〜白いネズミ?」

「私にも白いネズミから聞こえて来たような気がしますわ」

「マツリもか……俺の気のせいでは無かったようだな」


 俺達は白いネズミに目を向けて、じーっと見つめる。

 10秒が過ぎ、20秒が過ぎて、もうすぐ30秒になろうかという時、白いネズミの口が開いた。


「ほれ、此方じゃ!此方から抜けられるぞい!!」

「喋ったよ!カイト。やっぱり白ネズミだね!!」

「カイト君、もしかしたらあの三人は白ネズミに保護されたのかもしれないよ」

「キョウヤ君、考えすぎじゃないかしら?きっと白ネズミは、あの三人を食べるために生け捕りにしているのよ」

「そうだとしたら、俺達も食べる為に此処に誘い込んだのか?」

「そうかもしれないぞ、カイト。さっきから同じ言葉しか喋っていないからな。知能が高ければ他の言葉も話す筈だ」


 白ネズミは俺達の会話をじっと聞いている。

 そうやって、さっきの誘い込む言葉も覚えたのだろうか?


「はぁ〜、やれやれ……近頃の若いもんは……さっきからおとなしく聞いていれば好き勝手な事を言いおってからに。誰の知能が低いじゃと?はあ?それにじゃ、わたしゃ人間なんぞ食ったりはせんぞい」

「おいっビショップ、流暢に喋っているぞ。これはキョウヤの言ったようにあの三人は保護されているのかもしれないな」

「ああ、何だかそのようだな……」

「ネズミのおばあちゃんですわ!!」

「おやおや、可愛らしい娘じゃの。名は何て言うんじゃ?」

「私はマツリですわ」

「おーおー、そうかそうかマツリちゃんか。良い名じゃのう。もう少し近くに来ておくれ」


 マツリは確認を取るように俺の顔を見て、俺が頷くと白ネズミの所まで歩いて行った。


「本当に可愛らしくて良い子じゃて。こんなネズミの化け物のババアが怖くはないのかい?」

「怖くないですわ、おばあちゃん」


 何故かマツリは年寄りに好かれるタイプのようだ。


「なあ、白ネズミ、一つ聞いても良いか?」


 俺は、マツリとほのぼのしている白ネズミに声をかけた。


「なんじゃ?坊やは確かカイトとか言うておったの。一つでも二つでも聞きたい事があるのなら答えてやるぞい」

「それなら、いくつか聞かせてもらおう。まずは、そこで気を失っている冒険者をどうするつもりなんだ?」


 頼むから食べるとか言わないでくれよ……


「この子らはの、おかしなモルモットみたいなモンスターに襲われていたところを、私の子供達がここ迄運んで来たんじゃよ。見ると怪我をして気を失っているもんじゃから、どうしようかと思案しとった時に坊やらが来たもんじゃから、此処に呼んで連れて帰ってもらおうとしたんじゃよ」

「そうか、食べる為では無かったんだな」

「誰が人間なんか食べるもんかい。坊やに言ってもわからないじゃろうが、わたしゃこう見えてもグルメでのう、そりゃあ美味いもんをいっぱい食べたもんじゃ。最後に食べた極上霜降り肉のしゃぶしゃぶはうまかったのう……」


 白ネズミは極上霜降り肉のしゃぶしゃぶの味を思い出しているのだろう、

目を細めて咀嚼をしている。


「それなら、そこの三人は引き取らせて貰うぞ。サトミ、あいつ等を館で介抱してやってくれ」

「私の出番だね。任せておいて」


 サトミと気を失っている三人の冒険者を新月の館に送り、新月の屋台を出して白ネズミへの質問を続ける。


「白ネズミ、あのモルモットのようなモンスターはいったい何だ?」

「ほう、転移か何かの魔法かの?そうそう、あのモンスターの事じゃな。あれは私にも良くわからん生き物じゃ。この子等が見たものは私にも見えるのじゃが、今朝方の事じゃ、昔何かで見たようなヤギ頭の悪魔がこの下水道にやって来たのをこの子等が見つけての、何とも奇妙なモルモットのようなモンスターを召喚したんじゃよ」


 この子等というのは、今も俺達の足元を行ったり来たりしている普通のネズミなのだろう。

 それにしてもモルモットモンスターを使ってバフォちゃんは何をしようとしているんだ?


「それでじゃ、ヤギ頭が3回目の召喚をしようとしたときにじゃな、それはもう大きな“G”が突然現れて、ヤギ頭は悲鳴を上げてふるえながら、あたふたと逃げて行ったんじゃ。私もあの“G”を見た時は全身の毛が逆だったわい……この世には何とも恐ろしい生き物が居るもんじゃて」


 白ネズミが言う“G”とはジョニーの事で間違いないだろう。

 ジョニーの姿を思い出したらしく、全身の毛を逆立てて震えている白ネズミは、涙目で胡麻をすり潰している俺を見ている。


 ジョニーの奴、下水道を散歩していたんだな……


 すり潰した胡麻に酢と醤油と煮切った酒と砂糖を合わせて味見をすると、何か物足りないのでマヨネーズを加えてみた。


「そうだとしたら、ギルドで出ているネズミ退治のクエストはお前等の事だよな?お前等は人間に危害を加えているのか?」


 俺は、出汁に醤油と酢とレモン汁を加えて味見をして、これにも煮切った酒と砂糖を少し加えて、白ネズミに質問を続けた。


「私等は人間に危害を加えたりはせんがの、人間から見たら私等ネズミは害獣じゃ。そりゃあネズミ退治にも来るだろうさ」

「それなのにお前等は自分達を退治に来た人間を助けるのか?」


 アイテムボックスからダンジョンで手に入れた極上の霜降り肉を出して、薄くスライスしていく。

 他にも一角牛やオーク肉も薄くスライスして皿に盛り付け、人参や白菜やきのこも用意して、昆布を入れた湯を沸かしながら白ネズミの話を聞いた。


「別に人間が憎い訳でも無いし、この子等も人間から逃げるのを楽しんでいるのじゃ。言うてみれば命がけの遊びじゃな。それに、少しくらい退治されてもすぐに増えるしの」

「そうか、お前等がネズミ退治を遊びとして楽しんで、人間を襲わないのなら構わないが、あのモルモットモンスターはそうは行かないだろう。奴らは人間を襲うから討伐しなくてはいけないな」


 鍋に野菜ときのこを入れて火が通ったら、皿に盛り付けた肉と胡麻ダレとポン酢を一緒に白ネズミの前に置く。


「おぉこれは……坊やは何故この料理を、しゃぶしゃぶを知っているんじゃ?」

「俺達も転生者だからな。しかし、何故ネズミに転生したんだ?」


 白ネズミは器用に箸を使って極上霜降り肉をしゃぶしゃぶして、恍惚の表情で咀嚼している。

 本当に表情豊かなネズミだな。


「ああ……何とも美味い肉じゃ……口の中に広がる脂身の甘さと、とろけるような食感はあの時食べた肉よりも数倍はうまいぞい。ああ、そうじゃった……あのモルモットはあの子等の食料になりそうじゃからの、私等に討伐させて欲しいんじゃが……」

「俺は構わないが、どうだろうビショップ、シェリー?」

「そうだな、殲滅するのが一番良いんだが、モルモットモンスターが増えすぎないように管理出来るのなら良いんじゃないか」

「そうね、この下水道から一匹も外に出さないのなら、私も良いと思うわ」

「おお、それならば大丈夫じゃ。あのモルモットは凄く弱いからの。後は何故、ネズミに転生したかじゃな?」

「話したく無いなら無理にとは言わないぞ」

「久しぶりのおしゃべりじゃ。話したくなくても話すぞい。あっはっはっはっは」


 あっ!しまった……年寄りの話は長いんだよな……


「私が人間だった頃にじゃ……」




読んで頂きありがとうございました。



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