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第80話 カイトの王都滞在編〜王城へ

 宴は深夜まで続き、入れ代わり立ち代わり俺達の席に酒を持って、転移者や転生者の子孫、そして、事情を知ってビショップ達に協力している人達がやって来た。


 紹介なんかしなくても、名前は無理だが顔を覚えるくらいは出来た。


 爺さん、婆さんは、マツリの事が気に入ったようで、まるで孫を相手にしているように、ずっとちやほやしていた。

 マツリも満更でもなさそうな様子で、もしかしたら爺さんっ子か、婆さんっ子だったのかもしれない。







「カイト様、ヨシュア様、おはよう御座います。昨日はあれだけ呑んで、良くそんなに動けますね」

「ああ、ララさん、おはようございます。どうやら、俺達の身体は毒の類いが効きにくいのだと思いますよ。アルコールも言ってみれば毒ですからね」


 俺とヨシュアは早朝から手合わせをしている。

 ヨシュアは嬉しそうだ。


 ララさんは昨夜の宴会でフェルナンさん、メロディーちゃんと一緒に俺達に給仕をしてくれていた。


「ララさん、昨夜はお疲れ様でした。今日はもっとゆっくりとしてくれても良いですよ」

「ありがとう御座います、カイト様。ですが、習慣になっていて、動いていないと落ち着かないのです。皆さんはまだお休みになっておられますが、朝食のほうは如何致しましょうか?」

「ビショップとシェリーは出掛けていますから、彼等が帰って来るまで寝かせておいてあげましょう。朝食はそれからという事でお願いします」

「畏まりました、カイト様。訓練のお邪魔をしてしまい、申し訳御座いません」

「いえ、もう終わる所でしたから、気にしないで下さい。ヨシュア、風呂に行くぞ」

「ウガー♪」






「カイト、今日は俺達と一緒に王城に行くぞ」

「ブ―――――――ッ、ゲホッゴホッゴホッ、はぁ、はぁ、はぁ……何だよビショップ……藪から棒に……牛乳を吹いてしまったじゃないか……ったく」

「鼻からも出ていますわ、カイト様」

「鼻から牛乳〜鼻から牛乳〜あはははは」

「サトミさん、笑ったらかわいそうだよップ、クククク」

「ほら、もうサトミさんもキョウヤさんも笑ってないで手伝って下さい」

「カイトさんナプキンです。これで拭いて下さい」

「ああ、すまない、アマンダさん、ミウラさん」

「サトミ、キョウヤ……後で体育館の裏で話そう」

「怖っ!カイト君って不良だったのかな?」

「さぁ〜どうなのかな?私と出会った時は、お花やお菓子を毎日持って来てくれた優しい人だったよ」

「サトミ黙れ」

「えーっ、今の話、もっと聞きたいです。サトミさん」

「アマンダさん!?」

「じゃあ、今夜はアマンダさんの部屋で女子会だね」

「私も行っても良いですか?」

「ちょ、ミウラさんまで!?」

「カイト、諦めなさい。女の子は何処の世界でも恋バナが大好物なのよ。って事で私も行くわね」

「シェリーまで……」

「カイト、なんかスマン……」

「ビショップ俺は……」





 アマンダさんを商業ギルドに、ミウラさんを冒険者ギルドに送って、俺とサトミ、マツリ、キョウヤ、そして、ビショップ、シェリー、ヨシュアはマックニャンの御する馬車で王城に向かっている。

 勿論、レクス達も一緒だ。


「ビショップ、服装はいつものやつだが、これで良いのか?」

「ああ、問題無い」

「私達、謁見の間とかに行くのかな?」

「公式の会談じゃ無いから、謁見の間には行かないと思うわよ、サトミさん」



 王城に到着した俺達は、四人の騎士に囲まれて、執事と二人のメイドの案内の元に迷路のような長い廊下や何段もの階段を上がり、国王の居室に最も近い応接室にたどり着いた。


「ビショップ様、此方のお部屋で暫くお待ち下さい」

「はい、ありがとうございます」


 執事は国王の所に行き、騎士達は応接室のドアの外と内に二人ずつ立って、微動だにしない。

 そして、俺達がソファーに座ると、二人のメイドがワゴンを押して入って来て、俺達にお茶を入れてくれた。

 部屋の中と外に騎士が居て、壁際にメイドが立っている。

 ――――――――何だか、落ち着かない。




 暫く待っていると、体格が良く、精悍な顔立ちで金髪碧眼の、口髭が良く似合う40代くらいの立派な服を着た男が入って来た。


「良く来たなビショップ。それで、そこに居るのは転生者か?」

「はい、国王様。転生者のカイト、サトミ、キョウヤで、此方のマツリは転移者です」

「そうか、そうか、やっと見つけたのだな、ビショップ」

「はい、チェロ達のお陰で見つける事が出来ました」

「そうか、あ奴もやっと役に立つ事ができたか。良かった、良かった。ワッハッハッハッハ」


 チェロは、もしかしたら騎士なのかもしれないな。

 頭ごなしに怒る所なんて、何だかそれっぽいしな……


 それから、暫く軽い雑談を交わして、国王自ら本題を切り出した。


「儂の娘が初代様の予知夢のギフトを色濃く受け継いでいてな、この地に災いが起こる事を予知しておるのだ」

「その災いとは、どういった物でしょうか?」

「うむ、カイトよ。ビショップ達には話していたのだが、聞いてはおらぬか?」

「カイトには、国王様から直接聞いたほうが良いと思いまして、俺達からは話していないのです」

「そうか、なら、儂から話そう。カイトよ、娘はこう言っておる。悪魔がこの地を支配しようとしているとな」

「悪魔……」

「そうだ、悪魔だ。それも、見上げる程に大きくて、恐ろしい顔をしていると言っておる。そして沢山の小さい悪魔が、逃げ惑う人々を生け捕りにしているともな」


 バフォちゃんが同じような事を言っていたな。

 それに、ギフトの予知夢と言う事は、実際にこれから起こり得る可能性が高いと言う事だろう。


「カイトよ、お前が旅を続けると言うのなら止めはせん。ただ、今の話は覚えておいて欲しい。この国が悪魔の手に落ちたら、次は他の国が襲われる事になるかもしれない。―――――ワッハッハッハッハ、だがな、儂らは負けるつもりなど無いぞ。この国には転生者の末裔や転移者も居る。そしてビショップ達もな」

「そうですか。ビショップ達は此処に残って戦うんだな?」

「ああ、そうだ。だがなカイト、俺達はお前に強制するつもりは最初から無いからな。悪魔は俺達が倒す。その為の準備は着々と進んでいるしな。お前は東の国に行きたいんだろ?」

「ああ、そのつもりで旅をして来た」

「それなら旅を続ければいい。その悪魔も何時来るかわからないらしいしな。もしかしたら明日かもしれないし10年後かもしれない。悪魔は長命種だから、100年後もあり得る訳だ。アハハハハ」


 バフォちゃんくらいの悪魔ならビショップ達だけでも簡単に倒せるだろう。

 もし、巨大な悪魔が来たら、転移で戻って来れば良い。


「そう言ってくれるのなら俺は旅を続けよう。と言っても直ぐには行かないぞ。まだ王都の観光をしていないからな」

「ああ、それで良い。俺達が色々案内するぞ」


 俺達のやり取りを見て、国王は目を細めて頷いている。

 優しい男だ。この国王だから、今まで会ってきた領主も善良な領主が多かったのだろう。


 この国王なら信用出来そうだ。


「国王様、一つお願いがあるのですが」

「何だ?カイト、言ってみろ」

「今、俺は転生者や転移者を元の世界の元の時間に戻す事が出来るアイテムを持っているのですが、俺が……」

「ちょっと待て!帰る事が出来るのか、カイト!?」

「そうだビショップ。だが、転生者にはオススメ出来ないぞ。帰って直ぐに死ぬ事になるからな」

「なるほど、元の場所と時間って事か……」

「転移者も状況によっては危険かもしれないが、ただ歩いていてこの世界に流されて来た者には有効だと思うぞ。その辺を理解して、帰りたいと思う転移者に、俺は使ってもらいたいんだ」

「カイトはそのアイテムの管理を儂にして欲しいと言う訳か?」

「はい、お願い出来ますか?」

「今、この国は先程話したような状況だ。そのような貴重なアイテムはお前が持っていたほうが良いだろう。その代わり、転移者にこの話を広める事は出来る。そうすれば、この先流されて来た者も希望が持てるだろう。ビショップ達が窓口になれば良い。どうせお前たちの事だ、遠く離れても連絡くらい出来るのだろう?ワッハッハッハッハ」


 この国王、なかなか鋭いぞ。

 どこまで見通しているんだ?これもギフトの力かもしれないな。




 俺達は王城を後にして、冒険者ギルドに行く事にした。


「最近クエストを受けていないからな、たまにはギルドを覗いてみよう」

「久しぶりのクエストなの!!」

「ワッハッハッハッハ暴れるのか?」

「カイト、討伐だぜ」

「グランにエル、昨日散々暴れたニャン。まだ暴れ足りないニャン?」

「まあクエストボードを見てからな」


 俺達は冒険者ギルドの中へ入って行った。


読んで頂きありがとうございました。

また、誤字脱字報告、評価やブックマークにも感謝です。

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