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第7話 カイト、ゴブリンの討伐に行く


 今日は気持ちの良い朝だ。

昨夜はシャワーを浴びたし、なんと言っても小豆とインディカ米を目にしたからな。


 レクスに頼めば、多分この世界よりも安く手に入るんだろうけど、なんと言っても現地で探して、見つける事に意味が有るんだよな。


 そんな事を思いながらベッドから起き上がり、窓の外を見ながら背伸びをする。


「おはよう、カイトくん!」

「ああ、おはよう、レクス」

「カイトよ、調子はどうだ?」

「ああ、今朝は気分が良いぃッ!?」


 聞き覚えの無いオッサンの声にバッ!と後ろを振り向いた。


「よう、良い朝だなワッハッハッハ」


 そこには、スキンヘッドで、空色の目、顔の半分を埋めている茶色いモジャモジャの髭をはやして、腰のところを紐で縛った灰色で袖がない貫頭衣を着た、筋骨隆々?の身長30cm位の人形が有った。


「良い朝が台無しだよっ!!」


 俺の気持ちの良い朝を返せ。


「レクス……説明……」

「彼はグラントス、鍛冶神だよ!」

「鍛冶神…グラントス……様?」

「人形の時のワシはグランだ。屋台を作るのだろう?ワシに任せておけ、立派な屋台を作ってやるぞワッハッハー」


 そ、そうだった……


「カイトくん、今日は何をするの?」

「商業ギルドに行って、屋台の材料の調達と冒険者ギルドで、何か依頼を受けようかと思うが、その前に朝食だ」





「おはよう、カイトさん、レクスちゃん。あっ!お人形が増えてる。かわいいっ!」


 は?……可愛いか?


「そうか、そうか、可愛いか、ワッハッハ、宜しくな嬢ちゃん、ワシはグランだ」

「うん、グランちゃんよろしくね!」


 朝食はパンと目玉焼き、野菜のスープにサラダだ。

 パンの堅さにも慣れてきたな。


「ごちそうさん、メアリー。行くぞレクス、と、かわいいグランちゃん」

「お前が言うと嫌味にしか聞こえんわ、ワッハッハッハ」




 今日の商業ギルドは人が少なくて、すぐに順番が回って来た。


「おはようございます、アマンダさん」

「いらっしゃいませ、カイトさん」

「屋台を作る材料は此方で揃える事は出来ますか?」


「もちろんです。ご案内します」


 商業ギルドから少し離れた所に有る資材置き場へ案内されて来た。


「選んだ資材は此方の荷車に乗せて、あちらの建物で会計をお願いします。では、私は戻りますね」

「ありがとうございます、アマンダさん。それじゃあ、グラン資材を選ぶぞ」

「カイトよ、どのような屋台にするのだ?」

「そうだな、車輪は有っても無くても良いぞ。外側は長方形の箱だな。長い方の面を上に持ち上げて開けば屋根になるように出来るか?」

「ああ、問題無い、任せろ」

「あとは……」

「大丈夫だ。ワシに任せておけ。最高の屋台を作ってやるぞワッハッハー」

「そうか、じゃあ任せた」


 資材の代金を支払い、商業ギルドを出て、今度は冒険者ギルドに向かう。

 目と鼻の先だ。


 クエストボードを見てゴブリンの討伐に決める。


「グラン、屋台は何時、何処で作るんだ?」


 冒険者ギルドを出て、正門に向かいながらグランに聞いてみた。


「今夜にでも神界にあるワシの工房でチョチョイのチョイだワッハッハー」

「それって神器になるのか?」

「一応そうだ。ワッハッハッ」

「そんなに気安く作っても良いものなのか?」

「大した物でもないし良いんじゃないか?ワッハッハッ」


 大丈夫なのか、この世界の神は?



 森に入ってから暫く歩いた。


「コンセ、この辺りにゴブリンは居るか?」

(この先5kmの地点に少数のモンスターの群れが居ます)


 俺たちはゴブリンの居る場所を目指し森の中を歩く。レクスとグランは小走りだ。


「コンセ、薬草の有る場所はマップでわかるか?」

(はい、マスター、マップを展開して緑色の光点で示します)


 マップが目の前に展開されて緑色の光点が、あちらこちらに点灯した。


「レクス、グラン、この光点の場所に薬草が有るから採取しながら行くぞ」



 ゴブリンの群れが居る所まで来る頃には、かなりの薬草が採取出来て、アイテムボックスの中に入っている。 


 今は森を抜けて草原に出ている。




「あのゴブリン達は何をしているんだ」


 8匹のゴブリンが茂みに身を隠して、向こう側の草原を見ている。と言う事は、此方に背中を見せている状態だ。


「向こう側に何が有るかわからないが、どうせ倒すんだ。行くぞ……オイ!」


 俺がゴブリンに声を掛けると、一斉に振り向き襲い架かって来た。

 アイテムボックスから新月の刀を出し、1匹目を袈裟斬りにする。


 レクスを見ると、腕を振り切って、風の刃で胴体を切断していた。


 グランは戦えるんだろうか?


 此方に来たゴブリンを切りながら、グランを見る。

 口を大きく開けたグランは、巨大なハンマーをその口から出して振り回し、独楽のように高速回転しながらゴブリンを叩き潰していた。


 明らかに、口から出せるサイズじゃ無いんだけど……自重よりもハンマーの方が重いのに、どうして振り回されないんだ、神パワー?


「でも、やるな、グラン」


 あっと言う間にゴブリンを殲滅して、刀で討伐証明の角を切断し、アイテムボックスに入れる。


 すると、戦闘音が聞こえたのか、巨大な白蛇が鎌首を上げて此方を見ている。


「レクス、グラン、少し下がって様子を見るぞ」


 俺達は、戦闘態勢を維持しながら、白蛇から距離を取った。


「カイトくん、どうしたの?」

「あの白蛇から殺気が感じられない」


 全身が真っ白で、目は円で赤く、ルビーのようだ。


 体長は目算で10mから15mは有るみたいだ。胴体もそれなりに太い。

 昔に見た映画の巨大な蛇を彷彿させる。


 赤くて細い舌が口の先からちょこっと出ている。

 締りのなさが何となく可愛い。



 白蛇は空腹だったのか、俺達が倒したゴブリンを、ゆっくりと丸飲みにしていく。

 そして、8匹のゴブリンを全て丸飲みにしたあとに、俺に視線を向けた。


「戦うのか?」


 言葉が通じるかは疑問だが、白蛇に聞いてみた。

 白蛇は僅かに首を横に振り、去って行った。


「まぁ、ゴブリンの後始末をしなくても良くなってラッキーだな」


 ゴブリンは素材になる所が無いからギルドでも買い取ってくれないからな。


 しかし、去って行ったと思った白蛇が、50m先で、頭だけを此方に向けて俺を見ている。


「カイトよ、付いて来いって事じゃないか?」

「私もそんな気がするよ、カイトくん!」

「俺も、そう思えてきたよ、良し!行ってみよう」


 俺たちが前に進むと、白蛇も進み始めた。時々、後ろを確認している。


「これは正解のようだな、カイトよ。ワッハッハ」

「ああ、そのようだ。それにしても、大きいな。10m以上有るんじゃないか?」

「多分、永く生きていて知能も高いんじゃないかと思うの!」




 暫く進むと、草木は(まば)らになり、岩や土が目立ってきた。

 更に進むと、急勾配になっている。


 岩から岩へと飛び移りながら降りて行くと、両側が(そび)え立つ峡谷に降り立った。


「凄い所だな。地割れか何かで出来た峡谷か?」

「何だかワクワクするね!」

「レクスは女神なんだから、何でも知っているんじゃないのか?」

「私達でも、いちいち細かい事は知らないよ!前の管理者の創造神のバカは、この世界を作ったきり、放ったらかしで何もしなかったしね!」

「ああ、それで危うく滅びかけたからなワッハッハ」

「何か聞いてはいけない事を聞いたような………っていうか、それって笑い事じゃねぇだろ!」


 峡谷を暫く進むと切り立った崖の5〜6m位の高さの所に岩棚が有り、その奥には、大きく口を開けた洞窟が有った。


 白蛇は岩棚まで登ると、そのまま洞窟の中に入って行った。

 俺は、レクスとグランを抱え、足に魔力を集中させて岩棚までジャンプした。


「レクス、明かりを出せるか?」

「うん、カイトくん、今出すね!」

「何だ、何だ、レクスよ何でワシの頭が光っとるんじゃー!」

「おもしろいから?ハイ!グランが先頭だよ!」


 グランの頭が眩しいが、白蛇を追って奥まで進む。


 最奥まで来ると、形は(いびつ)だが、10m級の大蛇が、とぐろを巻いても余裕が有るくらい広い。

 実際に今、目の前で白蛇がとぐろを巻いている。



「この白蛇は此処に連れて来たかったのか?」


 辺りを見回してみると、奥の方に、祭壇のようなものが有った。


「これは……白骨」


 祭壇の上には白骨死体が寝かされていた。

 頭蓋骨の横に石で造られた箱が置いてある。

 白蛇を見ると、来た時と同じで、動かずに俺を見ている。


「カイトくん、この箱には保存の魔法が付与されているよ!」


 俺は、石箱の蓋を開けた。


「首飾りと手紙が有るぞ」

「カイトくん、この首飾りは、新月の首飾りだよ!」


 新月の首飾りは銀色のチェーンに鈍色の丸いペンダントトップで、そのペンダントトップの側面は銀色に輝いていて表面の鈍色とのコントラストが美しい。

 表面と裏面には細い線で紋様のような物が彫り込んであって、光が当たると銀色に輝いていて神秘的だ


 俺は手紙を手に取り読んでみた。


 それは、日本語で書かれていた。




【この手紙が読めるという事は、レクサーヌ様か転生者ですね。

 僕は、木下修司です。地球では生まれた時から身体が弱く、入退院の繰り返しで学校にも行けず、友達が1人もいないまま、肺炎にかかり15歳で他界しました。

 今、思えば文字通り他界でしたね。


 この世界で僕は念願の友達を得る事が出来ました。

 沢山の街や村で、沢山の人と知り合い、友達になり、親友が出来ました。結婚して家族を持つ事も出来て、幸せな人生を送れました。


 何より、レクサーヌ様から頂いた神器、新月の首飾りのおかげで、僕にとって掛け替えの無い大親友である、ホワイトパイソンの“ダイフク”に会えた事です。ダイフクには、数え切れないほど助けて貰いました。


 健康な身体と幸せだった人生をくれたレクサーヌ様に感謝します。

 本当に、有り難うございました。

 

 僕は、必要なリソースを供給出来ましたか?供給出来ていたのなら、嬉しいです。


 ダイフクはまだ、此処に居ますか?もし君が転生者でしたら、此処に有る新月の首飾りを使って下さい。

 ダイフクの自由にさせると、この場所から死ぬまで離れないと思います。僕は、それだけが心残りです。

 ダイフクの事を君に託します。

 

 君も、良い人生が送れますように】

読んで頂いた方、有り難うございます。

グランが仲間になりました。



グラン(人形・鍛冶神グラントス)


木下修司(昔の転生者)

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