表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/155

第66話 カイト、ダンジョンに行く〜6日目④

 レクス、グラン、エルは、蝙蝠形態のマツリの下まで行き、両手で持った宝箱を掲げて見せた。


「マツリちゃんに、どうぞなの!!」

「私のもマツリにやるぜ!」

「ワッハッハッハ、ワシらには必要無いからな」


 はぁ……そんな事で戻るのなら苦労しないぞ……



「…………お、お、お宝ですわ!おっ宝♪おっ宝♪ですわ!!」

「え―――――っ!?戻るの!?それで戻るの!?」


 蝙蝠が集って、人型になったマツリは、すっかり元通りに戻っていた。



 サトミの気持ちはわかる。俺も同じ気持ちだ……


「何だよ……俺とサトミの心配した気持ちを返せよ……」

「カイト様、私は黒いワイバーンと戦っていた筈ですわ。どうして此処に居るのですか??」

「お前、覚えていないのか?」

「マツリちゃんは黒いワイバーンに勝ったんだよ」

「……?覚えていませんわ……ハッ!?もしかして、無意識の戦いに目覚めたのでは!?」

「はぁ……お花畑はほっといて、サトミ、次はお前の番だぞ。銀色のワイバーンが待っているぞ」


 台座の上で、銀色のワイバーンは、此方を見ている。

 どうやらサトミが出てくるのを、ご丁寧に待っていてくれていたようだ。

 サトミが中央に歩いて行くと、銀色のワイバーンは台座を蹴って飛び上がった。


 太陽の光でキラキラと輝いている銀色のワイバーンは、今までのワイバーンよりも大きな体躯をしている。



「何時でも良いよ!」


 先に攻撃を仕掛けたのは銀色のワイバーンだ。

 サトミに向けて、上空から風の刃を連続で放ってきた。


 サトミは落ち着いた動作で両腕を頭上に掲げ、自身の周りに竜巻の如く渦を巻く葉っぱを生み出して、風の刃を迎撃する。

 風の刃を相殺した残りの葉っぱは、そのまま銀色のワイバーンに向かって行くが、ヒラリと躱されてしまった。


「棘蔓!」


 銀色のワイバーンが葉っぱを躱している間に、サトミは腕を棘蔓に変え、槍のように真っ直ぐと突き出した。

 棘蔓の槍は、銀色のワイバーンの脇腹にかすり、鱗を弾き飛ばした。


 脇腹に血を滲ませながら、銀色のワイバーンは、天井の金網まで舞い上がり、太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。


「眩しくて良く見えないですわ」

「レクス、輝きが段々と強くなっていないか?」

「鱗で太陽の光を集めているの!」

「何か来そうだな……サトミ、気を付けろ!」

「うん、わかってるっ!?」

「グア!」


 太陽光を集めていた銀色のワイバーンの口が大きく開き、極太のレーザ光線のようなブレスを放ってきた。


「サトミ!?」

「サトミお姉さま!!」


 レーザ光線はサトミを飲み込み、轟音と共に土埃を巻き上げた。


「ああぁぁぁ……」

「サトミ、大丈夫か!?」

「うん……大丈夫……何だか、力が漲ってくる感じがする……」



 土埃が晴れてきて、徐々にサトミの姿が見えて来る。


「サトミお姉さま、綺麗……」

「どうなっているんだ?あれは攻撃じゃ無かったのか?」

「サトミちゃんはドリアードなの!植物系の妖精だから、太陽光とは相性が良いの!」

「銀色のワイバーンは相手が悪かったなワッハッハッハ」

「何色だとしても、サトミなら楽勝だぜ」


 サトミの緑色の髪の毛はエメラルドグリーンに輝き、身体全体からキラキラと輝くオーラが出ている。

 そして、サトミの周りには色とりどりの草花が生え、更にいつもの大輪の花が2輪、サトミの両脇に生えている。

 その大輪の花の花びらは、太陽光を集めているのだろう、さっきの銀色のワイバーンと同じように、次第にその輝きを増している。


「カイト、喜んで。何だか出来そうな気がするよ!」


 サトミが銀色のワイバーンを指差すと、2輪の大輪の花は、その花びらを銀色のワイバーンに向けた。


「ソーラー…………!?」

「駄目だ!サトミ!言ってはいけない!!」

「そっか!わかった。じゃあ、お日様ビーム!!」

「お日様って……」



 銀色のワイバーンも太陽光を吸収してビームを放つ事が出来る。

 元々お日様ビームは銀色のワイバーンが放った物だ。


 銀色のワイバーンは、2輪の大輪の花から放たれたお日様ビームを吸収していたが、次第に鱗の隙間から煙が出て鱗も焦げてきた。

 吸収出来る量を遥かに超えてしまったようだ。


「ギャアオォォォォォォォォォ」


 銀色のワイバーンはサトミのお日様ビームに耐えきれず、背中から地面に落下した。



「サトミお姉さまが元に戻っていますわ」


 嬉しそうにチケットと宝箱を持って駆け寄ってくるサトミは、元の緑色の髪の毛に戻っていた。

 


「次はカイトだね。頑張って」

「カイト様頑張ってくださいですわ」


 俺の準備が整ったのを見ると、金色のワイバーンは大きく羽ばたいて飛び上がった。


「行くぞ金バーン」


 俺はライトニングショットを金色のワイバーンの額に撃った。


 キ――――ン


「弾かれた?」


 この後、聖、火、水、雷のライトニングショットを試してみたが、どれも弾かれてしまった。


「なるほどな、防御力に自信ありってか?」



「ガアオォォォォォ」


 金色のワイバーンが動いた。

 

 金色のワイバーンは急降下の後に尻尾を叩き付けてきた。

 俺は尻尾を避けながら、新月の刀で

尻尾を切断しようと試みるが、新月の刀はあっさりと弾かれてしまった。


「まだまだ修行が足りないようだ。そういえば、朝の日課もさぼり気味だしな……」


 ニ度三度と金色のワイバーンは急降下尻尾爆撃を繰り返してきたが、俺も避けるだけでは無い。


 尻尾を避けながら、俺は新月のナイフに魔力を送った。


 イメージするのは灼熱の燃え盛る炎の領域。



 魔力を込めた新月のナイフは眩い位に真っ赤に発光している。


 俺は上昇する金色のワイバーンに新月のナイフを投げた。

 新月のナイフは金色の鱗に弾かれるが、そんなことは関係ない。



「メルトダウン」



 ゴォォォォォォォォォ――――



 魔力が放出され、領域の中の金色のワイバーンは一気に灼熱の炎に包まれた。


 俺は新月のナイフを鞘に戻し魔力を込めていく。


 金色のワイバーンは炎に包まれたまま、急降下尻尾爆撃を繰り返してきた。


 そして、次にイメージするのは絶対零度の氷の領域。



 魔力を込めた新月のナイフは眩い位に青白く発光している。



 俺は先程と同様に、上昇している金色のワイバーンに新月のナイフを投げた。



「アブソリュートゼロ……」


 ピシッピシピシピシピシピシピシ



 また同じように新月のナイフは弾かれたが、魔力が放出され、領域に居る金色のワイバーンは、一気に凍りついた。


 翼まで凍りついた金色のワイバーンは飛ぶことができずに、上空から地面に落下して、その衝撃で金色の鱗に罅が入った。


 俺は新月の刀を金色のワイバーンの眉間に刺し、チケットと宝箱を手に入れてレクス達の元に戻った。



「カイト様、どうして……」

「聞くなマツリ、俺にも原理は良くわからん。昔、何かで読んだ事を試してみたら、上手くいっただけだ。知りたければグランに聞くといいぞ」

「わかりましたわ。グラン様ー」


 マツリはグランの所に走って行った。




 それぞれ手にはチケットを持って、薄暗い階段を降りて行く。

 静かだ……後ろが静かすぎる。


「どうしたんだ、バーグマン?元気が無いようだが大丈夫か?」

「あ、ああ……お前等の戦いを見て、俺達は打ちひしがれていたんだ。この街でトップクラスの冒険者だということに胡座をかいていた。どうやら俺達は天狗になっていたようだ」


 この世界にも天狗が居るのか?

 異世界だし、(オーガ)が居るんだから天狗が居てもおかしくは無いか。


「俺も今の戦いで修行不足を痛感したぞ。だから、それ程気に病む事は無いと思うぞ」

「はぁ……もういい、お前にはわからんさ。お前等、帰ったら今まで以上に特訓だ」

「「「「おう!」」」」


 何だかわからないが元気になったようだ。


「カイトって、そういう所があるよね」

「そうなのですか、サトミお姉さま?」

「うん、自分の事が全くわかって無いんだよ。だから周りの人は大変なんだ」


 何だかわからないが、俺の事?何かディスられる事したか?

 …………して無いな。気のせいだな。


 階段を降りきると、木製で両開きの扉があった。


 扉を開けると、自動で明かりが灯り、全員が部屋の中に入って扉を閉める。


 すると光の粒子が集まり11匹のカブト虫のようなモンスターが、横一列に整列して現れた。


 カブト虫型のモンスターの背には、鞍が取り付けてあり、チケットを差し込む為の穴もある。


「これに乗って次の浮島に行くようだな」

「マジでか?これに乗るのかよ?」

「大丈夫なのか?モンスターだろ?」

「ピットもガットもだらしないね。良いから早く乗りなよ」


 キャットに促されてピットとガットは渋々カブト虫型のモンスターに跨った。


 俺達も全員カブト虫型のモンスターに跨りチケットを差し込むと、カブト虫型のモンスターは、奥にある穴に向って歩き出した。


「こんな時はだいたいエルが先頭なんだな」

「活発な女の子って感じだもんね」

「エル様達には逆らえないですわ」


 エルが先頭で、グラン、レクス、マツリ、サトミ、俺、ピット、ガット、パット、キャット、バーグマンの順で穴の中に入って行った。


 穴は蒲鉾型になっていて、等間隔で明かりが灯っている。


「ハハッ、これは楽しそうだぜ!行くぜ、それっ!!」

「次はワシだな、ワッハッハッハー、おあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」

「次は私なの!―――――キャァァァァァ、あはははは…………」

「何だか楽しそうですわね。行きますわよ。――――いやぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」

「これは、あれだね。カイト」

「ああ、間違いないな。サトミはこういうのが好きだったな」

「うん、じゃあ、私の番だね――――サトミ、いきます!!」

「言うと思った……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ