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第63話 カイト、ダンジョンに行く〜6日目①

 昨夜は久しぶりの檜風呂に入り、レクス謹製の安眠、疲労回復ベッドで朝までぐっすりと眠った。

 サトミとマツリは、隣の部屋でまだ眠っているようだ。


 俺は朝の日課をする為に新月のコートを着てテントの外に出た。


「――――――スケルトン!?」


 焚き火の前に座って、火に薪を放り投げているスケルトンが居た。


 俺の声に気付き、此方を振り向いたスケルトンは立ち上がり、一礼してからまた、焚き火の前に座って、火に薪を放り投げた。


「何だこれは、何がどうなっているんだ?」


 俺は十分に警戒をしながら、スケルトンの横に座って、アイテムボックスからお茶を出し、スケルトンの前に置いて、俺も一口お茶を飲んだ。


 お茶を飲んで落ち着いて考えようとしたが、考えが纏まらない。


 横に座っているスケルトンは、カタカタ音を鳴らしてカップを取り、俺に軽く頭をさげてからお茶を飲んだ。

 飲んだのだが、顎の下から全て流れ落ちている。



 このスケルトンが特殊なのか?


 そう考えていると、カシャン、カシャンと足音をさせながら、剣と盾を持った2体の別のスケルトンが焚き火の前にやって来て、俺に一礼をした後、カタカタと顎を鳴らして、今来た方とは反対の方へ歩いて行った。

 その歩いて行った方からは、また剣と盾を持った2体の別のスケルトンがやって来て、焚き火の前に来ると、一礼をしてから顎を鳴らして、今来た方とは反対の方へ歩いて行った。


 そうだ!わからなければ聞けば良いんだ。

 俺は、お茶を一口飲んで、気持ちを落ち着かせてから、横に座っているスケルトンに聞いてみた。


「なあ、お前達はいったい何だ?此処で何をしているんだ?」

「カタカタカタカタカタカタ」

「そうか」

 スケルトンは此方を向いて何か言っているようだが、わからない……



 放っておく訳にもいかず、スケルトンとお茶を飲む。

 沈黙が辺りを支配して間もなく、サトミとマツリがテントから出て来た。


「――――スケルトン……と」

「カイト様?」

「ねえ、カイト?」

「何も聞くな。俺にも何がなんだかさっぱりだ」



 歩哨をしていたスケルトンが戻ってきて、俺とサトミとマツリ、そして、5体のスケルトンで、焚き火を囲みお茶を飲んでいる。


 顎の下から流れ落ちるお茶を指差して、カタカタ笑うスケルトン……


「いや、お前もだからな……」

「おう、早いな、カイ……ト?……」

「バーグマンさん、おはようございます」

「何をやっているんだ、お前等?スケルトンだろう、こいつ等?」

「ああ、俺にも良くわからん」


 “暁”のメンバーは昨夜と同じ場所で焚き火を熾し、朝食の準備に取り掛かった。


「俺達も朝食の準備をするか」

「ワッハッハッハ、起きているなカイト」

「グラン!それにエルとレクス。説明してくれ」

「ワッハッハッハ、このスケルトンはあれだ、お前が周りにばら撒いた骨だ」

「昨夜カタカタと音が鳴るから見に行くと、こいつ等がいたんだぜ」

「そして最後の1体が私達の目の前で組み上がったの!!」

「こいつ等には魔核が無くてな、その代わりにカイト、お前の魔力を感じたんだ。ワッハッハッハ」

「だから、試しに剣と盾を持たせて周囲の警戒をするように言ったら……」

「私達にお辞儀をして、歩哨に行ったの!!」


 昨夜ばら撒いた骨を見に行くと、明らかに隙間ができていた。

 残りの骨を見ると、頭蓋骨が無い。

 俺は、アイテムボックスから頭蓋骨を出して、ばら撒いた骨の上に置いた。


 カタカタカタカタ


 すると、1体分に必要な骨が頭蓋骨に引き寄せられてスケルトンが組み上がっていった。


「これは誰にでも出来るのか、バーグマンさん?」

「俺は知らない。こんな事は聞いたことも無いぞ」

「バーグマンさん、骨は持っているか?」

「ああ、いくつか持っている。オイ!お前等が持っている骨も出してくれ」


 “暁”のメンバーがマジックバックから骨を出して、バーグマンさんも出していく。

 その中には頭蓋骨も1つあった。


 カタカタカタカタ


 見る見る内に1体のスケルトンが組み上がり、バーグマンさんに一礼をした。


「カイト!!これは凄いぞ!凄い発見だ!!」

「そうか、誰にでも出来るんだな。魔核は無いし、魔力は……バーグマンさんの魔力だ。それに……何でモヒカンなんだ!?」


 モヒカンの意味がわからないが、もう一つ調べて見たい事があった。


「他に頭蓋骨は無いか?」

「確か、キャットが持っていたな。キャット、頭蓋骨を出してくれ」


 キャットが出した頭蓋骨を、俺がばら撒いた骨の上に置いて貰った。



 カタカタカタカタ


 俺が持っていた骨でも問題なくスケルトンが組上がった。


「どうやら頭蓋骨の持ち主がスケルトンのオーナーになるようだな」


 組み上がったスケルトンを見ると、魔核が無く、魔力はキャットの魔力で、ピンクのモヒカンだ。


「だから、そのモヒカンは何なんだよ!?」

「カイト、これはギルドに報告するべきだ。きっと賞金が貰えるぞ」

「ああ、それはバーグマンさんがやってくれ」

「賞金はどうするんだ?」

「それもバーグマンさんが貰ってくれて良いぞ。レクス、どうやったら戻るんだ?」

「念じてみるの!!」

「そうか、ご苦労だったな。戻っていいぞ」


 スケルトンは一瞬光ったと思ったら、そこには頭蓋骨が落ちているだけだった。

 俺は疑問に思い、頭蓋骨を一つ取り、念じながらゆっくりと投げてみた。


「スケルトン!」


 カタカタカタカタ


 頭蓋骨の下から各部位の骨が現れスケルトンが組上がった。


 バーグマンさんとキャットも同じように、頭蓋骨に戻し、またスケルトンにして確認をした。


「カイト凄いぞ!本当に俺が報告をしても良いのか?」

「ああ、任せる。俺は面倒くさいから頼むぞバーグマンさん」

「ねえカイト、他にもいっぱい骨があるんじゃない?」

「そうだな、この際だ、全部出してみるか」




 結果、スケルトンが132体、スケルトンバードが56匹出来上がった。


「軍隊が出来るぞ……」



 邪魔なので、全てアイテムボックスに戻し、朝食を終わらせて、俺達は次の浮島に向かった。


 岩山を降りて、森を抜け、草原に出た。

 気持ちの良い風が吹いている。


 目の前には、廃墟になった浮島があるが、ハーピーの浮島よりも低い場所にあり、若干見下ろす形になる。


「お宝の匂いがしますわ。ワクワク」

「確かに、何かありそうだな」

「しかし、カイト、どうやってあの浮島に行くんだ?」

「此処はダンジョンだから、何かしら方法がある筈だ。この辺りを探索してみよう」


 俺達は散らばって草原の探索を始めたが、案外すぐに見つかった。


「カイト様、カイト様、こっちですわ」

「マツリ、何か見つけたか?」


 俺達は皆でマツリの所まで走っていった。


「こ、これは!?」

「うん、カイトもそう思ったんだ。もしかしたら、だよね……」

「だとしたら、廃墟の浮島にもある筈だ」


 俺は島の縁ギリギリまで行き、目を凝らして廃墟の浮島を見た。

 探す物がわかっているから、それはすぐに見つかった。


「間違い無い。でかしたぞマツリ」

「エッヘン、私にはすぐにわかりましたわ。オホホホホ」


 マツリは胸を張ってたゆん、たゆん……いや、誇らしげに笑っている。


「だとしても、はいそうですかと、いきなり入る訳にはいかないな……スケルトン!」


 俺はスケルトンを1体呼び出した。


「スケルトン、この土管の中に入ってくれ」


 スケルトンは何の迷いもなく土管の中に入って行った。

 そして俺達は廃墟の浮島にある土管を見に行くと、丁度スケルトンが土管の中から出て来る所だった。

 土管から出てきたスケルトンはこちらに手を振っている。


「行くぞ、サトミ、マツリ」

「うん」

「はいですわ」

「カイト、赤い帽子を被らなくて良いの?」

「言うなサトミ。言ってはいけない」




 俺達は全員無事に廃墟の浮島に着いた。


「カイト様、お宝探しですわ!!」

「待て、マツリ!!」

「きゃっ!?」


 ギリシャの神殿風の円柱がある場所に向かって走り出したマツリに待つように言ったが、遅かったようだ。


「痛たたたた……落とし穴ですわ」

「あると思ったんだ。他にも何かあるかもしれないから、足元には気を付けろ」



 落とし穴に気を付けながら、神殿風の建物に行く間にある小さな建物も調べて行く。

 殆ど半壊状態で中にはテーブルと椅子くらいで何もない。

 ダンジョンなのだから、人が生活していたはずが無いのは、わかっているが、ついつい探索したくなってしまう。



 神殿風の建物は小高い丘の上にあり、どうやら島の中央に位置しているようだ。


 彫刻が施された円柱が数本残っているだけで、屋根は崩れて瓦礫がそこかしこに散らばっている。四角い石畳の床には、大きな魔法陣が書かれているが、亀裂が入っていたり、屋根の瓦礫が刺さっていたりで、機能しないだろう。


「カイト、此処に階段があるよ」

「おっ宝♪おっ宝♪ですわ!」

「地下室があるのか。降りてみるぞ」


 サトミもマツリも、そして“暁”のメンバーも異存は無いらしく、俺の後に続いて階段を降りて行く。


 壁にはランプが等間隔で付いていて、人が通ると点灯する仕組みになっているようだ。


 少し降りると踊り場があって、そこには木製の扉があった。


「開けるぞ……」

「ワクワクですわ!」

「マツリちゃんって緊張感が皆無だね」


 扉を開けて中に入ると、机と椅子があるだけの小さな部屋だった。


「カイト様、お宝の地図ですわ」


 机の引き出しを物色していたマツリが、丸めて紐で結んである羊皮紙を持って来た。


 マツリから羊皮紙を受け取り、開いて見ると、文字と絵が浮かび上がる。


 これによると、魔法陣での召喚に失敗して、邪悪な悪魔にこの地は壊滅させられたとあるが、此処はダンジョンだ。きっと、そう言う設定なんだろう。


「俺達は地下に降りて行き、階毎に居るモンスターを倒してチケットと宝を手に入れて、この浮島から脱出しろと書いてあるぞ」


 俺は羊皮紙を元の引き出しに戻し、まだ何か物色しているマツリの手を引いて部屋から出た。


読んで頂きありがとうございました。

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[一言] >「カイト、赤い帽子を被らなくて良いの?」 緑の帽子も忘れないで?。
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