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第59話 カイト、バローの街の観光に行く

「レクス、あの元の世界に帰れる箱だが、対象がマツリでも帰る事はできるのか?」

「うん、経緯はどうあれ、世界を渡った事には変わりがないから、問題なく帰る事が出来るの!!」


 朝起きて、服を着ている最中、レクスに例の箱の事を聞いてみた。

 レクス、グラン、エル、マックニャンは、自分達の部屋があるのに、何時も俺の部屋に来ている。



 俺が食堂に降りて行くと、既に朝食の準備はできており、全員が揃っていて、俺を待っていたようだ。


「済まない、待たせたな」

「いいえ、皆んな今来たところですよ」

「そうか、アマンダさん。それじゃ頂こうか。いただきます」

「「「いただきます」」」


 朝の献立は、お粥、じゃが芋と玉ねぎの味噌汁、甘い卵焼き、焼いた干し魚、白菜の浅漬けだ。


「ララさん、とても美味しいですよ」

「有難うございます。でもこれは、カイト様のレシピがあればこそです」

「レシピがあっても出来ない人もいますからね。ララさんの腕前は確かだと言うことです」


 俺の拙いレシピでここまで美味しい料理が出来るんだからな。


「初めて食べる物ばかりですけど、本当に美味しいですわ」

「こんなに美味しいものばかりで太らないかしら?」

「この献立なら、食べ過ぎなければ太らないぞ」

「太ったら一緒にポケット草原を走ろうね、ミウラさん、それとアマンダさんも!」

「えっ!?わ、私もですか、サトミちゃん!?」




 楽しい朝食も終わり、リビングでフェルナンさんとメロディーちゃんが、お茶を入れてくれた所で、今日の予定を話した。


「今日はダンジョンを休みにして、バローの街を見て回ろうと思うんだが、アマンダさんとミウラさんはどうする?」

「私はカイ……」

「私達は屋台をやります!売上が日に日に上がっているのに休んでなんかいられません!」


 ミウラさんが口をパクパクさせて、アマンダさんを見ている。


「わかった。マックニャンはどうするんだ?」

「私は屋台の護衛に行くニャン」

「そうか、頼んだぞマックニャン」

「任せてニャン!」


 お茶を飲み終わり、アマンダさん、ミウラさん、マックニャンは商業ギルドに向かった。





「骨ですか?特に使い道は無いので、ギルドでも買い取っていませんから、持って帰る人はいませんね」

「はぁ、そうですか……」


 俺達は冒険者ギルドに来ている。

 大量にある骨の使い道を聞くためだ。

 だが、使い道が無いし、売れないと来た。


「その辺に捨てる訳にもいかないし、アイテムボックスの肥しだな……」



 仕方が無いので冒険者ギルドを出ようとしたら……


「カイトじゃないか!」

「あっ、パック……」

「バーグマンさんだよ、カイト」

「おはようございます、バーグマンさん」

「お前、忘れていただろう……」

「アハハハ」

「まあ、良いけどな。ダンジョン攻略は進んでいるか?」

「ああ、今は30階層だ」

「はっ?」

「30階層だ」

「もう30階層か!?俺達が何年も掛けて30階層まで行ったのに4日でなんて信じられん!俺達も30階層を攻略中なんだが、どうしても越えられなくて、何度も戻ってやり直しをしているんだ」


 何処が超えられないんだろう?

 ロッククライミングか?それともあの洞窟か?


「どうだろうか?明日は俺達“暁”と一緒に30階層を攻略しないか?」

「俺は構わないが何人居るんだ?」

「トップの精鋭5人だ」



 明日の朝、30階層の入口で待ち合わせて、一緒に攻略する事になった。


 バーグマンさんと冒険者ギルドの前で別れて、裏通りの道を教会を探しながら散策した。


 街の人達の為の小さな商店が所々にあって小さな子供からお年寄りまで、幅広い年代の客が出入りしている。


 主に食料品と日用雑貨の店だが武器、防具の店もあった。


 レクス、グラン、エルは何時ものように、店先に並んだ商品を見たり、窓や出入り口から中を覗いたりと、楽しそうに走り回っている。




 一瞬だが、狭い路地に入っていく4人の人影が目に入った。

 何故か気になり、レクス達が覗いている商店の前で立ち止まり、様子を伺っていると、4人とは別の、黒いマントを羽織って、フードを目深にかぶった人物が出てきた。

 そして、その人物は反対側の路地に入って行った。


 俺は、黒いマントの人物を追いかけるように、路地に足を踏み入れたが、その人物は転移でもしたかのように路地から消えていた。


 反対側の路地を振り返って見ると、行き止まりの狭い路地で、そこに入って行った4人も消えていた。


「どうなっているんだ?あれは確かにポンコツカルテットだったよな……としたら、あの黒いマントはミスターPなのか?」

「どうしたの、カイト?」

「サトミ……いや、何でもない。あそこに見えるのは教会の屋根のようだな。行くぞ」

「うん、また寄付をするんだね」



 ミスターPにポンコツカルテット。


 俺は軽く見ていたけど、得体の知れない組織が裏で何かをしているのかも知れない。

 尤も俺には全く関係ない事かも知れないしな……

 政治的な事とかだったら、関わりたく無いしな……

 うん、今見た事は忘れよう。




 バローの教会にも孤児院が併設されていた。

 俺とサトミとマツリは塀の外から子供たちを見ている。


「うわー、なんか凄いね……」

「大きな子も、小さな子も熱心に取り組んでいますわね」

「何だよこの光景は、異常だぞ」


 そこに見えている子供達で、痩せている子供は一人もいない。

 かと言って太っている子供も、そこにはいない。


「まるで虎になる為の訓練施設のようだな……」

「カイト、それって○の穴の事?古くない?」

「…………」


 孤児院の敷地の中では、子供達が腕立て伏せ、腹筋運動、スクワット等の筋トレや、格闘の模擬戦、剣や槍の素振り等を熱心に行っている。


「此処がダンジョンの街だから、鍛えているんだろうね」

「この鍛え方はアンドレ様が関わっている気がする……」



 俺は教会に入って、お祈りを終わらせ、寄付金箱に金貨を10枚入れてから教会を後にした。


「何だか嬉しそうだね、カイト」

「ああ、子供達が活き活きとしていたからな。冒険者になって、ダンジョンで稼ぐという確固とした目標があるからなんだろうな」




 屋台で売られていた、ダンジョンミルクとダンジョンクッキーを食べながら、何か珍しいものは無いかと歩いている。


「ミルクはダンジョンのドロップ品だろうけど、クッキーは何処がダンジョンなんだろうね……」

「ダンジョンの街で売られているからじゃないか?」

「なるほどね。それならアマンダさんが売っているのもダンジョン焼き魚になるね。アハハハ」



 レクス、グラン、エルが難しい?顔をして見ている一軒の店の前で、俺達は足を止めた。


 そこは看板もなく、営業しているのか休業しているのかも、わかりにくい店だが、貴族らしき人や身なりの良い商人風の男、更に、見ただけでわかるような高価な装備を見に付けた高ランク冒険者らしきパーティーが出入りしていた。


「カイト様、此処はどのような商店なのでしょう?」

「だいたい想像は付くがな……お金持ちの人が利用する所だ」

「と言う事は……私の世界にもありましたわ。美味しいお料理を食べて、身体の疲れを癒やしてくれる人や、爪を研いでくれる人が居る高級店ですわね。思い出しただけで涎が出て来ますわ」

「マツリちゃんの世界にはそんなお店があるの?複合サロンだね!」

「お前、お金持ちだったのか?」

「私はヴァンパイア族の伯爵家令嬢ですわ」

「此方の世界ではモンスター扱いで何だか申し訳無いな……」

「私の世界でもヴァンパイア族はモンスターですわよ。他にもウェアウルフ族やマーメイド族なんかも居ますわ。勿論、人族も。その高級店は人族が経営しているのですわよ」

「転移者か転生者だな……」

「うん、きっとそうだね。でも、面白そうな世界だね」

「とても良い所ですわ」


 俺達が話している間も、レクス、グラン、エルは何やら相談をしている。


「レクス、どうしたんだ?此処に何かあるのか?」

「カイトくん、此処に転移者が居るの!」

「そうか………こんな所には入りたくはなかったが、レクスは助けたいんだろ?」

「カイトくんお願いなの!」

「入るぞ、サトミ。それとマツリ、此処は奴隷商だ。恐らく非公認のな」





「いらっしゃいませ、初めて見るお顔ですが、どなたかの御紹介でしょうか?」


 高価な服やアクセサリーを身に纏った40代〜50代の男がカウンターの向こうから声を掛けてきた。


「いや、紹介は無い」

「申し訳御座いませんが、当店では御紹介の無い方の入店はお断りさせて頂いておりますので、どうかお引き取りを」

「旅の途中の冒険者なんだが、此処に出入りしている客を見て、当たりを付けてきたんだがな。旅をする上でどうしても奴隷が必要なんだ。この店の事情も、だいたい察しは付いているつもりだ」

「そうですか……では、そちらにお掛けになって、暫くお待ち下さい」


 店員の男は体格の良い用心棒らしき二人の男に、目線で合図をして奥に入って行った。

 二人の用心棒は俺達を監視しているようだ。



 そして、暫く待つと、少し太り過ぎではあるものの、物腰の柔らかい初老の男が、営業スマイルで俺の前にやって来た。


「私はこの店を営んでおりますディオンと申します。それで、奴隷を欲していると言うのは貴方ですかな?」

「ああ、そうだ。俺は、Bランク冒険者のカイトだ」

「そうですか、それで、カイト様はどのような奴隷がお望みでしょうか?」

「簡単な計算が出来れば良いが、欲を言えば、早く正確に、が付くな。取り敢えずどのような奴隷が居るか見せてくれ」

「わかりました。では、此方の部屋でお待ち下さい」


 女性の従業員がお茶を3人分入れてくれて、それから暫く待つと、灰色の貫頭衣を着せられた、老若男女4人が、ディオンに連れられて入ってきた。


「私は以前冒険者をやっていまして……」

「ああ、自己アピールは良いから、此方の質問に答えてくれ。先ずはオマエからだ」


 俺から見て右側の女性に質問をした。


「4が9個で幾つになる?」


 指を使って数えている。この人では無いな。


「次は隣のお前だ。8が6個で幾つになる?」




 簡単な掛け算だが12人に質問をして即答出来た人は居なかった。


「カイト様、私でも即答するのは難しいですな……では、次に連れてくる3人で当店に居る最後の奴隷になります」


読んで頂きありがとうございました。



ディオン(奴隷商人)

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