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第58話 カイト、ダンジョンに行く〜4日目③

 俺達がロッククライミングをしていると鳥型のスケルトンが襲って来た。


「骨しか無いのに、なんで飛べるんだ?ホーリーショット!!」

「魔力で飛んでいるんだと思うよ。はっぱ!!蔓鞭!!」

「私にかかって来るなんて、身の程をわきまえなさい……チャームですわ!!」


 俺達は岩壁を登りながら鳥スケルトンを迎撃する。

 俺はホーリーショットで、サトミは葉っぱと蔓を使い、マツリはチャームで仲間割れをさせている。



 あらかた鳥スケルトンを倒して、半分ほど登ったところで、レクス、グラン、エルに、声をかけた。


 レクス達は、まだ岩壁を登っておらず、鳥スケルトンを下から攻撃して倒している。


「レクスゥゥゥ登れそうかぁぁぁ」

「私達はぁぁぁ大丈夫なのぉぉぉ!」

「今からぁぁぁ私等もぉぉぉ登るぜぇぇぇ」

「ワッハッハッハァァァァ行くぞぉぉぉ」


 レクス、グラン、エルは、いきなり弾丸のように岩壁に向かって走り出し、そのままの勢いで垂直に切り立った岩壁を駆け上ってきた。


「まったく……物理法則無視かよ……」


 そして俺達を追い越し、出っ張った岩も逆さになって走り抜けて、頂上まで登り切った。


「ななな何ですの?あのお人形達は!?初めて見た時から本能で逆らってはいけないというのは、わかっていましたけれど……それを使役するカイトさん……いえ、カイト様って……」


 マツリがぶつぶつ呟きながら、何やら考え込んでいるようだが、この岩壁を登るのが先だ。



 出っ張った岩も何とか乗り越えて、俺達は頂上にたどり着いた。

 やり切った達成感で気分が高揚している。


「やったな!サトミ、マツリ。俺達は登り切ったぞ!!」

「カイト!!」

「カイト様!!って、さぶ!!寒いですわ……ブルブル」

「雪山だからな、そんな格好をしていると風邪を引くぞ」


 マツリは蝙蝠になり、次に人型になると分厚い黒いコートを着ていた。


「便利だな、お前……」


 周りを見回すと一面が白銀の世界だ。空からはチラチラと雪も降っている。


「カイト、あそこに山小屋があるよ」


 サトミが指差した方角に山小屋が見えた。




 山小屋には自由に出入り出来るみたいで、一夜を過ごすのに充分な量の薪もある。

 小屋の中をぐるりと見渡すと、壁に立てかけられた簡単な作りのスキー板とスノーボードと舵付の橇が目に入った。


「もしかして、これを使ってあの急斜面を滑り降りるのか?」


 岩壁を登って来た反対側は、かなり急な斜面になっていて、所々に障害物になる木も生えていた。


「うわー、スキーなんて久しぶりだなぁ」

「この世界にもスキーやスノボがあるんだな」




 サトミがスキーを選び、俺がスノーボードを選ぶ。

 スノーボードは学生の時以来だが、問題無いだろう。

 必然的にマツリが橇になったのだが、当然乗ったことが無いだろうから、レクス、グラン、エルに任せよう。



 暫く緩やかな斜面で練習を兼ねて、スキー板、スノーボード、橇の状態を把握した。

 その後、休憩の為に山小屋に戻ると、持ち出した筈のスキー板、スノーボード、橇が、新たに壁に立てかけられていた。


「やっぱり、滑って降りるのが正解のようだな」

「他の方法で降りたら、またここに戻されるのかな?」

「―――――恐らく戻されますわ」

「経験者の言葉は重いな……」





 橇のスピードに合わせる為に、マツリ、レクス、グラン、エルの乗る橇を、俺とサトミが追い掛けて行く。


 橇の舵はエルが、ブレーキはグランが担当しているようだ。

 レクスは周囲の警戒をしていて、マツリは橇にしがみついている。


 俺とサトミはターン毎に位置を入れ替えながら、今のところ障害物の無い急斜面を真っ直ぐに滑る橇と、付かず離れずの距離を保っている。


「スノータートルなの!!」


 レクスの指す方向を見ると、雪を巻き上げながら3m程の白い亀が、猛スピードで迫って来ている。


 甲羅で雪の上を滑り、曲がる時は手足を甲羅から出して器用に舵を取り曲がっている。


 猛スピードで迫って来たスノータートルは、何時でも迎撃出来るように、身構えていた俺の横を並走しながら、甲羅から首を出し、黒い瞳で俺達を観察しているみたいだ。


「クァ」


 一声鳴いたスノータートルは、シュプールを描きながら滑っているサトミと俺に合わせて滑っている。


「クァ、クァ、クァ」

「うわ〜、可愛いねカイト」

「どうやら、俺達と滑って、遊んでいるみたいだな」

「カイトくん、スノータートルは薬草が大好物なの!」

「ん?そうなのか?」


 俺はアイテムボックスから薬草の束を出して、雪の上を軽快に滑っているスノータートルの前に投げた。

 スノータートルは首を伸ばして薬草をキャッチすると、目を細めて美味しそうに食べている。


「可愛いですわ!可愛いですわ!カイト様、私にもやらせて欲しいですわ!」


もしかしたら、これで少しでも昏い感情を追い出せるかもしれないな。

 それならと、俺は橇に近付き、薬草の束を大量に橇の中に押し込んだ。


「一束、二束じゃあ足りないだろうからな。マツリに任せるぞ」



「クァ、クァ」


 スノータートルは後ろ足でブレーキを掛けながら、疎らに生えている木を避けて滑っている橇の後ろにピッタリと付き、マツリの手から薬草を貰って食べている。


 マツリもスノータートルも嬉しそうだ。



「何だ!?」

「クァ!?」


(マスター、スノーウルフの群れが左右から来ていますよ)


 俺が気配を感じたのと同時にコンセからの警告があった。


「サトミ、スノーウルフだ。滑りながら戦えるか?」

「ちょっと厳しいかも……」


 スノーウルフは俺達の左右から徐々に距離を詰めている。

 真っ白の毛並みだから雪を背景にするとわかり辛いが、最低でも30匹は居るだろう。


 そのまま斜面を滑り終わってから戦いたいが、そうはさせてくれないようだ。


 

 俺はサトミをフォローしながら、ライトニングショットで、襲ってきたスノーウルフを倒していく。


「邪魔をしないで頂きたいですわ!」


 マツリは炎の槍を巧みに使い、スノーウルフと戦っている。


「フェンリルなの!!」


 雪山だからだろうか、何時もよりも大きなレクスのフェンリルが、スノーウルフを凌駕する。


 レクスとマツリが居れば橇は大丈夫だな。


 サトミも葉っぱを飛ばして戦っているが、寒いからなのか精細に欠けている。

 それを感じたのか、スノーウルフはサトミに集まり始めた。


「サトミ!」

「サトミお姉さま!!」


 俺と、蝙蝠に姿を変えたマツリがサトミのフォローに入るよりも早く、スノータートルが高速回転でスノーウルフを次々に弾き飛ばして倒していった。



 数を一気に減らしたスノーウルフは、その場で立ち止まり、もう俺達を追って来なくなった。


「凄いね!スノータートルって強いんだね。ありがとう、スノータートル」

「マツリ、薬草をたっぷりとやってくれ」

「わかりましたわ。さあ、沢山お食べなさい」




 疎らに木々が生えている地帯を抜けると、更に斜面が急になり、橇のスピードも上がった。

 俺とサトミは直滑降で橇を追いかける。


(マスター、この先は崖になっていますよ!右に進路変更を推奨します)


「エル!この先は崖だ!右に曲がれ!」

「わかったぜカイト!」

「ワッハッハッハ、崖が見えたぞ!これは、ぎりぎりになりそうだ」


 橇は何とかぎりぎりで崖を回避して右の斜面を滑り降りて行った。

 俺とサトミは危なげなく橇の後に続く。




「なんとなくだが、さっきの崖下に続いているようだな」

「カイト、急カーブだよ!」


 左下を見ると山肌を縫うように道があり、ヘアピンカーブの連続になっている。


「このスピードで橇は大丈夫なのか?」

「レクスちゃん達なら大丈夫なんじゃない?」

「それもそうだな」


 橇は最初のカーブに差し掛かった。


「どうやったら、橇でドリフトができるんだよ……」


 エルとグランのコンビネーション?で、ヘアピンカーブをドリフト滑走?で次々にクリアしていく橇に離されないように、俺とサトミは必死について行った。





「此処でスノータートルとはお別れだな」


 俺達の目の前には洞窟が大きく口を開けている。

 さっき右に迂回した崖下の洞窟だ。


 この辺りには雪は積もっていなくて、スノータートルは普通の亀のようにゆっくりとしか動けなくなっている。


 俺達は、スノータートルに手を振って洞窟に入って行った。


 洞窟に入って最初に目にしたのは、“休憩室”の札が掛かった両開きの扉だった。


「サトミ、マツリ、こんな所に休憩室があるぞ」

「カイト、中を見てみようよ」


 扉を開けると、大きなテーブルと椅子が置いてあり、簡易ベッドまで設えてあって、隣の部屋には転移陣があった。

 この部屋は安全地帯になっているようだ。


「そう言えば、もう夕方になる頃じゃないかな?」

「そうだな、サトミ。今日はここまでにして、新月の館に帰ろうか」

「えっ!?帰るのですか?私はどうすればいいのでしょう?」

「マツリ、お前も一緒だ」




 俺達は新月の館に転移した。




「お帰りなさいませ、カイト様」

「ただいま、フェルナンさん」

「そちらの方は?」

「ヴァンパイアのマツリです。彼女の部屋を用意しておいて下さい」

「畏まりました。アマンダ様とミウラ様もお帰りになっております」



 2階のリビングにアマンダさんとミウラさんが居た。マックニャンも一緒だ。


「お帰りなさいカイトさん、サトミちゃん。そちらの方は?」

「ただいま、アマンダさん、ミウラさん。彼女はヴァンパイアのマツリだ」

「新しいお仲間ですか?」

「ああ、そうだな……マツリは少し事情があって暫く行動を共にする事になった」

「カイトさん、彼女がヴァンパイアでしたらテイムモンスターの登録をするのですか?」

「テイムモンスター?」


 サトミがテイムモンスターについて、マツリに説明をした。


「カイト様が御主人様に、そしてサトミお姉さまと一緒なのですね?それでしたら是非私もテイモンスターにして頂きたいですわ」



 ミウラさんがマジックボードで何やら操作してテイムモンスターの証を手渡してくれた。


「マツリ、これを身体に貼るのだが、何処が良いか希望はあるか?」

「サトミお姉さまと同じが良いですわ」


 サトミと同じと言うことで、左肩にテイムモンスターの証を貼った。


 マツリはサトミとお揃いが嬉しいのだろう、たゆん、たゆん、いや満面の笑みで、飛び跳ねながら喜んでいる。


読んで頂きありがとうございました。

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