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第57話 カイト、ダンジョンに行く〜4日目②


「美味しいですわ!こんなに美味しいお料理は初めてですわ!」


 テーブルの上にはワイバーンのローストを薄切りにしてレタスとマヨネーズを一緒に挟んだサンドイッチと、ポテトサラダ、鶏の唐揚げ、カットフルーツが乗っている。

 全てララさんのお手製だ。


「ララさんもカイトのレシピで、いろいろ出来るようになったから、カイトも冒険に専念出来るね」

「ああ、ララさんには、本当に助かっているよ。まだまだレシピがあるから帰ったら渡しておこう」



 食事が終わり、30階層に続く階段を降りた。

 目の前には深い峡谷が横切っており、こちら側の木と峡谷の向こう側の木に太いロープが二本、上下に結ばれて渡してある。


「このロープで向こう側に行けば良いんだな」

「私はこのようなロープを渡るのは嫌ですわ」


 ヴァンパイアのマツリは姿を数匹の蝙蝠に変えて飛んで行った。


「キャァァァァー、目が回りますわぁぁぁぁ」


 すると、峡谷の中程まで飛んで行った蝙蝠が突然の突風で、こちら側に吹き飛ばされて戻ってきた。


「どうやら、ズルは出来ないようだな」

「酷い目にあいましたわ……」


 人型に戻ったマツリは目をぐるぐる回している。


「行くぜ!レクス、グラン」


 エルを先頭にレクスとグランはロープの上を走って危なげなく、渡りきった。


「器用だな……俺達も行くぞ」


 俺は上のロープを掴み、下のロープに足を乗せて、横歩きで渡り始めた。


「かなり、しっかりしているな。これなら三人同時に渡っても大丈夫そうだ」

「それなら私達も行くね!さあ立って、行くよマツリちゃん」


 目を回して座り込んでいたマツリを立たせてロープを持たせ、最後にサトミがロープを掴んだ。


「ひぃぃぃぃ、揺れますわぁぁ!!」

「三人でタイミングを合わせるんだ」

「マツリちゃんなら落ちても蝙蝠になれば良いんだよ」

「はっ!そうでしたわ」

「カイト、マツリちゃん、イッチ、ニッでいくよ!ハイッ、イッチ、ニッ、イッチ、ニッ、イッチ、ニッ、イッチ、ニッ」


 サトミの掛け声で酷い揺れも無く、俺達はタイミングを合わせ、何とか渡りきってレクス達と合流した。





「サトミ、スケルトンだ」


 森の中を進んで行くと、モンスターが現れ始めた。

 サトミは、蔓と葉っぱで、マツリは鋭い爪と剛力で、俺は新月の刀でモンスターを倒していった。




「サトミ、これはあれだな」

「うん、巨大迷路だね!」

「きょだいめいろ?それは何でしょう?」

「入ってみればわかるさ、行くぞ」


 巨大迷路の入口はアーチ型になっていて、両脇にはリビングアーマーの古びて苔生した石像が立っている。


「左手を壁に付けて歩くと良いって聞いたことがあるよ」


 そう言ってサトミは左手を壁に付けて歩き始めた。


 時々徘徊しているスケルトンやゴーストを倒しながら、俺達は迷路の中を歩いた。


「また行き止まりだね」

「待て、何かあるぞ」


 引き返そうとしたサトミを止めて、壁が凹んでいる場所を見た。

 そこには壁と同じ色の地味な宝箱が収まっていた。


「宝箱だね、カイト!何が入っているのかな?」

「わくわく、わくわくですわ」

「開けるぞ、念の為下っていろよ」

「だったら私が開けるよ、カイト」


 サトミが指先から蔓を伸ばし、器用に宝箱の留め具を外して、蓋を開けた。


「普通に宝なんだね」

「何を期待していたんだ、サトミ?」

「うわーっ、金銀財宝ですわ!!」

「お前はモンスターなのに嬉しいのか?何に使うんだ?」

「ワッハッハッハ、楽しそうだな、カイト」

「カイトくんが楽しそうだと、私達も嬉しいの!!」

「どっちかと言うと、カイトは呆れた顔をしているぜ。そんなカイト達を見て楽しんでいるのは私達の方だと思うぜ」

「ウィンウィンなの!!」


 なんか違うような気もするが、レクス達が楽しんでいるのなら良いか。


 俺は宝箱をアイテムボックスに入れて、迷路を進むサトミに続いた。



「あっ、カイト、この先に行くには、あのリビングアーマーを倒さないと行けないみたいだよ」

「私が行きますわ!」


 昔、映画で見たのと同じように、マツリは一瞬でリビングアーマーの背後に回った。

 まるでテレポートでもしているようだ。俺でも残像しか見えなかった。


 リビングアーマーの背後に回ったマツリは鋭い爪で背中を貫き魔核を掴んだまま胸まで貫通した。

 そして手に持った魔核を粉々に握り潰し、リビングアーマーは光の粒子になって消えた。

 一連の動作に淀みが無く、ここまで一瞬の出来事だった。


「フフン」


 マツリは、胸を張って得意げだ。

 大きな胸がたゆん、たゆんしている。


「凄いなマツリ、一瞬で倒したじゃないか」

「これくらい、なんてことはありませんわ」


 更に得意げになり、大きな胸を揺らしている。


「よし!マツリのおかげで通れるようになったから、先に進むぞ」


 俺は褒めて伸ばすタイプだ。

 マツリは嬉しそうに、たゆん、たゆん、いや、ニコニコしている。




「また行き止まりだよ。そして宝箱を発見!また私が開けるね」

「今度は私が開けたいですわ」

「うん?良いよ。気を付けてね、マツリちゃん」

「おっ宝♪おっ宝♪ですわぁ」


 マツリは嬉しそうに宝箱の留め具に手を掛けて、カチャリと上に跳ね上げた。


「おっ宝♪おっ宝♪おっ宝♪ウフフ」


 ――――――――ボカァァァン!!


「ケホッ、ケホッ、ケホッ…………」

「ケラケラケラケラケラ」

「何だ、あの虫は?ホタルっぽいけど爆発したよな?笑いながら飛んでいったぞ!?」

「あ~あ、マツリちゃん、顔がまっ黒だよ。ホタルっぽい虫に笑われたね……」

「な、な、な、何ですの!?ケホッ、ケホッ、ケホッはっ!!お宝は!?」

「いや、お前……お宝どころじゃ無いだろう」


 俺はアイテムボックスから鏡を出してマツリに渡した。


「へ?これが私……うぅぅぅ、あの爆発ホタル、今度出てきたら血の一滴も残さず吸ってやりますわ!!」


 マツリの顔は煤で真っ黒になり、髪の毛はボサボサになっている。


「カイトさん……顔を洗いたいですわ……」

「そうだな、レクス、綺麗にしてやってくれないか?」

「うん、わかったなの!…クリーン!」


 レクスの魔法で、顔も髪の毛も綺麗になったマツリだが……


「マツリ、頭のてっぺんにアホ毛が跳ねているぞ」

「あっ!何ですの?元に戻らないですわ!?」


 アホ毛の上から、いくら押さえても、ぴょこんとすぐに跳ねて、元に戻らなくなっている。


「暫く押さえていたら元に戻るんじゃないか?」

「わかりましたわ」



 頭を両手で押さえているマツリを連れて、俺とサトミとレクス達は迷路を進んでいった。




「カイト、出口だよ!」


 アーチ型の出口の先には森の木々が見えている。


「やっと出られるな……」


 出口に近づくと、横の通路から首無し騎士のデュラハンが現れ俺に槍を突き付け、勝負を挑んで来た。


「俺もデュラハンと戦ってみたかったんだ。行くぞ!」


 デュラハンは首無し馬を駆って一直線に俺に向かってくる。

 俺は、新月の刀を抜いてデュラハンに向かって走った。


 デュラハンの手前で、地を蹴り大きく飛んだ俺に、デュラハンは素早く反応して、槍を横薙に振るって来たが、その槍を新月の刀で切り飛ばし、そのまま上段から振り下ろした新月の刀で、デュラハンを真っ二つにした。


『見事だ……』


 デュラハンは光の粒子になり、消えた後には、穂先が赤く輝く美しい槍が落ちていた。

 俺がその槍を拾って魔力を流すと、穂先から炎が吹き出し、真っ直ぐに突き出すと、炎がファイアボールとなり、迷路の壁を粉々に砕いた。


「凄い槍だな……マツリ、槍は使えるか?」

「槍ならば、私の右に出る者などいませんわ」


 本当かどうか疑問だが、使える事は確かなんだろう。

 俺は炎の槍をマツリに持たせた。


「カイトさん、私が使っても良いのですか?」

「ああ、俺には新月の刀とナイフがあるからな。サトミに炎は使えないし、マツリが使ってくれ」

「ありがとうございます。大切に使いますわ」

「レクス、後で何か付与出来ればしてやってくれないか?」

「了解だよ、カイトくん!!」


 多分、不壊と帰還あたりを付与するんだろうな。




 目の前には50mは、ゆうにありそうな、絶壁が唆り立っている。

 しかも、ご丁寧にわざとらしく、手足サイズの窪みが、あちらこちらにあって、どうぞ登って下さいと言わんばかりだ。


「ロッククライミングだな……」

「うん、ロッククライミングだね……」


 途中にいくつか、休憩できそうな場所もあるが、最大の難関は最後の岩の出っ張りだろう。


「マツリ、飛んで行ってみるか?」

「叩き落とされたくないので、やめておきますわ」


 どうやらマツリは学習するようだ。


 そして、アホ毛を元に戻すのは諦めたようだ。


「登るぞ!」


 俺とサトミとマツリは各々最初に手を掛ける場所を選び、ゆっくりと登り始めた。


読んで頂きありがとうございました。

次回は週末に更新したいと思います。

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