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第53話 カイト、ダンジョンに行く〜3日目①

サトミ「ねえカイト、今まで出会った人達と、また会えるのかな?」


カイト「さあ、どうかな?皆んなそれぞれ忙しいだろうからな。縁があったらまた会えるんじゃないか?」


サトミ「カイトは出会った人達の事、皆んな覚えてる?」


カイト「・・・おっと、次の話が始まるぞ!」


サトミ「・・・・・・」

 屋台に必要な物を馬車に積み込んで出発したアマンダさんとミウラさんを見送って、アンドレ様、パトリックさん、サトミ、レクス、グラン、エルを連れて、ダンジョンに転移した。


 ―――――――昨日の続きだ。



 ダイフクを召喚して、砂漠の階層を突き進む、途中でデザートゴブリンが襲って来たが、デザートが付いてもゴブリンはやはりゴブリンだ。

 サトミの葉っぱだけで魔石にドロップした。



「カイト、砂漠はもう飽きたよ」

「同感だ。さっさと砂漠を抜けよう。ダイフク、スピードアップだ!」


(わかった!行くよー!!)


「おおー、これは良い。このスピード、あっという間に流れる景色、風との一体感、もっとだ!もっと早く!このスピードの先には何があるのだ!?」


 アンドレ様が狂ったぞ……スピード狂だったのか?

 何故、セリフの度に筋肉を膨らませるんだ?


 パトリックさんは顔面蒼白でダイフクにしがみついている。



「ポポォォォォォ!ポォォォォォ!」


「カイト、キナコが帰って来たよ!」

「あの誇らしげな鳴き声は、克服したみたいだな」

「凄く嬉しそうだね」

「ああ、そうだな。キナコ!こっちだ!あ、いや……あっちだ!」

「ポッ!?」


 此方に近づいたキナコだが、匂いが酷い……


「レクス、キナコを綺麗にしてやってくれ」

「了解なの!……クリーン」


 レクスの魔法で綺麗になったキナコは、笑顔?で俺の前まで歩いてきた。

 俺はキナコの首を撫でてやった。

 

「ピッカピカになったな、キナコ」

「ポポーポポー!」

「キナコ、良かったね」

「ポポー!」

「キナコも綺麗になったし、行くぞダイフク!」


 俺達は超スピードで25階層の転移部屋を目指した。







 25階層のボス部屋の前の安全地帯では、一組のパーティーらしき冒険者3人が、かなり疲弊した状態で横たわっていた。


「おい、お前達!大丈夫か?」


 アンドレ様が心配そうに声をかけたが、分かる気がする。


 そのパーティーは女性3人のパーティーで、身に付けている装備は、ぼろぼろで、髪の毛はボサボサ、肌はカサカサ、目の下には隈が出来ていて、全身が薄汚れている。


 ここまで来られたと言う事は、それなりに腕の立つ冒険者のようだが、それ以上にこの砂漠が過酷だったのだろう。


 アンドレ様の呼びかけにも応えずにウ~ン、ウ~ンと唸ってばかりだ。


 俺は三人の目の前に、アイテムボックスから出した、良く冷えた果実水を置いてみた。


 すると、三人が一斉に勢い良く起き上がり、果実水の瓶を素早く掴んで、ゴク、ゴクと一気に飲み干した。

 もう一度、果実水の瓶を置いてみたら、素早く手には取ったが、口を付ける前に、俺を見ている。

 俺が頷くと、ゴク、ゴクと一気に飲み干した。



「アンドレ様、少し早いけど昼食にしませんか?」

「ああ、カイト、お前に任せる。好きなようにするがいい」


 新月の屋台はアマンダさんに貸しているから、俺はアイテムボックスから新月のテントを出した。


「サトミは新月のテントは初めてだったよな?」

「うん、新月のって付いているから、だいたい想像は出来るけどね」

「ざっと説明するから、中に入ってくれ。アンドレ様は少し待っていて下さい」




 サトミに新月のテントの説明をして、次は全員で中に入った。


「何だこれは!?」

「アンドレ様、今私達はテントの中に入りましたよね?」

「えっ?どうなっているの……」

「ワーオ!」

「…………不思議」


 皆んなそれぞれ驚いているようだ。


「サトミ、頼むぞ」

「うん、わかった。三人ともこっちに来て」


 俺は簡易キッチンでお茶を入れてテーブルの上に置いた。


「アンドレ様、パトリックさん、立っていないでどうぞ座って下さい」

「あ、ああ……しかし、これは驚いたな」

「私は夢を見ているのでしょうか?」


 いまだに、現実を見ない二人は放っておいて、俺は昼食の準備を始めた。


 鍋に昆布と鰹節で出汁を取り玉ネギと、きのこを入れた味噌汁を作る。


「レクス、グラン、エル、アマンダさんに焼き魚を人数分もらって来てくれないか?途中でお前たちのも、もらって食べても良いぞ」


 最後の方は小声で言った。


「「「イエス、マスター」」」

「やったぜ!」


 エルも最後は小声だ。


 残りの出汁に醤油、酒、砂糖で味付けをして、小さく切った鶏のもも肉とスライスした玉ネギを入れて、火が通るまで煮たら溶き卵を流し入れた。


 

 アイテムボックスから、炊きたてのご飯と丼を出して盛り付けたら、親子丼の完成だ。


 レクス達が戻ってきて、もらって来てくれた魚を大根おろしと一緒に盛り付けた所で、サトミと三人娘がお風呂から戻ってきた。


「おっ!綺麗になったな」

「三人がはしゃいで大変だったよ、カイト」

「すみませんでした。サトミさん」

「いやー、悪かったよ」

「ゴメン……」


 サトミと三人娘は、お風呂で仲良くなったみたいだ。


「腹がへってるんだろ?自己紹介を含めた話は、食べながらすれば良いから、先ずは座れ」


 冷たい麦茶と一緒に親子丼、サンマによく似た焼き魚、味噌汁、白菜の浅漬けを並べて、一応、スプーンとフォークも用意した。


「うわぁ、何ですかこれは?美味しそうです!」

「クンクン、凄く良い匂いだね」

「ここは何処……?ダンジョンだったはず……」


 三人娘は目をギラつかせてテーブルの上を食い入るように見ている。


「カイト、また珍しい料理だな。美味そうだ」

「アハハハ、もう私は、カイト殿が何をしても驚きませんよ。私は珍しく、順応性の高いエルフですから……」


 

 食事中は、落ち着いて話が出来る状況では無かった。


「――――――美味しいー!!」

「ガツガツ、むしゃむしゃ……」

「うま、何これ?うま!」

「お代わりはあるから、ゆっくり食べろ。アンドレ様もですよ!貴族ですよね、貴方は!?」

「―――ッブッワッハッハッハ、言われてますよアンドレ様。アッハッハッハッハ」

「パトリック!!笑うでないわ!!こんなに美味い料理だ!無理も無かろう!お前だって私と似たりよったりだぞ!!」




 食後に紅茶とロールケーキを出して話をしようとしたが…………


「何!?このクルクル!めっちゃ美味しい!」

「こんなに美味いお菓子があるなんて知らなかったよ」

「あま、何これ、あま!」

「カイト、私の所で料理人をしないか?」

「賛成です!今の料理人は首にしましょう!」

「行きませんからね!!首にしたら駄目ですよパトリックさん!!」

「アハハハ、モテモテだね、カイト」

「勘弁してくれ……」


 紅茶のお代わりを出して、やっと話が出来る環境が整った。


「私達はCランクパーティー、光の絆で、私はドワーフのミヒャエラ。冒険者ランクはCです」

「私は狐人のアンナリーナ。冒険者ランクはC」

「魔族のナターシャ……Cランク」


 ミヒャエラは140cm位で身長は低いが、ヒゲも生えていないし、人間と見た目は変わらない。

 髪の毛と目は濃い茶色で、幼い顔だが胸は大きい。

 実年齢を聞くのが怖いから触れないでおこう。


 アンナリーナは狐の獣人で、全体的にほっそりとしていてスタイルが良い。

 髪の毛の色は濃い金髪で、頭の上に先が白い三角の耳がピコピコ動いていて、お尻には先が白いふわっとした尻尾が揺れている。

 モフりたい衝動を抑えるのに必死になる。

 目の色は茶色で、大人びた色気を感じる。下手にモフると後が怖い事になりそうだ。


 ナターシャは銀髪をボブカットにしていて、空色の目で俺達を観察している。

 この世界の魔族には角や羽は生えていなくて、見た目は人間と変わりない。ただ、総じて髪の色は綺麗な銀色だそうだ。

 身体能力は人間よりも低いそうで、その代わりに魔力量が桁違いに多く、数多くの魔法を行使出来るという。

 きっと、日常生活でも魔法で事を済ませるから、身体能力が低くなったのだろう。



 俺達も自己紹介を済ませた所で気がついた。


「今、このテントの中には人間、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族が居るんだな」

「ドリアードも居るよ!」

「人形もいるの!!」


 サトミとレクスの横槍で一気に場が和んだ。


「これだけの種族が集まるとは珍しい事だ」

「そうですねアンドレ様。エルフとドワーフは仲が悪く、人間と獣人も仲が良いとは言い難い。魔族は封建的ですから、滅多に見る事は無いですからね」

「仲が悪かったのは、何百年も昔の事ですから、私達は気にしていません」

「その何百年も昔の奴らが、まだ生きているから、ややこしいんだ」

「ん、魔族は今も封建的。っていうか、引きこもりなだけ……」

「えっ、ただの引きこもりですか?」

「ん、パトリックさん……魔族は外に出たら友好的……」


 話を聞いているのも面白いが、これでは先に進めない。


 アンドレ様、パトリックさん、ミヒャエラ、アンナリーナ、ナターシャの話が、一区切り付いたところで話題を変えた。


「ところでお前達は、あそこで何をしていたんだ?」

「私達は死にかけていたのさ」

「そう、砂漠を甘く見ていました」

「カイトが来なかったら死んでた……」

「すみません、お礼がまだでした。私達を助けてくれてありがとうございました」

「ありがとう。マジでヤバかったんだ。私らに出来る事があったら、何でも言ってくれ」

「ん、ありがと……」

「別に礼なんて良いが、これからどうするんだ?」

「ここのボスは私達では倒せないし、砂漠を戻る事も出来ません。だから、出来ればカイトさんに付いて行きたいのです」


 俺は、サトミ、アンドレ様、パトリックさんを見た。


「お前の好きなようにするが良い」


 アンドレ様の言葉にパトリックさんは頷いている。


「そうだよ、私達はカイトに付いて来ているのだからカイトの思うようにすれば良いよ」

「そうか、なら先ずはボス部屋の攻略だな!そこから先は、また考えよう」




 俺達は新月のテントを出て、ボス部屋の扉の前に立っている。


 俺とサトミ、レクス、グラン、エル、人形形態のダイフク、そしてキナコ。

 アンドレ様と、パトリックさん。

 更に、ミヒャエラ、アンナリーナ、ナターシャの大所帯だ。


「扉を開けるぞ……」



読んで頂きありがとうございました。


ミヒャエラ(Cランク冒険者、光の絆のリーダー、ドワーフ)


アンナリーナ(Cランク冒険者、光の絆メンバー、狐獣人)


ナターシャ(Cランク冒険者、光の絆メンバー、魔族)


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