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第49話 カイト、ダンジョンに行く〜1日目③


「余裕だ。サトミ、レクス、グラン、エル、一人一匹だぞ」

「うん」

「了解なの!」

「ワッハッハッハ」

「わかったぜ!」


 サトミは、両腕を棘蔓に変えて、レクスは魔法で赤く燃えているトカゲを出し、グランはハンマーを振り回し、エルは全身に闘気を纏い、俺は新月の刀を抜いて、それぞれミノタウロスに向かって行った。


 その間、冒険者達は二人一組で一角牛と雷羊を抑えている。


「エナジードレイン」


 サトミの棘蔓に巻きつかれたミノタウロスは干からびて倒れた。


「サラマンダーなの!!」


 レクスの炎のトカゲ5匹が、地を素早く這って行き、ミノタウロスにまとわりつき、ミノタウロスは炭と化した。


「ワッハッハッハー」


 グランが振り回したハンマーが巨大化して、ミノタウロスを叩きつけ、骨を砕き、衝撃で出来たクレーターの中でミノタウロスは倒れている。


「神武拳」


 闘気を纏ったエルは一瞬でミノタウロスに迫り、連打の嵐で、哀れミノタウロスはなすすべもなく倒れた。


「行くぞ、ミノさん」


 巨大な斧を振り下ろして来たミノタウロスの両腕を新月の刀で切断して、返す刀で首を切り落とし、新月の刀を鞘に収めた。



「手伝おうか?」


 冒険者達を見るとまだ牛と羊を倒せていないようだ。


「もう倒したのか!?頼む手伝ってくれ」


「わかった、行くぞ」


 俺達はそれぞれ1匹ずつ助太刀に入り、一角牛と雷羊は打ち上げられて終わった。


「お前達は強いな。俺はジン、Cランク冒険者で銀の盃のリーダーだ」

「俺もCランク冒険者で、至高のリーダーをやっているゴーダだ」

「俺はBランク冒険者のカイト。外の奴等は大丈夫なのか?」

「あいつ等もポーションぐらい持っているだろう。カイトも下層に行くんだろ?」

「ああ」

「なら、さっさとドロップ品を分配して降りようぜ」

「まあ待てゴーダ、ここのドロップはカイトに優先権が有るから、カイトから欲しいものを選んでくれ」


 牛と羊のドロップは霜降り肉と羊毛で、ミノタウロスのドロップは牛ヒレ肉だ。


「俺は牛ヒレ肉3個と霜降り肉1個貰おう」

「それだけで良いのか?」

「ああ、後はお前達で分けてくれ」




 12階層も草原だ。サクサク進もう。


「それじゃあ俺は先に行くから」

「カイトは狩りはしないのか?」

「進む先に何か居れば狩るさ」

「そうか、縁があったらまた会おう」



 11階層はドロップ品が良かったから、長居しすぎたな。


 レクス、グラン、エルは、また走り回っている。


「サトミ、デートの再開だな」

「うん、カイト、手を繋ごう?」

「ああ」


 俺とサトミはまた、レクス達の後から歩き出した。


「ダンジョンの中って不思議だよね」

「そうだな、空が有って太陽もあるって、俺のポケット草原と一緒じゃないか?」

「それもそうか!アハハハハ」

「サトミは前の世界では何をしていたんだ?」

「私は、ただひたすらにモンスターのエナジーを吸い取っていたっけ。大陸中歩いてもみたけど、人間も文明の形跡も無かったな。あるのは森や草原とかの自然だけ。海の近くに何かあるかと思い行ってみたけど、何もなかったわ。海には大きくて強力なモンスターがいっぱい居たけどね。話す相手と言えば妖精だけで、あの子達は人間の存在自体知らなかったのだから、私も諦めれば良かったのにねアハハハハ……それから何年も経って無気力になり、大きな木の中に引きこもっていたのよ。いい事なんて何も無い世界だったわ。いいえ、一つだけ今も役に立っている物があるわ」


 そう言ってサトミは白い指にはめてあるエメラルドグリーンの綺麗な指輪を見せてくれた。


「大陸の奥地に土の妖精が居たんだけど、その子達は言葉が通じなかったんだ。私は暫くそこに居て、土の妖精達を見ていたの。私に敵意が無いのがわかった土の妖精達は、私にこの指輪をくれたの。この指輪を付けていると、どんな言葉も自在に操れるんだって。だから今、この世界の言葉も分かるんだよ」

「その妖精はどんな姿をしていたんだ?」

「人間を小さくして、羽を生やした感じかな?」

「もしかしたら、人間が生まれる前の世界だったのかもしれないな。妖精からエルフやドワーフが生まれて、長い年月を経て人間が生まれる……これが進化なのか退化なのかは分からないがアハハハハ」

「カイトくん、それでだいたい合っているの!」

「そうか、でもサトミは数百年、数千年も待たなくても、この世界に来て人間に出会えたんだ」

「そう、しかも転生したカイトに出会えた。何だか運命を感じるわ。運命の女神って居るのかしら?」

「居るぜ。しかも、どうやらデビルモンスターの種をばら撒いたのが、ベランジュールっていう、はねっかえりで、駆け出しの運命神らしいぜ。もっとも、それがわかってもデビルモンスターの種は此方で対処しないといけないのは変わらないがな」


 なんだよ、子供のイタズラで絶滅の危機?笑えないな。


「今は考えても仕方のない事だ。レクス、ダンジョン攻略の続きだ」

「うん、そうだねカイトくん!!」


 レクス達はまた走り回っている。


「カイト、今度は蟻だね」


 レクス達が進む方向に蟻が打ち上げられていた。


「コンセ、ドロップ品の回収を頼む」

(了解しましたー)


 コンセも交代したんだ……


 俺達はサクサクと階層を進み15階層まで来た。

 15階層は森が広がっている。


「今日はここ迄にしてダンジョンを出よう」

「うん、わかったよ」


 俺達は転移部屋に戻り、魔法陣の中に入った。


「うわー、本当に外に出て来れた」

「不思議だけど不思議じゃないな」


 詰所でギルドカードを提示して、冒険者ギルドに向った。

 詰所では素材の買取はしないそうだ。




「ギルドカードをお願いします」


 俺は受付嬢にギルドカードを渡した。


「えっ!?一日で15階層まで行ったのですか?」

「はっ?もしかして駄目でしたか?一日で行ける範囲が決まっているとかですか?」

「い、いえ、それは無いのですが、余りにも早くて驚きました」

「驚く程ですか?割と余裕で行けたのですが……」

「売却されるドロップ品はありますか?」

「はい、肉とミルクは自分で使いたいので、それ以外をお願いします。此処に出しても良いのですか?」

「はい、此処にお願いします」


 俺はアイテムボックスから肉とミルク以外のドロップ品をカウンターに並べていった。


「スライムやゴブリンの魔石にゴブリンキングの剣と牛の角と羊毛に蟻のあちこち、それと何か分からない虫の魔石や甲殻……あと、薬草も色々」

「多すぎます!どうやったら、一日でこんなに持って来られるんですか!?」

「あの、俺、もしかして怒られてますか?」

「あっ、失礼しました!余りの事で驚いて、つい」

「それなら良かった。代金は口座に振り込んでおいてください」

「畏まりました」




 冒険者ギルドを出て、今度は屋台に向った。


「アマンダさん、ミウラさん」

「あっ、カイトさん」

「おかえりなさい、カイトさん」

「売れ行きはどうだ?」

「売れすぎです!!」

「プリンとロールケーキは完売しました」

「それならまた作らないとな。プリンの器は回収しているか?」

「器ごと売れたのもあって少し減っています」

「アマンダさん、帰りに商業ギルドであるだけ買って来てくれないか?」

「分かりました。カイトさんの方はどうでしたか?」

「今日は15階層まで行ったぞ」

「えっ!?15階層まで?早すぎますよ、カイトさん」

「やっぱりそうなのか?ギルドでも散々言われたよ」


 ミウラさんも言うんだからそうなんだろう。


「極上の牛肉がドロップしたから今夜はララさんにステーキを焼いてもらおう」


 大きな霜降り肉のブロックを10個出して、荷車に載せた。


「農村と漁村にもお裾分けです。皆さんで食べて下さい」

「カイト様、ありがとうございます」

「カイト様から頂いた物を食べるなんて勿体無いです。子々孫々我が家の家ほ………」

「帰ったら直ぐに分けて絶対に食べてくださいね!家宝なんかにしたら腐りますよ!?」


 アマンダさんと、ミウラさんと、サトミは笑っているが、生肉を家宝?あり得ないだろ?

 干し肉にしても子々孫々まで保つのか疑問だ。


「アマンダさん、ミウラさん、今日はもう閉めて帰ろう。マックニャン、明日も頼めるか?」

「此処は私に任せてもらいたいニャン」

「そうか、頼むぞ。馬車を持って来てくれないか?」

「了解ニャン」


 マックニャンはご機嫌なステップで馬車を取りに行った。


読んで頂きありがとうございました。



ジン(Cランク冒険者、銀の盃のパーティーリーダー)


ゴーダ(Cランク冒険者、至高のパーティーリーダー)

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