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第48話 カイト、ダンジョンに行く〜1日目②

 10階層のボス部屋に入ると、夥しい数のゴブリンと奥にはゴブリンキングとゴブリンジェネラルがふんぞり返っている。

 アーチャーとメイジも居るみたいだ。



「質より量ってか?面倒だから一気に倒すぞ」


 俺はアイテムボックスから新月のナイフを出して魔力を流していく。


 イメージするのは絶対零度の氷の領域。



 魔力を込めた新月のナイフは眩い位に青白く発光している。



 俺はゴブリンの足元の地面に、新月のナイフを投げて突き刺した。


「アブソリュートゼロ……」


 ピシッピシピシピシピシピシピシ


 魔力が放出され、領域に居たゴブリン全てが、一気に凍りついた。


「うわー、容赦無いわね」

「そんな事無いぞ。苦しまずに死ねるんだから、優しいだろ?」



「ギョギョ!?」


 ピシッ


 驚いたゴブリンジェネラルの1匹が、凍りついた手下のゴブリンメイジの肩を触ると、ゴブリンジェネラルも一瞬で凍りついてしまった。


 そして、絶命したゴブリンがダンジョンに吸収される時は、まるでダイヤモンドダストのようだった。


「ゴブリンだけど綺麗……」



 後に残ったのは4匹のゴブリンジェネラルと1匹のゴブリンキングだけだ。


 俺は新月のナイフを鞘に戻した。


「サトミ」

「うん」

 サトミは、自身の周りに大きな花を咲かせ、その花から無数の棘蔓を出した。


「あの時は、この棘蔓には苦労したな。レクス」

「そうなの。切っても切っても再生するからカイトくんを助けられなかったの!」

「この棘蔓のひとつひとつが意思を持って動いているから厄介だったぜ」

「味方になったら頼もしい物だなカイトよ。ワッハッハッハ」

「全くだな、グラン。サトミは俺よりも強いからな」

「そんな事は無いよ!私よりカイトのほうが全然強いよ!!」



 そんな話しをしているうちに、ゴブリンキングとゴブリンジェネラルは、棘蔓に絡め取られて身動きが出来なくなっていた。


「エナジードレイン……」


 みるみる内にゴブリンキングとゴブリンジェネラルはやせ細り、骨と皮だけになって、消えていった。



「まだ、午前中だよな?もう少し階層を進んでから昼食にしようか」

「この中でお腹がすくのはカイトだけだから、カイトが食べたい時に食べても良いよ」

「えっ、そうなのか?」

「私達は神だから食べなくても平気なの!!」

「そして私はカイトのテイムモンスターだからカイトの魔力で満たされるし、さっきの様にエナジードレインも出来るから」


 そう言えばダイフクもそんな事を言っていたな……


「でも、食べる事は好きだよ。前の世界では食べなかったから、この世界に来られて、カイトにまた出会えて、とても幸せだよ」

「サトミ…………さあ!次の階層に行くぞ!!」




 階段を降りると、草原が広がっていて、高い空には流れる雲と、輝く太陽があった。

 レクス、グラン、エルは、いつの間にか草原を走り回っている。


「あいつ等は草原を走るのが好きだよな……」

「でも、なんとなく気持ちは分かるわ。ウフフ……」

「なんだ、サトミ?」


 サトミが、なんだかとても嬉しそうにしている。


「ねえカイト、なんだか私達ってピクニックに来た家族みたいだね」


 俺は、子供のように無邪気に走り回っているレクス達を見た。


「ああ、そうだなサトミ。歩こうか」


 俺はサトミに手を差し出して、それを見たサトミは俺の手を握った。

 俺とサトミは昔のように、手を繋いでレクス達の後を歩いて行った。




 少し歩くと、巨大な物体が空に打ち上げられて落ちていった。

 そして、もう一つ同じように打ち上げられて落ちていく。


 エルとグランが、何かを抱えて此方に走って来た。


「カイト、ドロップ品だぜ!」

「此方もだ。ワッハッハッハ」


 また打ち上げられて落ちていくのを見ると、どうやら牛のようだが、角が長くてしっぽが3本有る。


 エルが持ってきたのは紙に包まれた大きなブロック肉で極上の霜降り肉だ。

 グランはミルクと書かれた樽を持っている。


「霜降り肉とミルクか!?グラン、エル、でかしたぞ!」


 これは正直嬉しい。


「カイトくん、ツノだよ!!」

「そうか、角もドロップするんだな。これはギルドに売ろう」


 レクス、グラン、エルは、また走って行って、牛を打ち上げてはドロップ品を持って来て、また走って行く。


「ワッハッハッハー」

「次は肉だぜ!!」

「私はミルクなの!!」


 あれ?なんか変なのが打ち上げられて落ちて行った。


 エルが持ってきた物は羊毛だった。


「カイト、羊も居たぜ」


 そう言い残してまた走って行った。


「サトミも行くか?」

「ううん、私はカイトと一緒に居るよ。此処はレクスちゃん達のターン」

「そうか、レクス達は楽しそうだしな」


 レクス、グラン、エルは、俺の前にどんどんドロップ品を置いていくから今では、牛肉の山、ミルク樽の山、角の山、羊毛の山、羊肉の山が出来上がっている。


 ドロップ品をアイテムボックスに入れて、また歩き始めた。



 レクス達の後を歩いていると、他の冒険者達が増えてきた。


「今日もノルマを達成するぞ!!」

「オオー!!」


 どこかのクランだろうか、一日のノルマがあるようだ。


「なんだあれは!?一角牛が飛んでいるぞ!」

「あっちは雷羊が飛んでいるぞ!?」


 レクス達がドロップ品を持って戻ってきた。


「カイトくん、人が増えてきたの!」

「ああ、そろそろ下の階に降りようか。あっちに行けば階段があるからレクス達は狩りながら行ってもいいぞ」


 肉もミルクも十分取れたからな。


「おい!!一角牛がそっちに行ったぞ!避けろ!!」


 その声に振り向くと額から太くて長い角を生やした、通常の牛の2倍はありそうな黒い一角牛が、目を赤く滾らせて、猛突進で此方に突っ込んで来た。


「エル」

「おう、任せろ」


 エルは、素早い動きで一角牛の真下に入って闘気を纏った拳を突き上げた。

 一角牛は空に打ち上げられて落ちて来た。


 その一角牛を追っていた冒険者達は口を開けて呆然と見ている。


「ありがとうエル」

「どうって事無いぜ」


 そう言ったエルは誇らしげだ。


「おい、お前等、大丈夫……みたいだな。さっきから打ち上げられていた一角牛は、この人形がやっていたのか!?」

「ああ、そうだ」

「凄いな……あのタフな一角牛が一撃か」

「俺達はこれから下の階層に行くから、ノルマ頑張ってくれ」

「おい、待て!ドロップ品は持っていかないのか?」

「それはお前達が追っていた牛だろう?俺はもう十分な収穫があったから譲るよ」

「そうか、済まないな」




 一角牛と雷羊を打ち上げながらこの階層のボス部屋の前までやって来た。

 そこは、安全地帯になっていて2組のパーティーが食事をしていた。


「俺達は順番を待っている間に、少し早いが飯を食っているんだ」


 ボス部屋に入らないのか聞いてみたら、一組ずつしか入れないらしい。

 それならばと、俺はアイテムボックスからテーブルと椅子を出して、大皿に盛られた唐揚げと、野菜たっぷりの味噌汁と、ワイバーンの串焼きと、甘く味付けした卵焼きと塩むすびを出して、サトミと一緒に食べ始めた。


「美味しいねカイト。この卵焼きは久しぶりだわ」

「昔、サトミが良く作ってくれていたからな、それを思い出して大量に作っているんだ」


 俺達の食事風景を呆然と眺めている冒険者達にもお裾分けをした。

 そのお返しにと、色々な情報を教えてもらった。


 ボス部屋の中には3匹の一角牛と3匹の雷羊と、ミノタウロスが1匹居るらしい。

 それを全て倒すと、階段がある部屋に入れるそうだ。


「前の奴らが入って30分も掛かっているから大分苦戦しているな。どちらかが倒れるまで、この扉は外から開かないから……」


 と、その時中から扉が開きボロボロになった冒険者が3人出てきた。


「どうしたんだ、お前等!?何故そんなに……」

「助けてくれ……イレギュラーだ。中にあと二人居る……」


 開け放たれた扉からボス部屋の中を見ると、10匹以上の一角牛と雷羊が居て、ミノタウロスは5匹も居た。


「お前等、良く30分も戦えたな。って言うか、何で直ぐに出て来なかったんだ?これは複数パーティーで挑むレイドだろうが!!お前等はそこで休んでいろ!行くぞ!!」

「おう!!」


 今まで、話しをしていた冒険者達が武器を装備し始めた。


「俺も行って良いのか?」

「ああ、頼む。敵の数が多すぎて俺達だけでは無理だ。二人を助けたら退くぞ」

「数を減らせば良いんだな?」

「あ?ああ、出来るのか?」

「多分」


 セルジュ、サンダーボールを一角牛に、ファイアーボールを雷羊だ。


(ちょっと待って、うん、ロックオン完了。いつでもオケ)


 俺が両手を前に出すとピンポン玉サイズのサンダーボールが10個とファイアーボール10個が現れて、円を描くように両手の掌の前でクルクル回っている。


「行け……」


 サンダーボールとファイアーボールは追尾弾のようにターゲットに向かって行き、一角牛は感電し、雷羊は燃えて倒れて行った。


 呆然と見ていた冒険者のリーダーは、我に返ると仲間に号令を掛けた。


「今だ、行くぞ!これなら戦える」


 ボス部屋に残ったのは2匹の一角牛と3匹の雷羊。

 それと、5匹の怒ったミノタウロスだ。


「牛と羊をお前達に任せても良いか?」

「それは良いがお前達で5匹のミノタウロスを相手に出来るのか?」

「余裕だ。サトミ、レクス、グラン、エル、一人一匹だぞ」

「うん」

「了解なの!」

「ワッハッハッハ」

「わかったぜ!」


 俺達は鼻息の荒いミノタウロスに向かって走った。


読んで頂き、そして、ブックマーク、評価もありがとうございます。

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