第41話 カイト、スタンピードを止めに行く②
前話から引き続き、辺境騎士団1番隊隊長の視点で始まります。
途中で主人公の視点に戻ります。
㊟Gが出て来る部分が有ります。苦手な方は御注意下さい。
「キュロロロロ―――――」
あのピンクの仮面の人形の魔法か?
3匹の雷鳥が次々にモンスターを倒しているぞ!
「おい、あれも魔法か?魔法の鳥は鳴くのか?」
「私は……私は……申し訳有りません。隊長!私はまだまだ勉強不足でした」
「いや、お前は良くやってくれている。彼奴等がおかしいのだ」
巨大なハンマーを持った青い仮面の人形は、ぐるぐる回りながら、次々にモンスターを、そのハンマーで殴り飛ばしている。
黄色い仮面の赤毛の人形は、両手、両足に赤い闘気を纏い流れる様な動作の徒手空拳で、モンスターを空に打ち上げている。
紫の仮面の猫人の人形は右に、左に、空にと、目に見えない速さで移動して、目に見えない速さでレイピアを急所に突き刺しモンスターを倒している。
「隊長、ドールマスターの戦い方を本で読んだ事が有りますが……やはり、私の勉強不足でしょう。本とは全く異なります」
新月仮面を見てみた。刀を持ち、まるで踊っているかの如く、モンスターの首を一刀両断していた。時折、指先から、光や、雷や、氷の弾で、モンスターの眉間を撃ち抜いている。
その動きは美しく、目が離せない。
時折、茨や堀や人形を抜けるモンスターが居るが、騎士や冒険者が1匹を数人がかりで、無難に倒す事が出来た。
「おい、あいつ等の足元にモンスターの死体が無いのは何故だ?」
「えっ?今更ですか!?」
「あいつ等の戦いに目を奪われていてな」
「モンスターは彼等が倒す度に消えていました。恐らく収納魔法でしょう」
「あれだけの数のモンスターをか!?」
「はい、見ても触れてもいないのに、あれだけの大量のモンスターを収納している様です。私は彼らに関して常識を捨てました」
「ふむ、それはいい考えだ。私も常識を捨てよう」
あれは?空から何か来るぞ?
「た、隊長!ワイバーンです!ワイバーンの群れが来ます」
「スタンピードも終わっていないのにここでワイバーンに来られると、幾ら新月仮面でも…………」
ズドドドドド!
「な、何だ!?」
ラージピジョンが風の刃でワイバーンを1匹落としたぞ!?
本当にあれはラージピジョンなのか!?
「あ、危ない!!」
ラージピジョンの後ろから、ワイバーンが火炎弾を放った。
ラージピジョンは被弾して落ちて行くが、ドリアードが蔓のネットで受け止め、棘蔓で火炎弾を放ったワイバーンを絡め取った。
馬はブレスでワイバーンを落とし、ホワイトパイソンは飛んでいるワイバーンに食らいつく。
しかし、敵はワイバーンだけではない。
地を走るモンスターの大群の相手もしなくては、後ろの騎士や冒険者だけでは、荷が重すぎる。
「隊長!ワイバーンが騎士と冒険者に火炎弾を放って来ました!!」
「火炎弾だ!逃げろ!」
クッ、間に合わない…………
「シールド!」
「新月仮面!!」
新月仮面が騎士と冒険者にシールドを張ってくれた?
「レクスはワイバーンの相手を頼む」
「了解だよ!新月仮面!」
「クソッ、どうする……」
新月仮面もこの状況に対応するのは厳しいようだ。
「何だ?また何か飛んで来たぞ!?何だあれは!?」
「隊長……あれは……余りにも巨大な……それに大量の……」
この状況でまた、敵が増えるとは…………
「カイトはん、儲かってまっかー」
「あきまへんわーって、ジョニーか!」
「面白そうでんなー、わいも混ぜてーな」
「助かるジョニー、ワイバーンを頼めるか?」
「はいな、任しときー。行くでお前ら、ワイバーンを落とすんや」
新月仮面は、いったい何を……
「新月仮面が巨大なGと話しているみたいです。隊長……」
巨大なGと大量のGがワイバーンに向って行き、巨大なGは、すれ違いざまにワイバーンの首を落とした。
大量のGは1匹のワイバーンに群がって飛べなくなったワイバーンを地面に落とした。
「あのGは味方なのか?」
「隊長!地面からドラゴンが!!」
「ああ……今度こそ終わりだ……」
は?地竜が尻尾でモンスターをなぎ払った!?
そうか、モンスター同士が仲間と言う訳では無いからな。
此方に来る前に外壁の防御を……?
「カイトよ、我も助太刀に参ったぞ」
「助かる、地竜。ありがとう」
何だ、今の言葉は?
「おい、今、地竜が新月仮面に助太刀に来たと言ったか?」
「はい隊長、確かにそう聞こえました」
「そうか!!ワッハッハッハ、そうか、そうか!良し、お前達!後もう少しだ!気合いを入れろ!!」
「「「オオ――――――ッ」」」
**********
ジョニーと地竜が来てくれて助かった。騎士隊長が後もう少しだと言っていたな。
「地竜、地上のモンスターを頼む。俺はワイバーンを倒しに行く」
「我に任せて行くが良い」
地竜はブレスでモンスターを薙ぎ払った。
「頼もしいな。ジョニーも地竜も俺達の為に…………行くぞレクス!ワイバーンを全て落とすぞ!!」
「うん、カイトくん!頑張ろうなの!!」
スタンピードとの戦いが終わって俺達はその場に座り込んだ。
「ふーっ、流石に疲れたな。ジョニー、それと地竜、助かった。ありがとう」
「礼には及ばへんで、わい等はカイトはんに世話になっとるさかい。これからも必要な時は何時でも言うてえな」
「我もだ、カイトよ。言ってみれば、お前は命の恩人だ。これしきの事では、まだまだ恩を返したとは言えん」
「そうか、義理堅いな、お前ら……ところで、怪我はしてないか?」
後でキナコも見てやらないとな。
「怪我っちゅうか、ヨシオとタカシが身体を半分潰されよってな、虫の息ねん」
「名前が有るのかよ!?全部に?っていうか、虫だけに虫の息ってか?」
はぁ……スルー出来なかった。
「セルジュ、此処に居る全員にヒールだ」
(うん、マスター………ロック完了……何時でもオケ)
「行くぞ……ヒーリングボール」
ジョニーとG達はGの館に、地竜はポケット草原の湖畔に帰って行った。
「新月仮面、おかげで助かった。礼を言う。ところで、あの巨大なGと地竜は君の仲間なのか?」
「ええ、まあ、そんなところです」
「そうか、君には特別に領主様から褒賞金が出るだろう。この後、領主の館に来てくれないか?」
「いえ、俺はこれで失礼します。報酬は……そうですね、俺達が倒したモンスターを貰えますか?」
「それは当然の事で構わんが、それだけで良いのか?」
「はい、報酬の為に戦った訳では無いので。それでは、俺達はこれで」
俺達は歩いて森に入り、そこから馬車に転移した。
「サトミ、お疲れ様」
「カイトもお疲れ様。最後はかっこよかったよ」
「サトミは疲れていないようだな」
「前に居た世界に比べたら、なんて事ないよ」
どれだけ過酷な世界なんだ!?
サトミが強いのはその世界で戦って来たからなんだろうな。
「サトミ…………」
「カイト…………」
俺はサトミを思わず抱きしめていた。
ほんのりと、木の香りがした。
「アマンダさんとミウラさんを迎えに行って、帰ろう」
「うん、そうだね。お風呂に入りたいしね」
ギルメットの1日目は大変な1日だったな。
そんな事を思いながら、アマンダさん、ミウラさん、サトミがお風呂に入っている間に、夕飯の支度を始めた。
今夜は、すき焼きにしよう。
白米を炊いて、ルトベルクの朝市で買った、牛肉のサーロイン部位を薄くスライスして、野菜は、玉ねぎと、白菜と、ネギと、きのこ。それと玉子。
後は、醤油と、酒と、砂糖を用意して、七輪に炭を入れて火を熾せば準備OKだ。
そうだ、野菜たっぷりの味噌汁も作っておこう。
これで栄養のバランスは取れるかな?
「うわーっ、いい匂いです」
「美味しそう、何ですかこれは?」
「これはすき焼きだ。肉はたっぷり有るぞ」
「すき焼き……」
アマンダさんは匂いに反応して、ミウラさんはビジュアルに反応。
サトミは懐かしそうにしている。
サトミは早速、器に玉子を割り入れた。
読んで頂きありがとうございました。