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第40話 カイト、スタンピードを止めに行く①

途中で視点が変わります。

「カイトさん、あれが辺境の街ギルメットです」


 石造りの高い外壁が威圧歴な風貌を醸し出している。

 俺達は見るからに大きな街の門に向って、馬車を進ませている。

 今回も、4人のポケット村の村人を門から離れた場所で出して、別々に門から入って行く。

 馬車に乗って行けばと言ったのだが、恐縮しているのか、自分達は歩いて行くと言って聞かなかった。


「カイトさん、街に入る前にサトミさんにテイムモンスターの証をお願いします。ギルド的にはモンスターも妖精も同列に扱う事になっていますから、必要な事なんです」

「サトミは俺のテイムモンスターになっても良いのか?」

「私はなりたいよ。カイトのテイムモンスターに。何だか、絆が出来るようで、幸せな気持ちだよ」


 ミウラさんからテイムモンスターの証を貰ってサトミの左肩に貼った。


「嬉しい……」


 サトミは笑みを浮かべながら左肩のテイムモンスターの証を撫でている。


 そろそろ街門につく頃だ。




 衛兵の前に馬車を止めてギルドカードを見せる。

 何だか街の方が慌ただしく、鎧を纏った騎士や多くの冒険者が馬に乗ったり、走っていたりで、只事では無い張り詰めた空気を感じた。


「Bランク冒険者か?直ぐに冒険者ギルドに行ってくれ!急いでくれ!あの冒険者達の向かっている所だ!」


 俺は取り敢えず、冒険者ギルドに馬車を進めた。


 冒険者ギルドの中に入ると、冒険者で寿司詰め状態になっている。

 その中を俺とサトミとミウラさんは受付カウンターに向かった。



「ギルド監査のミウラです。こちらは、Bランク冒険者のカイトさんです。たった今、街に到着したのですが、この騒ぎは一体、何が有ったのですか?」

「ギルド監査……Bランク……あっ!失礼しました。スタンピードです!モンスターの大暴走が西の森から押し寄せているとの情報が入ったのです少々お待ち下さい」


 そう言って受付嬢は席を外した。


「もしかして私のせい?」

「それも考えられるな……モンスターが山を北から西に迂回して行くうちに数が膨れ上がったのか?」

「それなら私が食い止めないと」

「いや、俺達でだ」

「カイト……ありがと……」

「ミウラさん、そう言う訳だから俺達はスタンピードを止めに行く」

「分かりました。カイトさんなら大丈夫だと思いますが、無理をしないで下さいね。私はアマンダさんと此処に残ります」

「もし、止められなかったら……此処が危なくなったら館に戻っていてくれ」

「はい、それはカイトさんもですよ」




 ミウラさんとアマンダさんをギルドに残して、俺達は馬車で西門近くまで来た。

 西門周辺には騎士や冒険者が集まっていて、そこを抜けて行くのは難しそうだ。


「コンセ、マップを展開してくれ」

(了解、マスター)


 スタンピードの先頭は、まだまだ先だが、ゆっくりしている暇もない。

 出来ればモンスターを一点に集中させたいな…………


「コンセ、スタンピードの中にランクの高いモンスターはいるか?」

(どれも低ランクのモンスターです。最高のランクでCランクだと思われます)

「良し、これからスタンピードの前に転移するから、ダイフクとサトミは左右からモンスターを追いやってスタンピードの幅を狭めてくれ。広範囲になるができるか?」

『何とかやってみるよ、カイト』

「うん、それくらいなら余裕だよ」

「頼もしいな。余裕が有ればモンスターを倒しながら頼むぞ。だが無理はするな。危なくなったら一旦、館でも草原でも良いから避難して、また距離を取って戦うんだ。レクス、グラン、エル、マック、俺達は中央でモンスターを押し返すぞ」

「カイトくん、頑張ろうね!」

「ワッハッハッハ久々に暴れてやるぞ」

「今回は長く楽しめそうだぜ」

「カイト君、ワラビとキナコも戦うと言っているニャン」

「ヒヒヒ―――――ン」

「ポーポポオー」


 確かに、ワラビとキナコは頼りになるな。うーん、ならば…………


「ワラビはダイフクのフォローでキナコはサトミのフォローだ。範囲が広いから大変だけど頑張ってくれ」


 多少のモンスターが漏れて街に向かっても、数が少ければ騎士や冒険者も居るし大丈夫だろう。


「行くぞ!」

「ちょっと待って、カイトくん!」


 レクス、グラン、エル、マックが仮面を付けた。

 それを見たサトミが緑の仮面を付けた。

 レクスがダイフクに黒い仮面を付けようとしたが、少し考えて仮面を叩き割り、口の中から黒い覆面を出して、ダイフク、ワラビ、キナコに被せた。


『うん、この方が動きやすくて良いよ』


 皆が俺を見る。仕方がないから溜息を一つ吐いて、新月の仮面を付けた。


「コンセ、森と外壁の中間に転移だ」

(イエス、マスター!)



 外壁から森の間には草原が広がっている。かなり広い範囲だ。


 モンスターの暴走と言っても、森の中では、走る速度も遅くなるから、此方にも少しは時間の余裕が有る。


 俺達は外壁と森の中間に転移した。


「サトミとキナコは左側を頼む!ダイフクとワラビは右側だ!」

「うん、わかったよ」

『任せて、カイト』


 サトミは左側に駆けて行き、両腕から出した棘蔓の茨で壁を作り、モンスターの進行方向を塞いだ。

 キナコは上空で待機だ。


 ダイフクはホワイトパイソンに戻り、穴を掘りながら右側に進み溶解液を流して堀を作った。

 ワラビは器用にダイフクの頭に乗っている。


「レクス、グラン、エル、マック、俺達は散開して戦うぞ。少しくらい打ち漏らしても、後ろに冒険者や騎士がいるから無理はするな」


「「「「イエス、マスター!」」」」






**********







「何だ、あれは!?いきなり現れたぞ!」


 怪しい仮面を付けた黒髪の男と、緑の髪の女に仮面を付けた人形?そして黒い覆面の白馬とラージピジョンが、外壁と森の中間に、何の前触れも無く現れた。


「あ、あれは!?」


 蛇の人形が光ったと思うと10mは有る黒い覆面のホワイトパイソンが現れた。


「隊長、緑の仮面の女が左側に走って行きます」


 何をするつもりだ?


「―――――茨の壁だと!?あの女は人間では無いのか!?ホワイトパイソンは!?」


 ホワイトパイソンは穴を掘って何かの液体を流し込んでいる。


「スタンピードを止めるつもりか?」

「隊長!冒険者ギルドから報告です」

「何だ?」

「Bランク冒険者のドールマスターとテイムモンスターが、スタンピードを止めるので、援護をしてくれとの事です」


 あの少年がBランク?しかもドールマスターで、モンスターテイマーだと?


「わかった。ギルドの決定に従おう。各部署に伝達を出せ!」


 まだ、スタンピードが見えていない今の内に、私は少年の元へ向かった。


 少年は鈍色で銀色の文様の様な物が描かれた、目の部分も口の部分も何処にも穴の開いていない、不思議な仮面を付けていた。


「少年、私は辺境騎士団1番隊、隊長のフィリップだ。君はたったこれだけの戦力でスタンピードを止めるつもりなのか?」

「はい、俺の人形達とテイムモンスターも居ますから止められますよ。ただモンスターの数が多いので、打ち漏らしたモンスターには深追いはしませんから、出来ればそちらで仕留めて貰えると有り難いです」

「聞く所によるとBランク冒険者だそうだな。その言葉を信じよう。冒険者ギルドからも君の援護をするようにと、先程指示が有ったのだが、我々にして欲しい事は有るか?」


 少年は考えているようだ。そう言えば、名前を聞いていなかった。


「新月仮面!準備OKなの!!」

「ワッハッハッハ、此方もOKだ、新月仮面」

「新月仮面、何時でも良いぜ」

「新月仮面、私もOKニャン」


 仮面を付けて、名を伏して正体を隠しているつもりなのか?

 フフフ……そういう所は、まだ子供と言う訳か。


「なるほど、今の君は新月仮面なのか。で、新月仮面、我々はどうすれば良い?」

「そうですね、部隊を3つに分けて、1つはホワイトパイソンの後ろを、1つはドリアードのグリーンの後ろを、最後の1つは、俺達の後ろを充分距離を取って、打ち漏らしを仕留めて下さると助かります」

「わかった、そうしよう。では此方も準備が有るので失礼する」

「わざわざ来て頂きありがとうございました」


 フフ……随分と腰の低い少年だが、ホワイトパイソンとドリアードをテイムしていて、更にしっかりと意思を持った人形を操るドールマスター。


 この少年も規格外と呼ばれる力量を持っているのかもしれない。


 その腕前をしっかりと見せてもらうぞ、新月仮面。




「良し、全員位置につけ!新月仮面とその仲間の邪魔にならない様に充分な距離を維持しろ。分かったな!」

「「「はい!!」」」


 森の木がざわつき始めたな。そろそろ来るぞ――――――――――来た!!


 さあ、お手並み拝見だ、新月仮面。



 凄い数のモンスターだが、大丈夫か?草原に入ってスピードも増したぞ。


「隊長、新月仮面はまだ動きません。怖気づいたのでしょうか?」

「いや、そうは見えん。よく見てみろ、あれはモンスターを引き付けているのだ」

「あ、動きました!」


 モンスターに向けて指を差しているが、何をしている?指示を出しっ!?


「ななな、何ですかあれは!?」


 何だ?あれは………指から銀色の光の線が出たぞ……し、しかも、腕を右から左に動かしただけで、何十匹ものモンスターが真っ二つだと!?


「おい、あれは魔法か?詠唱は聞こえたか?」

「あんな魔法は見たことも聞いたことも有りませんし、詠唱も聞こえませんでした。あっ、隊長!ホワイトパイソンが!!」


 ホワイトパイソンの口から黄色い霧が………霧に触れたモンスターが倒れているぞ……毒霧か!それに堀に落ちたモンスターが溶けている?


「あのホワイトパイソンはランクで言うとAランククラスですよっ!た、隊長!!馬が!!」

「何だ?馬がどうした、やられたか?」


 そう言えば白馬が居たな。

 ――――――――っ何故だ!何故、馬がブレスを吐く!?


「おい!あれは馬だよな!?お前は馬がブレスで攻撃が出来るのを知っていたか!?」

「いえ、知りませんでした隊長。あっ、今度は緑の仮面の女!!」


 な、何だ?茨の壁に触れたモンスターが痩せ細っていく?

 それと腕の棘蔓を操って捕まえたモンスターも痩せ細って倒れている……


「いつの間にか、一面が花畑になっているんだが」

「あれが……ドリアードのエナジードレイン……隊長、私は初めて見ました」

「あれがエナジードレインか凄まじいものだな」

「隊長、ラージピジョンの風の刃はあんなに強力でしたでしょうか!?」


 翼の一振りで5つの風の刃!?一度に5匹のモンスターを倒したぞ!!

 なな、何だ!?今度は竜巻!?


「おい、ラージピジョンは竜巻を起こせるのか?」

「それも、聞いたことが有りま………」

「キュロロロロ――――」

「キュロロロロロ――――」


 あれは、何だ!?

読んで頂きありがとうございました。


フィリップ(辺境騎士団1番隊隊長)

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