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第35話 カイト、オータンの教会に行く③


「カイトさん、冒険者ギルドに荷物が置いてあるのですが……」

「それでしたら、冒険者ギルドに行って荷物を取って来ましょう」


 ミウラさんが荷物を取って来る間に、俺とアマンダさんとレクス達は、クエストボードを見ていた。


 犬の散歩と草むしりが無くなっただけで、前回見た時と変わって無かった。


「アマンダさん、明日の早朝にオータンを立とうと思うんだが、やり残した事は有るか?」

「私は明日の早朝に商業ギルドに商品を卸すだけですね」


 それなら、後はミウラさんの予定を聞くだけだな。


「お待たせしました、カイトさん」

「あっ、ミウラさん、丁度――――何ですか!その荷物は!?」


 2階から降りて来たミウラさんは背中に大きなリュックサックを背負い、両手にはパンパンに膨れ上がった大きなカバンを持っている。

 更に後ろから冒険者ギルドの女性職員が2人がかりで、特大のカバンを持って、苦労しながら階段を降りていた。


「ミウラさん……夜逃げでもして来たのですか?」

「えっ、これから長旅ですから、これ位は必要だと思いますけど……」

「ミウラちゃん、いったい何をそんなに持って来たの?」


 うん、一番の疑問はそこだ。


「えーと、着替えと、保存食と、お布団と、枕と、寝袋と、携帯用調理器具と………」

「もう良いわ、ミウラちゃん。あなた、カイトさんと旅をするのよ。あのカイトさんと!」


 うん?……何の事だ?


 仕方が無いから、取り敢えずアイテムボックスに入れておくか。


 あっ、そうだ!ファイアーイーグルの事をすっかり忘れていたな。


 俺は受付に並んだ。


「あれ?……カイトさんは何をしているのですか、アマンダさん?」

「えっ、受付に並んでいるわね……依頼でも受けるのかしら?」

「レクスちゃん達は?…………ああ、外で遊んでいますね」


 やっと、順番が来た。


「すみません、ファイアーイーグルが有るのですけど、買い取って貰えますか?」

「カイトさん!今更ですか!?」

「ああ、アマンダさん。今まで忘れていたんだ」


 アマンダさんも忘れていたんじゃないのか?


「あのー、ファイアーイーグルって、あのファイアーイーグルの事ですよね?」


 受付嬢が変な事を言っているぞ。


「はい、ファイアーイーグルですよ」

「カイトさん、ファイアーイーグルってBランクのモンスターですよ。しかも討伐が難しくて、滅多に出回らないから、素材が凄く高額なんです」

「そうなんですね、ミウラさん。それで買い取って貰えるのですか」


 俺は受付嬢に再度聞いてみた。


「はい、カイトさん。買い取りさせて下さい。解体がまだでしたら、解体場にお願いします」



 受付嬢に案内された解体場に、ファイアーイーグルをアイテムボックスから出した。


「おおーっ状態が良いな。こりゃ高く売れるぞ」


 一緒に付いて来た冒険者が感嘆の声を上げた。


「こんなに綺麗だと剥製にしたら高く売れそうですね。滅多に無い素材なのでギルドマスターを交えて査定を致しますので、暫くお待ち頂けますか?」


 俺はギルドカードを出して、受付嬢に渡した。


「ゆっくりで良いので終わったらギルドカードに振り込んでおいて下さい」

「畏まりました」


 受付嬢はギルドカードのナンバーを書き写し、カードを返してくれた。


「皆さんもこうやってギルドカードに預金する事が出来るんですよ」


 受付嬢は後ろで見ていた、冒険者達に説明している。

 これは本当に便利なサービスだと思う。



「相変わらずカイトさんはマイペースですねウフフ」

「私はそのマイペースっぷりに幾つ溜息を吐いた事か………」



 俺は、ミウラさんの荷物をアイテムボックスに入れて、冒険者ギルドを出た。


「待たせたなレクス」

「冒険者の皆が遊んでくれたから、楽しかったよ」


 グラン、エル、マックニャン、それとレクスも遊んでくれた冒険者に手を振っている。

 遊んでくれた若い女性パーティーの4人も手を振ってくれている。

 俺は軽く頭を下げて、大通りを歩いて行った。


「ミウラさん、少し早いけど館に帰りましょう。荷物の整理もあるでしょうから。アマンダさんもそれで良いか?」

「ええ、カイトさん。あれだけの荷物ですから、私は賛成です」

「えっ、館ですか?」


 俺とアマンダさんはポケット収納と館について、ミウラさんに説明をした。


「はぁ、カイトさん、もう何でも来いです。もう驚きません。それでカイトさんのポケットに魔力を流せば良いのですよね?」


 ミウラさんが、ポケットに魔力を流した。


(ミウラさんの新規登録が完了しました。削除したい時はマップ内のコマンドから削除が出来ます)


「えっ!今のは誰の声ですか?」

「ああ、俺の魔法でマップと言うのが有って、そのマップの機能の一つですよ」




 俺達は館の玄関前に帰って来た。


「うわー!大きな館ですね」

「新月の館にようこそ、ミウラさん」

「新月…………」


 玄関の扉を開き中に入ると、ミウラさんは驚愕で言葉も出ない様だ。


「ミウラちゃん、もう驚かないのでは無かった?」

「やっぱり驚いちゃいますよ〜」


 2階のリビングにミウラさんの荷物を出してソファーに座った。


「アマンダさん、お茶を入れてくれないか?」

「はい、カイトさん」

「カイトさん…………」

「どうしました、ミウラさん?」

「わ、私にも、アマンダさんと同じ様に喋って欲しいです」


 ミウラさんが、もじもじしながら小声で言ってきた。


「分かった、俺もその方が楽でいい」

「やった!」


 ミウラさんは凄くいい笑顔で喜んでいるが、喋り方を変えただけで何が嬉しいんだか…………





「やっぱり新月仮面ってカイトさんだったんですね。それで、此処が新月の館……」

「やっぱりも何も仮面しか付けていないし、レクス達が居るからすぐに分かるだろう?レクス達が楽しんでやっているから、それに付き合っているだけだ」

「そうだったんですねー。そしてアマンダさんが、レッドですよね」

「ウフフ、ミウラちゃんには直ぐにバレちゃいましたからね。やってみると面白くて……」


 レクスが手に何かを持って此方にやって来た。


「アマンダさんには赤いポーチなの!仮面をその中に入れておくの!」


 レクスがアマンダさんに肩から掛けられる赤いポーチを渡した。


「えっ?あ、ありがとうございます」

「ミウラさんは白の仮面とポーチなの!」

「わ、私にもですか?あ、ありがとうございます、レクスちゃん」


 まあ、レクスが楽しんでいるなら、それでいいか…………


「アマンダさん、そろそろミウラさんを部屋に案内してやってくれ」

「はい、カイトさん。ミウラちゃん行きましょう。好きな部屋を選ぶと良いわ」



 俺は1階の厨房で、夕飯の支度を始めた。

 白米は多めに炊いて残ったらアイテムボックスに入れておく。


 昆布と鰹節で出汁を取っている間に、材料の下ごしらえをしておく。


 豚肉の代わりのオーク肉と大根、人参、キャベツ、玉ねぎで豚汁を作り、魚は鱗と内臓を取りほうれん草っぽい野菜と一緒に煮付けにする。


 玉ねぎ、人参、南瓜をかき揚げ用にカットして海老もぶつ切りにして、そこに加える。

 この世界の人は海老を食べないらしく、漁村の漁師が網にかかった海老を捨てていたのを見た俺は、その海老を貰ってアイテムボックスに入れておいたのだ。


 出汁と醤油、酒、砂糖で天つゆも作って、後はかき揚げを揚げるだけだ。


 やっぱり味醂が欲しいな、王都に行けばあるかな?

 


 今夜の献立は、何かの白身魚とほうれん草もどきの煮付け、海老と野菜のかき揚げ、豚汁、白米、胡瓜と白菜の浅漬け、緑茶だ。

 緑茶はレクスに頼んで取り寄せて貰ったティーバッグで入れて、冷やしてアイテムボックスに入れておいた。


 勿論、スプーンやフォークは用意しないで、箸だけを用意した。

 ミウラさんも箸を使えるように練習して貰おう。




「うわ――――――っ!!何ですかこれは!?お魚?アマンダさん、アマンダさん、お魚が有りますよ!!お魚ですよ!!見たことの無いお料理ばかりです!」

「カイトさん、今日もとても美味しそうです!!あら?お箸だけ……ウフフ、ミウラちゃん頑張ってね!」

「???」

「さあ、冷めない内に食べるぞ」


 まず俺はミウラさんに箸の持ち方を教えて、実際に使って見せた。


「え~と、こうやって〜、つまんで〜はむっ……もぐもぐごっくん、美味しいーっ!!お魚美味しいです!!カイトさん、お箸の使い方はどうでした?」

「ああ、良かったぞ。慣れればもっと良くなるぞ」

「やった!でも、お箸って難しいですね。変に力が入っちゃいます」

「何だかミウラちゃんに追い越されそうだわ。私も頑張って練習しますね、カイトさん」


 ミウラさんが加わって賑やかな食卓になったな。


「この豚汁はお野菜から味が出てとっても美味しいですね」

「アマンダさん、この、かき揚げって言うのも甘くてサクサクで凄く気に入りました。このプリプリした身も、良く噛むと甘くて美味しいです」

「カイトさん、このプリプリの身は何ですか?とても美味しいですね」

「アマンダさん、商業ギルドの職員の顔になっているぞ」


 そう言って俺は、アイテムボックスから海老を1尾出してアマンダさんに見せた。


「これはサーベルシュリンプ……の幼体?」

「サーベルシュリンプも気になるが、ポケット海辺で取れた物だから、これは違うと思うぞ。俺が居た所では海老とかシュリンプって呼ばれていた物だ」

「カイトさん、今度、このエビも商業ギルドに卸してみても良いですか?」

「その辺はアマンダさんに任せているから、アマンダさんの判断でやってくれ」

「ウフフ、分かりました。この後、農村と漁村に行って来ますね。楽しみだわ」

「アマンダさん、私も一緒に行って良いですか?」






 アマンダさんとミウラさんは、明日の商業ギルドに卸す商品のチェックに行った。


「なあレクス、何だか賑やかな旅になりそうだな」

「カイトくんには、この世界を楽しんで貰いたいの!」

「そう言えばレクスはいつの間にか最初の頃と口調が変わっているよな?」

「最初の分離体とは違う分離体だからなの!その辺は気にしなくても良いの!」


 分離体、何体居るんだ?性格や口調が違う分離体が集まると………否、考えるのは辞めておこう。


「カイトくんにはこの世界で恋をして幸せになって貰いたいの!」

「恋か…………俺には…………」

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