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第31話 カイト、オータンの冒険者ギルドに行く②

「食えるかよ!!」


 俺達には食えないが、解決策を思い付いた。


「マックニャン来てくれ」


 俺は外で走り回っているマックニャンを呼んだ。


「カイト君、あの草の中を走り回るのは、中々に面白いニャン。カイト君も走ってみると良いニャン」

「走るのでは無くて、今日は草むしりに来たんだ。マックニャン、馬を連れてきてくれないか?」


 庭に出てすぐにマックニャンが馬を連れてきてくれたので、理解出来るかどうかは不明だが、俺は馬に説明をした。


「馬、俺達は草むしりの依頼で来たのだが、依頼主はこの草を捨てるのが勿体ないので食べて欲しいそうだ」

「ヒヒ――――ン!」


 俺の説明を黙って聞いていた馬は一声鳴いて草を食べ始めた。

 分かったのか?頭の良い馬だな。


 庭の草を信じられない早さで食べている馬。


「馬、そんなに美味いのか?」

「ヒヒヒ――――――ン!!」

「カイト君、この牧草は香り高く、噛めば甘みと程よい酸味で、とても美味しくて幾らでも食べられるわって言っているニャン」

「マックニャンは馬の言葉が分かるのか?っていうか、今の一鳴きに、そこまで盛り沢山のコメントが凝縮されているのが驚きだ」

「馬さんの言っている通りですよ、カイトさん。後を引く美味しさなんです」


 メリーさんもそう言っているならと草を1本抜いて口に入れてみた。


「苦いっ!青くさっ!!」

「カイトさん、私達人間には凄く苦いのですよ」

「そ、そうか、味覚の違いか。アマンダさん、馬は気に入った様だから、馬の為に俺達は反対側から草を抜いていこう」


 俺とアマンダさんと、レクス達人形と馬。

 旅の仲間総動員で、わずか30分でこの家の家族が食べるだけの一角を残して、草むしりは終了した。


 抜いた草の半分はアイテムボックスに、後の半分は草原に放り込んだ。


 これで他の牧草が植えられると大喜びのメリーさんに、依頼達成のサインをもらって、次の依頼主の家に行く。


 次は考えて植えて欲しいものだ。







「カイトさん、ヘルハウンドですね」

「モンスターなのか?」

「はい、頭が2つ有りますから。確か、地獄の番犬と呼ばれるCランクモンスターです」


 なんでまたこんなモンスターを飼っているんだ?

 牛の様に大きな身体に獰猛そうな双頭のモンスターだ。


「来てくれてありがとう、世話係が怪我で休んでいてね、この子が欲求不満で困っていたんだよ」


 怪我の原因は何!?


「この子が思いっきり走り回れる場所に連れて行って、満足する迄走らせてあげて欲しい。出来れば連れて行って貰えれば助かるが……頼んだよ」


 依頼主は行ってしまった。


「…………」


 仕方が無いので俺はヘルハウンドを見た。今までおとなしかったヘルハウンドは俺が視線を向けると、しっぽを振って飛び跳ね始めた。


「アマンダさん、ヘルハウンドってこんなに太っているものなのか?」

「商業ギルドの図鑑で見たヘルハウンドはもっとスッキリとしていましたよ」


 これでは、まるで太った牛の様だ。健康にも悪いだろう。




「ダイフク、ヘルハウンドと遊んでやってくれないか」

(うん、わかった!)


 俺達はヘルハウンドと一緒にポケット草原に来て、ダイフクを召喚した。


 ヘルハウンドは周りを見回し、俺の顔を見た。ワクワクしているのが、伝わって来る様だ。


「良し、ヘルハウンド!ダイフクと一緒に思いっきり走って良いぞ!」


 俺の言葉を合図に、走り始めたヘルハウンドだが、身体が重いせいか滑稽に見える。

 ダイフクが手加減をしてヘルハウンドを追いかける。

 そのダイフクの横を、いつの間にか現れた馬が並走している。


 何だ、この図柄は…………


「アマンダさん、お茶にしようか」


 俺は新月の屋台を出してお茶の準備を始めた


「あっ、私が入れますよ。カイトさんはゆっくりしていて下さい」



 草原にシートを敷いて寝転んで、流れる雲を見ていたら、アマンダさんがお茶を入れて持ってきてくれた。


「冷蔵庫にロールケーキが有ったから一緒に持って来ました」

「ああ、ありがとうアマンダさん」

「んー美味しいー、草原でお茶とロールケーキなんて貴族みたい」

「ケーキを食べ過ぎたらヘルハウンドと一緒に走る事になるぞ。1回に1つにしておけよ」

「はぅ……わかりました……」




 ヘルハウンドと、ダイフクと、馬が走って行った方向とは逆の方向から帰って来た。

 ヘルハウンドの身体がスッキリしている。その変化に驚いていると、止まることなくまた草原の向こうに走って行った。


「ヘルハウンドが痩せていましたね。私も走って見ようかしら……」

「どんな走り方をしたんだ?このポケット草原を1周したのか?」




 日が傾きかけた頃に戻って来たヘルハウンドを見て、俺とアマンダさんは絶句した。





「やあ、やあ、お帰り。随分と長い時間、散歩をしてくれたんだね」

「あの、なんて言って良いか……」

「どうしたんだい、何か困った事でも有ったのかい」


 俺達は()ヘルハウンドを見て貰う事にした。



「――――――こ、此れは……此れは、此れは、此れは!!」


 依頼主は目を輝かせて、今にも踊り出しそうだ。いや、奇怪なステップで両手を上げ下げして踊っている。


「君たち!いったい何をして、こうなったのかな!?いや、怒っている訳では無いんだよ。寧ろ、感謝しているくらいさ!」

「怒っていないのですね?良かった。広い草原で、俺のテイムモンスターのホワイトパイソンと、馬と一緒に何時間もおそらく全力で走った結果だと思います」


「そうかい、そうかい、やっと、あのヘルハウンドがケルベロスに進化したんだよ?こんなに嬉しい事は無い」


 ケルベロスは、ヘルハウンドの時よりも、ひと回り大きな身体で、3つの頭が付いている。身体付きはスッキリしてはいるが、筋肉質で逞しさが有る。


 依頼達成のサインと何故か花丸を貰った俺達は名残惜しそうに頭を擦り付けて来るケルベロスを撫でて、冒険者ギルドに向かった。




 冒険者ギルドは喧騒の真っ只中だった。


 受付に依頼達成の報告をした俺はギルドの中を見回して、見知った顔を見つけたので声を掛けた。


「ミウラさん、お久しぶりですね。どうしてオータンの街に?」

「カイトさん!!良かった!!カイトさんが居てくれれば………あっ、オータンにはギルドの会合で来ているのですよ。うちのギルドマスターの付き添いで来たのですが、大変な仕事を押し付けられてしまいまして………って!そんな事より、ギルドマスター!!」

「おお、何だ?」

「カイトさんです!カイトさんが来てくれました!!」

「カイトか!こりゃ良いガッハハハ」


 いったい何の事だ、この喧騒と関係がある事か?


「ミウラ、向こうの部屋でカイトに説明をしてやってくれ。何の事か分からない顔をしてやがるぜ。俺はこいつ等を鎮めるからよ。それとカイト、お前は今からBランク冒険者だ。ミウラ、手続きを頼む」


「カイトさん、此処が鉱山の街なのはご存知ですよね」

「ええ、まだ鉱山見物には行って居ませんが、予定には入れていますよ」

「鉱山見物ですか?はぁ、物好きな……」

「えっ!?しないんですか鉱山見物。良い観光スポットだと思うんですけどね」

「そう言われれば……ってこんな事を話している場合では無いのですよ!カイトさん!出たのです……坑道の中に出たので……」

「ミウラさん、帰ります!出るんですよね?あれが…………お化けが……」

「――――――っアハ、アハハハハハハ」

「な、何が可笑しいのですか?」

「カイトさんが……っ、あのカイトさんが、アハハハハお、お化けが怖いって……アハハハハ」


 俺は、黙って席を立った。アマンダさんも席を立ち、ドアを開けてくれた。


「ま、待って下さい!」

「ミウラちゃん、今のはギルド職員として最低でしたよ」

「ア、アマンダさん………そうでした、申し訳有りませんでした。カイトさん」

「カイトさん、ミウラちゃんの様子では、どうやらお化けでは無いみたいですよ」

「そうか?なら、話を聞こうかアマンダさん」

「ミウラちゃん話して下さい」

「はい、有難う御座います。アマンダさん」

「では、カイトさん、話に戻らせて頂きます。坑道に出たのは、おそらく地竜だと思われます。と、言うのも、坑夫が坑道を掘り進めていた時に突然掘っていた所が崩れて、ドラゴンらしき顔の一部と目が現れたと言う話でした。坑夫達は、その目に睨まれて、慌てて逃げ出したそうです」

「何だ、地竜だったのですね。俺は皆が騒いでいるから、お化けだと勘違いしていました。すみませんでしたミウラさん」

「カイトさんが謝られる事は無いです。悪いのは私の方ですから!!」

「それにしても、カイトさんは地竜に対しても“何だ”で済ませるのですね。ドラゴンよりもお化けが怖いなんて、可愛いです!」

「アマンダさん!?」


 時々、アマンダさんは何を言って来るか分からない所が有るけど“可愛いです”は無いだろう…………


「お二人共、仲が良いのですね……って、それよりも今、ギルドでは討伐隊を組織するかどうかで議論をしていまして…………」

「えっ、地竜に討伐隊ですか?1匹ですよね?大袈裟過ぎませんか?」

「ガッハッハッハ、言うもんだなカイトよ」


 ザルクの街のギルドマスターが、事務職系の男性と部屋に入って来た。


「マックス、この少年がそうかい?」

「ああ、そうだ。とんでもない奴だぞこいつは」

「カイト君、オータンの街のギルドマスターをやっているジェラルドだ。宜しく頼むよ」


 痩身で茶色の髪を綺麗にオールバックに整えた青い目の事務職系にしか見えないギルドマスターと握手をした。

 見た目とは違い、力強い握手だ。


「C、いやBランク冒険者のカイトです。宜しくお願いします」

「うん、良い目だ。決めたよマックス、君と僕と、このカイト君が先遣隊として坑道に入り、討伐隊は坑道の外で待機させよう。やってくれるね、カイト君?」

「どうせ坑道見物に行く予定でしたから、ついでで良ければ構いませんよ」


 そんな訳で、俺達は明日の朝に坑道に行くことになった。


今回も、読んで頂きありがとうございました。


明日も更新出来るようであれば、更新したいと思います。



ジェラルド(冒険者ギルドオータン支部のギルドマスター)

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