第27話 カイト、洋館に行く
今回もGが出ますので苦手な方は御注意下さい。
[Gの館] そこはG達の住む館。決して興味本位で、その扉を開くべからず。
俺とアマンダさんとコレットさんとレクス達。そしてジョニーがGの館に入って来た。
「おおー、ごっつい洋館やな」
「レクス、説明をしてくれ」
「了解だよ、カイトくん!」
周りを見回して呆然としているコレットさんをアマンダさんに任せて、俺達はジョニーにGの館の説明を始めた。
「此処はカイトくんの外界から隔離された疑似空間なの!この館の敷地からは出ることは出来ないけど手狭になったら拡張も可能なの!」
「のんびり、平和に暮らせるっちゅう事やな?」
「そうなの!。それと館の中はバス、トイレ付きで、空調に関しても適度な温度と湿度が保たれるようになっているの!」
「そりゃ、至れり尽くせりやな。で、食料はどないなっとるんや?」
「残飯やクズ野菜でも良いんだろう?」
「上等や!言う事あらへんで」
「それなら定期的に食堂に送ってやるよ」
「決りやな、何か有ったら力になるよって、遠慮なく言うてな」
Gの力を借りる事なんてあるのだろうか。
「引っ越すのは良いねんけど、コレットちゃんと別れるのは淋しいな」
「俺はそこまで面倒は見ないぞ。ところでジョニー、お前は何処から来たんだ?」
「大阪やで。その前はワシントンでGの研究者やってん」
「アメリカ人か?」
「せやで」
これで変な関西弁と横文字の名前の謎が解けた。
「ジョニー、これから他のGをこの館に送るぞ」
「ほな、よろしゅう」
ジョニーを残し、俺達はコレットさんの家の前に戻って来た。
「コンセ、この家のGを全てGの館に送ってくれ」
(イエス、マスター!)
コレットさんと家の中に入っていく。
先程まで埋め尽くさんばかりに居たGの姿はどこにも無い。
「これで、ゆっくりと眠れるわ。ありがとうございます、カイトさん」
「これで、依頼は完了だな」
明日の朝には出発だからもう1回この街を見て回るのも良いな。
「…………」
「コレットさん、どうかしましたか?」
見ればコレットさんは目に涙を浮かべて家の中を見回している。
そりゃあ、あれだけ居たGが居なくなったんだ。
感動で涙が込み上げてきても不思議な事では無いな。
俺達はコレットさんを残して、大通りに向かって歩いていると、グランが俺に声を掛けて来た。
「ワッハッハッハカイトよ、ポケット森林の滝に行ってくれないか?」
「ああ、今から街を見て回ろうかと思っていただけだから、別に構わないぞ」
と言う訳で、俺達は全員ポケット森林の滝を指定して転移した。
アマンダさんは初めての森林なので森の木々と滝を見て感嘆としている。
俺も久しぶりのマイナスイオンを浴びながら、何気無く視線を巡らす。
すると、滝の下流の小高い丘の上に、かなり大きな洋館が見えた。
「レクス、あの洋館には誰か住んでいるのか?」
「まだ誰も住んで居ないよカイトくん!」
「ワッハッハッハそうだ。あの館はお前のだからな。カイト」
「グランの奴、時々ここに来てこんな物を作ってたんだぜ」
そう言えば、時々グランの姿を見ない事があったな。
「館まで馬車に乗って行くニャン」
俺達はマックの御する馬車に乗って丘を登って行く。
「大きな館ですねカイトさん」
「大きすぎないか?」
大きく重厚な玄関扉を開けると、広いエントランスホールが有り正面には幅の広い階段、階段の奥に浴室やトイレが有り、右側には厨房と食堂、居室が有り、左側には多目的ホールが有る。
窓は大きく、昼間なら照明が無くても室内が明るい。
2階は居住区になっていて、階段を上がった所に広いリビングが有り、豪華なソファーセットや簡易キッチンも有る。
リビングから左右には、広い廊下が有り、リビングの左横に書斎とトイレも備えられている。
残りの部屋は全て個室になっていて、ベッドと机とクローゼットが有るくらいの簡易な設備だが、部屋は6畳位は有りそうだ。
窓も大きく、居住空間としては文句はない。
階段の反対側、正面玄関の上はバルコニーになっていて、この場所が丘の上と言う事もあって、眼下には壮大な森と滝の、幻想的な眺めを堪能出来る。
「凄いなグラン!」
「ワッハッハッハ、そうだろう、そうだろう。どうだ、気に入ったか?」
「ああ、この上なく気に入ったが、部屋数が多くないか?」
2階には個室が10部屋有って、1階にも2部屋有ったような気がする。
「今はアマンダだけだが、その内に増えるだろうよ。ワッハッハッハ」
増えるって何の事だ?此処はポケット森林だぞ、此処は。
玄関を出て、今度は館の周りを見てみる。
門から玄関まで、道の外側は花壇になっていて色とりどりの花が咲いている。
玄関の前は車回しになっていて、中央には芝生が敷き詰められて噴水やベンチが有る。
館の裏に回ると、車庫と厩舎が有り、現在厩舎には馬が1頭居て飼葉を食べている。
そして車庫には馬車が止められており、マックが御者席で寛いでいた。
「カイトくん、この館は新月の館だよ!不壊、清潔、自動空調が付与されていて、トイレは浄化と循環が付与されていて、浴室には温泉が引かれているの!」
そう言えば、浴室は見て無かったな。
脱衣所からすりガラスの引き戸を開けて、広い浴室に入ると温泉特有の匂いがした。
「此処もまた広いな。床や湯船は大理石か?」
「滑らないように気をつけろよワッハッハッハ」
「所々に岩も使っているな」
壁の高い位置に換気口が開けられていて、湯気で前が見えないと言う事もない。
「折角作ってくれたんだ。今夜からこの館で暮らそう」
「旅をしながら御自分の館で暮らすって何だか不思議な感じがしますね」
「もう今更だよな、アマンダさん」
「はい、私も、もう慣れました。これがカイトさんですもんね」
えっ、これ、俺なのか?どう考えても、グランとレクスがやった事だよね?
馬車でポケット森林から出て、宿の駐車場に馬車を入れて、宿の食堂に入ると、ポケット村の村人が酒と食事を楽しんでいた。
「皆さんお疲れ様です」
「カイト様にアマンダ様」
村人達は席を立ってお辞儀をした。
「皆さん、座って食事の続きをしながら聞いて下さい」
俺とアマンダさんはエールと簡単なつまみを注文して、村人達に今後宿は取らない事、村に帰りたい時には自由に帰れる事、最初に街に入る時と、街から出る時は、門を通って身分証を見せる事を話して聞かせた。
「皆さん、明日の朝に私が村に行くまでに、商業ギルドに卸す商品を今日の倍は用意しておいて下さいね」
「分かりました、アマンダ様」
「本当にありがたい事です」
伝える事は伝えたし、新月の館に帰ろうかな。
俺達は馬車に乗り、新月の館の門の前に転移して玄関前で馬車を降りた。
「ありがとうマックニャン」
「後は任せるニャン」
「アマンダさん、好きな部屋を選んで良いぞ」
「カイトさんは何処にしますか?」
「俺は書斎の隣にしようと思う」
「それなら私はカイトさんの隣にしますね」
俺は手ぶらで、アマンダさんはリュックを持って部屋に入って行った。
俺はアイテムボックスに全部入っているから、特にすることも無いな。
すぐに部屋を出て、キッチンに入り夕食の支度を始めた。
キッチンには調理器具も食器も揃っていて、無いのは食材くらいだ。
アイテムボックスから食材を出して料理を始める。
今夜は、漁村で貰った魚にしよう。
魚は鱗と内臓を取り除きよく洗い天板に乗せて塩とオリーブオイルとバジル、ローズマリー、パセリ等のハーブを掛けて、オーブンで焼く。
時々スプーンでオリーブオイルをすくって魚に掛けてやる。
農村で、貰った野菜はよく洗ってサラダにした。
ドレッシングはすりおろしたリンゴと酢、オリーブオイルをよく混ぜて塩と胡椒と砂糖で味付けをした。
パンを薄く切って鉄板で焼き表面に薄くバターを塗っておく。
出来上がった料理を皿に盛り、アマンダさんが部屋にいる内にレクス、グラン、エル、マックの口に入れていった。
食堂に料理を運び、エルにアマンダさんを呼びに行ってもらった。
「カイトさん、お魚がふわふわで美味しいです!サラダもとっても美味しいです!何ですか?上に掛かっているのは、リンゴですか?香りが良くて甘くて酸っぱくて……はぁ……幸せ」
「アマンダさん、美味しいと言ってくれるのは嬉しいが、呆けてないで早く食べないと冷めてしまうぞ」
「は、はぅ……そうでした。冷めると味も半減ですよね……でも、前から気になってたのですが、このパンに塗っているのは何ですか?」
「これはバターと言って、牛乳から生クリームを分離させて作った物だ」
「程よい塩分と油分でパンも軟らかくなって美味しいですね」
「食べ過ぎないようにな」
明日は、早くから出発だから食休みの後はお風呂に入って早く寝ようと思う。
読んで頂きありがとうございます。
ジョニー(元アメリカ人でGの研究者)