第26話 カイト、Gの討伐に行く
G回です。
苦手な方、お食事中の方は御注意下さい。
「それじゃ、彼奴が例の…………」
何か俺のことを小声で話しているみたいだけど、神様謹製の身体だからなのか、聞こえるんだよな……
「――――今の話しは……」
昨日、助けた若手冒険者が小声で話している冒険者の話しに割り込んだ。
小声冒険者は若手冒険者を手で制して、此方に視線を向けてきた。
「あの人形と、黒いコートは間違い無くあの人だ」
若手冒険者が席を立って此方に来ようとしたが、小声冒険者が若手冒険者の腕を掴み、それを止めた。
「やめておけ、仮面を付けて名前を伏せていたんだろ?何か事情が有るんじゃないかと思うぞ」
「あっ、そうでした。悪い事をしているんじゃ無いなら、詮索しないのが冒険者の掟でした」
「そう言う事だ。礼がしたいなら掲示板に礼状でも貼っておけ」
「分かりました。そうします」
掲示板?パーティメンバー募集とか、金を貸してくれとかの張り紙がしているあれか?
小声冒険者と若手冒険者の話を聞いている内に列が進み、俺の順番が来た。
「依頼達成の報告に来ました」
「はい、カイトさんですね。この書類は、採石場ですね。山積みの石を全て運搬と、此方の木の伐採の書類に依ると、23本の木の伐採。責任者のサインも確認しまし……え――――――っ!!」
えっ、どうしたんだろう?後ろの方でもざわついているぞ。
「あ、あの溜まりに溜まった石の山をどうやって運んだんですか!?それに23本もの木をどうやって1日で切れるんですか!?っていうか、1日で石の運搬と23本の木ですよね!?」
「はい、それとアイアンマンティス2匹とビッグボアが7匹です」
「…………」
「どうしましたか?」
「いったいどうやって……っていうか7匹のビッグボアって昨日、あの子達が…………」
そこまで言ったコレットさんは、カウンターの上に上半身を乗り上げて、俺の足元を見た。
「あの子達が言ってた黒いコートと人形に女の人……あなたがあの……」
コレットさんは周りの冒険者達を見回すと、冒険者達は皆一様に口元に笑みを浮かべ、温かい目でコレットさんを見て首を横に振っている。
それを見たコレットさんも、次第に口元に笑みを浮かべ、温かい目で俺を見てきた。
何だ、この人達の一体感は?
「カイトさん、どうやって1日でそれだけの事が出来たのかは疑問ですけれど、アイアンマンティスとビッグボアは何処に有りますか?」
まだ温かい目で見られてるよ。
「アイアンマンティスとビッグボアは収納に入っていますよ。何処に出しますか?」
「解体していないのですね。では解体場にお願いします。此方です」
俺と、アマンダさんと、レクス達と、その場に居た冒険者達が、コレットさんの案内で解体場に入って行った。
「「「おお――――」」」
冒険者達のどよめきと共にビッグボアとアイアンマンティスを解体場に出して並べる。
「綺麗………」
女性の冒険者が一言漏らした。
「ああ、本当に綺麗に倒しているな。普通ビッグボアはパーティで何度も攻撃をしてやっと倒せるんだが、見たところ殆ど一撃で倒しているぞ」
そうなのか?1匹倒すのにパーティ全員で攻撃したらオーバーキルにならないか?
「それに見てみろ。アイアンマンティスは傷一つ無いぞ」
「いったい、どうやって倒したんだ?」
これには余り答えたくないな。
「カイトさん、ビッグボア討伐の確認しました。アイアンマンティスも確認完了です。それで、アイアンマンティスは全ての素材を納品で構いませんか?」
「はい、このままそっくりお渡しします」
「ありがとうございます。ビッグボアはギルドで買い取り出来ますけど如何されますか?」
「1匹分の肉を俺に、後は買い取りでお願いします」
「分かりました。では1匹分の解体手数料を引いて査定させて貰います」
肉はかなりアイテムボックスに貯まっているからな。
1匹分有れば良いだろう
「明日の朝にこの街を立ちますから今から解体して頂けますか?」
「今日は他に解体の仕事が入っていないので大丈夫ですよ」
「良かったです。報酬と買い取り代金は俺の口座に入れておいて下さい」
「コレットさん、ついでにゴブリンジェネラルとゴブリンキングの買い取りもお願いします」
俺はアイテムボックスから、ゴブリンジェネラル2匹とゴブリンキング1匹を出した。
「カイトさん、これは何処で?」
「この街に来る途中に襲われたので倒して持ってきたんです」
「はぁ、そうですか。これも眉間に一撃ですね」
俺達は受付に戻りGの討伐について、コレットさんと話した。
「今日はGの討伐と言うことで仕事は午前中迄にして貰いました」
「それなら昼にまた来ますね」
「やっと奴らが居なくなるんですね。特にジョニーの奴、毎晩耳元で囁いて悍ましいったらなかったわ」
ん、今何か、おかしな事を言って無かったか?
何はともあれ、こんな依頼は速攻で終わらせたいもんだ。
「レクス、あれは、どうなっている」
「カイトくん、完璧だよ!!」
俺とアマンダさんはポケット草原に屋台を出して、塩おにぎりと、鶏の唐揚げと、玉子焼きと南瓜の煮物で弁当を作り、冒険者ギルドに向かった。
弁当と言っても弁当箱が有る訳じゃないので、木製の大皿に盛り付けただけだ。
「待ってましたよ、カイトさん!」
冒険者ギルドの前で、コレットさんが満面の笑みで手を振っている。
「昼食はまだですよね、コレットさん?」
「はい、途中の屋台で食べて行きますか?」
ビッグボアの肉を受け取り、公園に向かう。
公園に入ると、アマンダさんとコレットさんに、野菜のスープを屋台で買ってきてくれるように頼み、芝生の上にシートを広げた。
「カイトさん、スープだけですか?」
コレットさんが凄く悲しそうに此方を見て言った。
俺はアイテムボックスから塩おにぎりと、鶏の唐揚げと、玉子焼きと、南瓜の煮物を出して、シートの上に並べた。
「うわーっ、何ですかこれは?」
「お弁当を作って来ましたよ。どうぞ召し上がって下さい」
俺達は、箸、フォーク、手づかみで、思い思いに食べていく。
「どれも美味しいですねカイトさん」
「アマンダさんが手伝ってくれたからな」
「カイトさん、何ですかこれは?本当にお米ですか?この玉子焼き?も甘くて美味しいです!」
どうやらコレットさんも食いしん坊キャラのようだ。
「何だかコレットさんが、カイトさんと出会った頃の私やミウラちゃんみたいですね。フフフ」
「そう言えば、あの頃のアマンダさんは“何ですかこれは?”の連発だったな」
「カイトさんが美味しい料理を作るからですよ」
コレットさんは両手におにぎりを持ち一心不乱に頬張っている。
それを見てアマンダさんは、竹筒から緑茶をコップに入れて皆に配った。
「ありがとうアマンダさん」
「もぁみまもうもまみまむ」
「コレットさんゆっくり食べないと、喉に詰りますよ」
俺達は食休みも確り取って、コレットさんの家に行くことにした。
「本当に美味しかったです。カイトさん、ありがとうございました」
「凄い食べっぷりでしたね。お腹は大丈夫なんですか?」
コレットさんは急に顔を赤くして俯いている。
「だって……あんなに美味しいお料理は、生まれて初めて食べたんだもん」
「そんなに喜んで貰えると作った此方も嬉しいです」
話しながら歩いているとコレットさんの家の前に着いた。
「……開けますよ」
コレットさんがドアを開けると、床に、壁に、天井に、足の踏み場の無いくらいの"G"が居た。
「―――――――っ!!」
俺は直ぐにドアを閉めた。
「カイトさん?」
「帰ったんかー、コレットちゃん」
家の中から男性の声がした。
「コレットさん、誰か居るのですか?」
「あれは、ジョニーです。大きな、大きなGです」
「喋ってましたよね?」
「はい、なんか馴れ馴れしくて、私が寝ていると、耳元で"布団がふっ飛んだー"とか、"虫は無視しろ"だとか、うるさくて……」
Gだよな?Gなんだよな?
「コレットちゃん、帰ったんちゃうん?」
「○○新聞の者っすがー、1ヶ月だけお試しでどうっすかー。今なら洗剤の粗品が付いてますよー」
「ああ、新聞かいな。うちは、間におおとるさかい他所に行ってや」
「………………」
今のやり取りを聞いてアマンダさんとコレットさんは首を傾げてキョトンとしている。
俺はレクスを物陰に引っ張って行き問い詰めた。
「レクス、だからこの依頼を受けたんだな?」
「そうだよカイトくん、確信は無かったけど、思った通りなの!」
「レクスは彼奴をどうしたいんだ?」
「彼は、他の神が転生させたから、詳しいことは分からないの!でも殺したら駄目なの!」
「はぁ、分かった。なら今回の作戦はおあつらえ向きだったな。一部変更する必要があるがな」
「カイトくんからこの作戦を聞いて彼のことを思い出したの!」
俺とレクスは玄関前に戻り、コレットさんに再びドアを開けて貰った。
「なんや、やっぱり帰って来とったんか。新聞屋なんて、おかしい思うたわ」
「お前がジョニーか?」
ジョニーは、250cmは有りそうな巨大なGだ。
ここまで大きいと逆に平気なのは何故だ?
「そうや。あんたは?」
「冒険者のカイトだが、今日はお前に………ってか、後ろの奴らは何とかならないのか?」
ジョニーの後ろでカサカサ動いている奴らを何とかしてもらわないと、落ち着いて話も出来ない。
「お前ら、あっちに行っとき」
ジョニーが一声掛けるとカサカサと奥の部屋に入って行った。
此処に居るGはジョニーだけになった。
「済まないなジョニー」
「別にええよ、気持ちは分かるよってな。ほな、話の続きをしてや」
こいつの関西弁はエセっぽいぞ。
名前がジョニーってのも変だ。
「ああ、今日はお前に、新物件の紹介に来たんだが、興味は有るか?」
「ほう、新物件なぁ、此処も手狭になってもうたし、ええんちゃうか」
マップの収納に視線を向けると、新しくコマンドが追加されていた。
[Gの館] そこはG達の住む館。決して興味本位で、その扉を開くべからず。
Gにも関わらず、読んで頂きありがとうございます。
ジョニー(巨大G・転生者)