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第25話 カイト、ヴァサルの冒険者ギルドに行く②

途中で視点が変わる部分が有ります

「多分、大丈夫ですよアマンダさん……ウォーターキューブ」

「――――――多分!?」


 ギリギリまで迫って来た2匹のアイアンマンティスを、水が隙間なく入った立方体の結界が閉じ込めた。


 立方体の水の中に閉じ込められたアイアンマンティスの口から気泡が漏れ、次第に苦しみ始めた。


「アマンダさん、見ない方が良いですよ。向こうを向いていて下さい」


 失敗したな……残酷過ぎる……


 2匹のアイアンマンティスが、動かなくなると魔法を解いて、アイテムボックスに入れた。


「アマンダさん、もう良いですよ」

「カイトさん、向こうにもアイアンマンティスが居ますよ」


「まだ遠いな。確か、この近くに採石場が有りましたよね」


 今はアイアンマンティスを狩る気が失せてしまった…………



 黙ったまま、俺とアマンダさんとレクス達は草原を採石場が有る方向に歩いている。

 どうやら皆んな空気を読んで、気を使わせていたみたいだ。


「気分を変えよう!!」


 俺は両手を高く上げ、深く深呼吸をしてから大きな声で言った。


 アイテムボックスから屋台を出して、牛乳と卵と砂糖を鍋に入れて温める。

 とろみが付いたら漉しながらボールに移して、別のボールを用意した。


「レクス、このボールの中に氷を入れてくれないか?」

「良いよ、カイトくん!ん〜クラッシュアイス!」


 ボールの中に程よい大きさの氷が山盛りで出てきた。


「アハハハ、レクス上出来だ」


 俺は必要な量の氷だけ残し、残りは容器に入れてアイテムボックスに入れた。

 氷が入っているボールに塩を入れて、牛乳のボールをその上に乗せて泡立て器で固まるまで、ひたすら混ぜた。


「何ですかこれは!?冷たくて、甘くて、口の中で溶けて……はぁ、とても幸せな気持になります」

「うん、上手く出来たな」


 アマンダさんが幸せな気持で呆けている隙に、レクス達の口の中にアイスクリームを素早く入れていく。


 神界ルートで購入したアイスの方が断然、何倍も美味いけど、それはそれ、これはこれだ。


 アマンダさんがおかわりを要求してきたが却下して今度、食後のデザートに出すからと言って、アイテムボックスに入れた。


「さあ、気分転換も出来たし、採石場に出発だ!」




「荷車は要らない?ふざけるなよ、どうやってこの石を運ぶつもりだ!?」


 俺はニッコリと笑って言った。


「ふざけていませんよ。収納魔法で此処に有る石くらいなら全部運べますよ」

 

 此処には山から切り出した石が大量に山積みになっている。


 形はゴツゴツとして不揃いだから、荷車でも大量に運ぶのは難しいだろう。


 冒険者に常設依頼を出すくらいだから、運搬の方が採石に追いついていない状況が予想される。

 採石場の責任者は大喜びだ。


 コンセ、此処にある石を全部アイテムボックスに入れてくれ。


(イエス、マスター!)


 そのイエス、マスター!って気に入ったのか?


「石は商業ギルドに運べば良いんですね」

「お、おう、そうだ。頼むぞ」


 俺達は採石場を出て、森に向かう。


「時間はまだまだ有るから木の伐採に行こう。どの辺りで伐採しているんだ?」

「カイトさん、あそこに見える森だと思います」

「わかりました。ありがとうございます、アマンダさん」


 割と街に近い所で伐採をしているみたいだ。


「カイトさん……」

「何ですか、アマンダさん?」

「あの、私にも敬語ではなくて、普通に……レクスちゃん達と話している時みたいに喋って貰えませんか?」


 何なんだろう、急に。


「俺はその方が助かりますけど良いんですか?」

「はい、是非お願いします」

「ああ、わかった」


 アマンダさんが嬉しそうにニッコリと笑った。




 森の中を木の伐採をしている場所へと木々を避けながら、襲ってきたホーンラビットやゴブリン等の低ランクモンスターを倒しながら進んで行く。


「レクス、ちょっと来てくれないか?」

「うん、カイトくん!」




**********




「私達もう死ぬかもしれないと思いました」

「7匹のビッグボアに追いかけられて、体力も限界だったんです」

「もう駄目だ、と思った時新月仮面様が何処からともなく現れて、あっと言う間に7匹のビッグボアを倒したんです」


 新月仮面……何なのかしら?


「そして、僕らの怪我をヒールで治してくれて、何処へともなく去って行きました」

「なにはともあれ、あなた達が無事に帰って来れて良かったです。あと、ギルド職員としてお聞きしたいのですが、その新月仮面の特徴を教えて下さい」


 問題の有る人じゃ無ければ良いんだけど。

 実力者の様だし特徴を聞けば誰だか分かるかも。

 でもビッグボアを7匹もあっと言う間に討伐出来る冒険者なんて、この街に居たかしら?


「何だか怪しげな仮面を付けていて、顔は分かりませんでしたが、黒いコートを着て、見たことの無い細い剣を使っていました」


 剣士かしら……


「とても大きいホワイトパイソンの従魔が居ましたよ」


 テイマーでも、中には剣を持っている人も居るわよね。


「それと、戦いには参加していなかったけど、赤い仮面の女の人も居ました」


 パーティメンバーかしら。


「あと、4体の人形を使うドールマスターです」


 顔を仮面で隠した剣士で、テイマーで、ドールマスター???

 あれ?なんか最近何処かで人形を見たような………




**********




 木こりの責任者によると、1人が数日かけてでも、最低3本の木を伐採すれば依頼完了らしい。

 伐採した後の枝を落とす作業は、仕事のない老人や家計を助ける為に働く子供達の仕事だ。


 冒険者や老人や子供達に優しい依頼だな。


「木の需要もそれなりに有るし、彼奴等も仕事が出来るから、好きなだけ切ってくれ」


 木こりの責任者は、親指で老人と子供達を指して、歯並びの良い歯を見せてニカッと笑い、冗談混じりに言った。


 そう言う事ならばと、俺とグランで木の伐採をする。


「グラン、斧は持っているか?」

「ワシを誰だと思っているんだ?」

「そうか、忘れてた」

「ワッハッハッハこれを見ろ、カイトよ」


 グランが口から出したのは、人形の身体には大きすぎる鋭い刃の斧で、木を切る斧では無く戦斧だ。


「コイツは良く切れるぞワッハッハッハ」


 グランが身体ごと1回転して戦斧を木の根元に振るうと1撃で木が切れて倒れた。


「凄いな!本当にグランは半端ないな」

「ワッハッハッハそうだろう、そうだろう。カイトよ、どんどん切るぞ」

「グラン、周りの人には気を付けろよ」


 俺は新月の刀を腰に指して居合いの構えをとる。

 刀に魔力を流して腰を落として、刀を抜いたと同時に木を切り刀を鞘に戻す。


「なあ、あんた今、何をしたんだ?」

「木を切ったんですよ」

「その剣?を抜いたのは分かったが、切ったようには見えなかったぞ」

「カイトさん、私も同じです。刀を抜いてすぐに、鞘に戻したように見えました」


 俺が目の前の木を手で押すと、木はゆっくりと倒れた。

 切った後の切り株の表面は、とても滑らかだ。


 木こりの責任者は目を見開いて驚いていた。


「はぁ、そうでした。カイトさんですもんね。アハハハ」

「何だよそれは、アマンダさん?」

「いいえ、何でもありません。フフフ」

「………………」


 まあ良い。気を取り直して伐採を続けよう。


 それから、俺は刀を横薙ぎに振るったり、居合いで切ったり、グランの真似をしたり、色々と試した。

 グランが切った木と合わせて20本くらいになったと思う。

 ちょっと調子に乗り過ぎたかもしれないが、良い訓練になったな。


「この短時間で良くこれだけ切れたな。ハハハ」


 木こりの責任者が乾いた笑いを漏らしたが、やってしまった事はしょうがない。


「済みませんでした。調子に乗り過ぎました」

「いや、責めている訳じゃ無い。むしろ有り難い。向こうの連中も喜んでいるしな」


 俺が老人と子供達を見ると笑顔で頭を下げていた。


「それなら良かったです」

「ああ、助かった。ありがとう」


 俺達は森から街道に出て街に入った。




「――――――うわーっ、何ですか、この山は!?」


 俺達は商業ギルドの職員に案内されて、集石場に来ている。


「何って、今、運んで来た石ですけれど、何か?」

「石は見れば分かります、この石の量ですよ!山になっているじゃないですか!!」

「何か不味かったですか?」

「い、いえ、不味くは無いですけど……逆に大量に運んで頂いて助かりますが…………アマンダさん、この人は何時もこんな感じなのですか?」


 何を言っているんだろうか、この人は。


「はい、カイトさんは何時もこんな感じなので、諦めて下さい」

 

「アマンダさん!?」


 さり気なくディスってないか!?


「はあ……そうなんですか。でも本当に助かります。カイトさん、ありがとうございました」



 集石場を出たら、今度は、冒険者ギルドだが、もう日が暮れそうなので、宿に帰る事にした。

 別にGを先延ばしにする為では無い。


 宿に帰るとポケット村の人達が食堂で待っていた。

 何でも、今日買った生活用品等を、ポケット農村と漁村に持って帰って、明日の朝に商業ギルドに商品を卸すときにまた来ると言う事だった。




「あの野菜と魚は凄く評判が良かったです。特に生の魚なんてこの辺りでは手に入りませんからね」


 翌朝、商業ギルドに商品を卸にやって来た。

 昨日卸した野菜と魚は直ぐに売り切れになったそうだ。


 今日は昨日の倍の商品をアマンダさんの指示で荷車に積んでいる。


「倍の商品を卸して頂けるとは助かります」


 アマンダさんに任せて正解だったな。


「今日の売れ行きを見て、明日の朝この街を出る前に、また商品を持って来ますね」

「ありがとうございます。アマンダさん」


 村人達も連日の現金収入で嬉しそうにしていて、この後は昨日に引き続き買い物に行くそうだ。


「俺達は冒険者ギルドに行くぞ」



 冒険者ギルドに入り、列に並び順番を待っている。


「おい、あれを見ろ。人形を連れているぞ」

「確か、Cランクのカイトって言っていたよな」

「ああ、旅をしているらしいから、実力は有るだろうな」

「それじゃ、彼奴が例の…………」



呼んで頂きありがとうございます。


*次回はGが出ますので苦手な方は御注意下さい

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