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第17話 カイト、ルトベルクの領主の館に行く① 

********で視点が変わります。


「おい、なんか怪しい仮面を付けている奴らが近づいて来るぞ」

「何だ、あれは人形か?それなら例の盗賊団を捕らえた、カイトっていう冒険者じゃあないか?」

「そうか、あのコートもだが、人形にも見覚えが有るぞ。しかし、いったい何だってあんな怪しい仮面を付けているんだ?」

「俺が知るか!遊んでるんだろう」


 なんか色々と聞こえてるんだけど……


 正門前に着いて、収納から寝ている2人を出すと、衛兵の2人が驚いていた。


「な、何だ、何処から出てきた!?」

「森でキラーアントに襲われていたところを助け………」

「新月仮面と私達がキラーアントを倒して2人を助けてここ迄運んで来たの!」


 またレクスが被せて来たぞ。珍しいな、滅多に前に出てくることなんて無いのに。


「新月仮面……?」


「そうだぜ、2人共もうすぐ目を覚ますはずだぜ」

「起きるまで此処で保護してやってくれワッハッハッ」


 エルとグランもだ。仮面を付けているからか?


「そう言う事ですから、後は宜しくお願いします」


 俺達は踵を返して元来た道を歩き始めると、衛兵に呼び止められた。


「カイ……いや、新月仮面は街には入らないのか?」

「俺達は他にもやることが有りますから」


 本当は転移で街から出たから、転移で戻らないと駄目なんじゃ無いかと思っただけなんだが……



**********



「いったい、何だったんだあれは?」

「さあな、素性を隠したかったのかは分からないが、人形を連れている時点でバレバレだし、カイトもそれくらい分かるだろう」

「そう言えばアラン殿が、怪しい仮面の男に助けられたとか言っていたな」

「確かに。それもカイトなら、もう調べる必要は無いな。アラン殿に人形が居たか確認を取ってみよう」

「兎に角、この2人を詰め所に運んで、起きたら事情を聞くぞ」



**********



 転移で元いた場所に戻り、宿屋に帰ると、ローランドさんが待っていた。


「カイト君、出発は明後日の早朝に決まりましたよ」

「わかりました。ローランドさんは明日もお仕事ですか?」

「この街に高名な錬金術師の先生が来ていると聞いたので、久しぶりにご挨拶に伺おうと思いましてね。とても気さくで良い人ですよ。もし、カイト君が良かったらご一緒しませんか?」

「俺なんかがご一緒しても良いんですか?錬金術の事なんか全くわかりませんよ」

「わからないのは私も同じですよハハハ。カイト君も会っておいて損は無いはずです」

「そうですか。それならば、ご一緒させて頂きます」


 錬金術師ってマジックアイテムを作る人の事なのか?

 手袋に書いた錬成陣で炎を出したり、地面から武器を作ったりする訳じゃ無いよな。


(はい、マスター。この世界の錬金術師はギルドカードやマジックバッグなどの、マジックアイテムの制作が主になります)

「うおっ、いきなり吃驚するじゃないかコンセ!」


(あっ、これは失礼しましたマスター)


「いや、別に良いんだけど……声が違わないか?それに、前は抑揚も無く淡々と喋っていたけど、今日はラジオのパーソナリティみたいだぞ。システムエラーか?」


(いいえ、システムエラーではありません。我々コンセルジュは休暇や手の離せない仕事が有った時のために、交代要員が数名、待機しているのです)


「は?……何なの、システムじゃ無いのかよ!?もしかして、神様…です…か?」


(はい、我々コンセルジュは下級神です。レクサーヌ様から指示を頂きまして、マスターのサポートをしているのです)


「すみません、俺なんかの為にサポートなんて……」


(いえいえ、我々も楽しんでやってますから、どうか今まで通り、いや、折角高倍率を勝ち取ったのですから、今まで以上に命じて下さい。口調も今まで通りでお願いします)


 高倍率?神界って本当に暇なんだ……




 翌朝はローランドさんと食堂で待ち合わせをして、朝食を食べてから出発した。


 件の錬金術師は領主の館に逗留しているらしい。


「領主のレオン様とアリソン様にもご挨拶に伺いたいですから、丁度良かったです」

「俺は貴族とか偉い人は苦手です」

「この街の領主様も気さくで良い人ですよ」


 石畳の通りを歩きながらローランドさんと話しながらゆっくり歩いて行く。

 ゆっくりなのは、レクス達が周りを楽しそうに眺めながら俺達の前を歩いたり、後ろを歩いたり、気になった店の前で立ち止まり何やら話しながら店内を覗き見たりしていたからだ。


 通りの両側は商店や飲食店が並び、遅めの朝食を取る人、買い物に来ている人達で賑わっている。


 その人達はレクス、グラン、エル、ダイフクを見て驚いたり、微笑んだり、話しかけて来たりもした。

 こんな時は物語の本や吟遊詩人がドールマスターについて語ってくれていて助かるな。

 余計な混乱や面倒な説明をしなくて済む。


 誰かから貰ったのだろう、棒に刺さった飴のような物を手に持ったレクス、グラン、エル、ダイフクは、右に左に前に後ろに走りながら俺とローランドさんに付いてきている。

 因みにダイフクの飴はグランが持っていた。


 レクス達は、いつもの貫頭衣ではない。レクスはメイド服のような黒と白でレースの付いたエプロンドレスに黒い靴、グランはアラビアンナイト風と言えば良いだろうか、黒いベストに白いズボンと先の尖った黒い靴、エルは黒を基調に白い龍の模様が描かれたチャイナドレスで黒い靴だ。

 皆、白と黒で統一している。何か意味があるのだろうか?貫頭衣よりは良いと思うが、いつ作ったのだろう?





「小さな子が駆け回るのを見ると何とも微笑ましいですね」

「いや、レクスとエルはともかく、グランはひげもじゃのおっさんですからね!ローランドさん」

「アッハハハ、そうでした、そうでした。人形だと言うのをすっかり忘れてました。ひげもじゃのグランさんも人形だから微笑ましく見えるのでしょうね」

「普通の禿げたひげもじゃのおっさんが、飴を持って走り回っていたらぞっとしますよ」

「ぶっ、ワハハハハ確かに、確かにイッヒヒヒ変な想像をさせないで下さハッハッハッハ。カイト君ワッハッハッハ」



 緩やかな上り坂が見えてきて、坂の上に領主の館が有り、坂の手前には衛兵の詰所も見える。

 衛兵も気がづいたのだろう、此方に注意を向けている。


「此処からは領主様の館だが、面会の約束は有るのか?」

「はい、私は商人のローランドと言います。それと、此方は、冒険者のカイトさんです確認を取って頂けますか?」

「わかった。おい、確認を取って来てくれ」


 若い衛兵が、坂道を駆け上って、すぐに戻ってきた。


「確認が取れました。お通しするようにとのことです」

「わかった。どうぞ、お通り下さい」


 短くて緩やかな坂道を上ると屋敷の玄関が見えた。玄関の前にマルセルさんと3人のメイドさんが待っていた。


「ようこそいらしゃいましたローランド様、カイト様」

「こんにちは、マルセルさん」


 俺とローランドさんは、メイドさんに案内されて応接室に通された。

 そこには、驚いた事にアランさんとアリエルちゃんがソファーに座っていた。


 アランさんに座るように促され、ローランドさん、俺の順で座った。

 レクス達は俺の横に行儀良く座っている。


「失礼します。紅茶をお持ちしました」


 メイドさんが紅茶を入れてくれた。テーブルの真ん中にはクッキーのような焼き菓子が置かれていた。


「アラン殿、ご無沙汰しております。アリエルちゃんも大きくなられましたね」

「ローランドさんは、お変わり無いようで何よりです。それと、そこに人形達が居ると言う事は、怪し…いや、確か……」

「カイトですアランさん。あれから馬は見つかりましたか?あの時は約束が有って、早々に立ち去り失礼しました」

「馬はマシュー達が探して来てくれたから心配ない。この場を借りてもう一度礼を言いたい。助けてくれて有り難う」

「怪し…カイトさん有り難うございました」

「いえ、困った時はお互い様ですから」

「カイト君はアラン殿とは、もうお知り合いだったのですね。まあ、カイト君ならば不思議は無いですかアハハハ」


 ローランドさんに反論しようとした時、応接室のドアが開き、痩身だが鍛えられた身体で、灰色の髪で青い目のイケメン男性とアリソン様が入って来た。

 俺達はソファーから立ち上がった。


「盛り上がっているところを失礼するよ。待たせてしまって済まなかった」

「レオン様ご無沙汰しております。本日はザルクの街に帰る前に、ご挨拶をと思いまして。此方はカイト君です」

「お初にお目にかかります。冒険者のカイトです、レオン様。」

「君がカイトか、言葉遣いは気にしなくても良い。普段通りに喋ってくれ。俺もその方が気が楽だ。話には聞いていたが、服装次第で貴族と言っても通りそうだな」

「敬語の苦手な俺なんかが貴族なんてとんでもないです」

「敬語も礼儀も、ましてや貴族の存在意義すら知らない貴族も居るんだがな。アッハハハ」


 なんか、砕けたお人だな。


「カイト、家の者を助け出してくれた事を感謝する。有り難う」

「レオン様、頭をお上げ下さい。領主様が平民に頭をお下げになられるのは良くないのでは?」

「領主だろうが何だろうが、心から感謝している相手には自然と頭が下がるものだ」

「それでもです。領主様から頭を下げられた平民は気持ちが落ち着きません」

「そんなものか?」

「あなた、カイト君の言う通りですよ。フフフさあ、立っていないで座りましょう」


 ローランドさんの言う通り、貴族だからといって横柄な振る舞いをするような御方では無いようだ。


 メイドさん達がお茶を入れ直してくれて、レオン様、アランさん、ローランドさんの話を聞き流していると、アリエルちゃんの視線を感じた。

 その視線はレクス達に向いているようだ。


「レクス、エル、ダイフク、アリエルちゃんの相手をしてやってくれないか?グランはどうするかな」

「ワシも子どもの相手ぐらい出来るぞワッハッハ」

「そうか、それならグランも頼む。泣かすなよ」


 レクス達がアリエルちゃんの手を引いて、部屋の隅で楽しそうに話し始めたのを、アリソン様が見てミシェル様とナディア様を連れて来るようにメイドさんに頼んだ。

 今は3人の少女とレクス達が楽しそうに笑っている。


「あの子も元気なら……」




読んで頂きありがとうございました。


アランさんは錬金術師でした。


レオン・アングラード(ルトベルクの領主)



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